パワー オブ カオス
【フリーダス第7研究所・中央管制棟】
施設内にけたたましい警報が鳴り響いた。
白衣を着た研究者たちがあちらこちらを走りまわり、警備兵がライフルを装備し駆けていく。
「何があった!」
研究者たちの中でひときわ目立つ大男が声を荒げる。
スキンヘッドに堀の深い顔。白衣を着ていなければ軍人にしか見えない男が、この施設の責任者である。
「第2ブロックで火災発生っ!」
「第2ブロックだと…!」
研究員の言葉にスキンヘッドの男は顔をしかめ、目の前にあるモニター群の一部を見た。
そこには第2ブロックを写し出す魔道モニターがノイズ交じりで映像を送ってきており、モニターには複数の人影が映し出されていた。
白衣が血に染まり倒れている同胞たちの中、傷1つなく立つ人影が2つ。
2人はモニター越しにスキンヘッドの男と目を合わせた。
1人は白衣を着た研究者。禿げあがった頭に、残った両サイドの白髪が獅子の鬣のように固められた男。
もう1人は黒いボディスーツを着た男。歳はまだ10代半ばに見え、青年が持つ特有の精悍さが見てとれる。
その姿をとらえるやスキンヘッドの男は備え付けられたマイクを掴み叫ぶ。
「ヘクト! これはどういうことだッ! まさか貴様が…!」
名前を呼ばれたモニターの中の白衣の男は肩をすくめ口を開いた。
「ええそうです所長。」
「ええそうです。じゃないだろっ!! 貴様っ、よもや我々を裏切るつもりなのか!?」
「裏切ったのはあなたの方だ所長…」
モニター越しにヘクトは悲しそうな顔をした。
その表情に所長と呼ばれた男が鋭い目つきになる。
「貴様…まさか知っているのか?」
「ええ…まあ。だから行きます。私、…俺達は進む方向を間違えたくないんで。」
そう言い残すとヘクト達は背を向け歩き出す。
「オーバーキル! 2匹を逃がすな殺せっ!!」
複数の軍靴の足音がヘクト達の目の前で展開された。
ライフルの照準はヘクトと少年の頭と心臓を寸分違わず捉えている。
「博士。後何分だ?」
ここで少年がようやく口を開く。
ヘクトは腕時計を睨みながら応える。
「あと7分少々だ。いけるか? ジャスティ」
「ああ! 任せときなっ」
瞬間
閃光と轟音が鳴り響いた。