《プロローグ》
どうも、Reiです。
この作品は私の前作であるよくあるチート転生者の魔法学園物語のリメイクです。初見の方でも、前作からの方でも楽しめる様になってます。
どうぞご覧になってください。
何もない真っ白の空間に真っ黒の学ランを着た一人の青年が仰向けで気を失っていた。
彼の名前は田村心。成績優秀、容姿端麗、そして正義感を心の中に秘めているまさに誰もが憧れる主人公のような高校生だ。
彼が目を覚まして起き上がり、直ぐにここが自分の知らない場所だと察知した。
そして辺りを見渡してみると目の前にはなぜか土下座をしている長くて白くてモジャモジャの髪と髭を生やした老人がいた。
「は…?」
心はこの意味不明な状況に戸惑いを隠せないでいた。
それもそうだろう、目が覚めたら真っ白な何もない空間に居て目の前に古代ローマの服であるトガを着ている長くて白い髪と髭で顔の半分が隠れている老人が自分に土下座をしていれば誰だってパニックになるだろう。しかも、
「本当に申し訳ない!申し訳ない申し訳ない申し訳ない申し訳ない!!」
老人は申し訳ないを連呼しながら頭を真っ白な地面(?)に何回も叩きつけているのだ。この老人の奇怪な行動に心はさらに混乱した。
取り敢えず心はこの状況を整理するために先ずは何か知ってそうな目の前にいる老人を落ち着かせることにした。
「おじいさん、取り敢えず土下座を止めてくれませんか?」
「お主…ワシのことを許してくれるのか?」
心の言葉を聞いて顔を上げた老人の目は涙目で額も地面に叩き続けていたためか赤く腫れ上がっていた。
「いや、許すも何も俺はあんたのことは見たこともないし、何でこんなところで寝ていたのかも知らないんだ。とにかくこの状況を簡潔に説明してくれ」
心がそう言うと老人は涙を拭いて心の顔を見てこう言った。
「分かった、まずはワシの正体からじゃなの。ワシは神じゃ」
「じいさん、とりあえず病院へ行こうか」
気違いな老人の発言に心は老人の右肩にそっと手を置いた。その顔は慈悲に満ち溢れていた。恐らく心は老人がボケているのだと思っているのだろう。
「待て待て待て!!ワシは正気じゃ!!」
「いやいやいやいやあり得ねぇよ。じゃあ仮にあなたが神だとしてなんで俺の目の前にいるんだよ。つーかなんで俺に謝ってたんだよ」
「うむ…まぁ簡潔に言えばお主は世界から拒絶されたのじゃ」
「拒絶?」
心は一瞬自分の耳がおかしくなったと思ったが、やっぱりこの老人はボケているのかと思った。
「ああ、すまん。簡潔に説明し過ぎたな」
老人は心が自分の言葉を全く理解してないことに気づき、軽く謝って詳しく説明し始めた。
「私はお主が今までに住んでいた地球と言う世界を管理者なのじゃ。ほれ、下を見ろ」
心は老人の言う通りに下、本当にここが地面なのか怪しいくらいに真っ白な地面を見るとそこには一瞬にして青い惑星、地球が写った。
そして老人が右手の人差し指を少し動かすと一気に写っている映像がズームされ、心がさっきまでいたであろう町の映像になった。
そこには心のクラスメイトが高校に登校している姿も見えた。
これを見た心はまだ半信半疑ながらも一応この老人は神様なんだと認めた。
「あんたって本当に神様なんだな……」
「始めからそうじゃと言っておろうに……、まぁ格は低いがの。だから世界を2つしか任されてないのじゃ。話が逸れたの。ワシがいつも通りに世界を監視しておった時に何処からともなくある力が来ての、そして」
「その力のせいで俺は世界から弾き飛ばされてここに来たってことか?」
老人が前置きを詳しく説明していると心はそれに割って入り核心を当ててみせた。これには老人も感心した。
「その通りじゃ、よく分かったの」
「一応警察官志望だからな。簡単な推理ぐらいなら朝飯前だ」
そして心は一拍置いて自分の下に写っている町を右人差し指で指さして一番聞きたかったことを聞いた。
「で、俺は地球に戻れるのか?」
「戻れると思っておるのか?」
老人は即座にそれを否定した。それを聞くと心は少し自嘲気味に笑った。
「いいや、神の力が働いて俺はここに来てるんだ。どうせ戻れないんだろ?それに戻れてるんなら最初の時点で俺が目覚める前に戻ってるだろう」
「そうじゃ、実際に地球ではもう最初からお主が居らん様になっておるからの。しかしお主がキッパリと割り切れる者でよかった。他の神からの話ではたまに泣き叫んだり発狂したりする者もいるらしいからの」
「あんた、俺が割り切れてるように見えてんのか?」
そう言われた老人が心の右手を見ると握り過ぎて血が滲むほどに拳を握りしめていた。
先程心は警察官になるのが夢だと言っていた。その夢が理不尽に一瞬で絶たれたのだ。
恐らく心の心の中は悔しさでいっぱいで、気持ちを押さえきれてないのだろう。
「……勝手に判断してすまぬ……」
「謝らなくていいから早く話を進めてくれ」
老人がまた土下座をしようと跪こうとしたので心はさっさと話を続けるように催促をした。
「そうじゃの、神々の間で決められている法律に従ってお主にはワシが管理しておるもう一つの世界の方に行ってもらい、そこで一生を終えてもらう」
「で、その世界はどんな所だ?」
「ふむ、地球では幻想とされている魔法がある世界じゃ」
それを聞くと心は途端に嫌悪の表情を浮かべ溜め息を吐いた。恐らく心はファンタジーな世界が物凄く嫌いなのだろう。
「いや、お主のいた世界を基準で考えてもらっては困るぞ!?むしろあの様に何もない世界の方が珍しいのじゃ!」
「はぁ……、どうせそこにしか行けないんだろ?だったら腹を括るしかないか……」
老人の説得に心は渋々了承してくれたみたいだ。でもその表情は嫌悪で満たされていた。
「大丈夫じゃよ、お主が考えているよりはずっとまともな世界じゃ」
それまでの話を変えるように老人は何回か咳き込んだ。
「さて、そろそろアレを決めるかの」
「アレってなんだよ」
それを聞いた老人は何処かの営業マンみたいな笑顔を見せながらこう言った。
「決まっておろう、転生特典じゃよ。お主の希望はなんじゃ?勿論無理なものもあるからの」
「いらない」
老人の言葉にこう即答した心の言葉に今度は神である老人が自分の耳を疑った。
「……………なぬ?もう一度言ってみよ」
「だから、そんなものはいらない」
「な、なんじゃと!?」
老人は心から数歩退き、背後に轟く雷雨が見えるくらいのオーバーなリアクションで驚いた。
「なんでそんなに驚くんだよ…」
「なぜって、そりゃ驚くわ!!転生特典じゃよ!?チートじゃよ!?男なら一度は憧れる絶対的な力が手に入るのじゃぞ!!」
老人は見た目に似合わず壮大に取り乱していた。
「いらないよそんなもの、力なら努力して付けるし、それにそんなものあったとしても俺は使わない」
「う~む…なるほどこいつなら試す価値もあるな…」
「どうした?」
心は老人のボソッと言った言葉を上手く聞き取れなかった。
「いや、何でもない。それなら今すぐに次の世界に行ってもらわないとな」
「そうか、ならさっさとしてくれ」
そう言った心は何処かにあるであろう世界への扉を探したが、何処にもそれらしき扉はなかった。
「ちなみに赤子からのスタートじゃから覚悟しておくことじゃな」
「えっ……ってええっ!?」
老人がそう付け足すと、唐突に心を中心とした半径3mの大穴が空いた。
「うわああああああああああああああ!!!?」
心は大声で叫びながら底が見えない穴へ落ちていった。
次回は次の日曜日に投稿する予定です。