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第8話

4月最後の休日。

 4月の終わり頃、1年1組の教室

 生徒達は各々放課後の時間を過ごしていた。


「ふぅ~。終わった終わった」


「この後どうする?」


「図書館。魔法の授業で気になる事があって」


「今度の休み、お前どうする?」


「久々に街をぶらついておこうかな」


 帰り支度をしているエミリアの元にラウディーが訪れる。


「会長?」


「一緒に生徒会室に来てくれるかい?」


 そしてやって来た生徒会室


「学校交流会?」


「そう。5月の初め、別の国の学校と生徒会同士で交流会を開くんだ。その内容は、代表生徒同士の親善試合となっている。生徒会メンバー以外にも、各学校の代表として選ばれた生徒も選出される。そしてエミリア君、君も我が校の代表に選ばれた」


「はぁ~、そうですか」


「実際君は、この国の王族で、この学園の学年トップであり、学園内での人望も厚い。それ故に、次期生徒会メンバーとしての呼び声も高い。残りの代表メンバーについては、引き続き選出を行ってる最中だ。まぁ兎に角、今は今度の休みで身も心もリフレッシュする事に専念しておいてくれ。交流会については、休み明けに改めて話そう」


「はい、そうさせて貰います」


 そうしてエミリアが廊下を歩いている時、ハルトマリーが駆け付けて来た。


「エミリアさーん!」


「ハルトマリー?どうしたの?」


「今度の休み、映画観に行かない?」


 そう言って彼女は3枚のチケットを取り出した。




 休日、街道

 エミリア、カイト、ハルトマリーは映画館へ足を運んでいた。


「漸く、待ちに待ったあの映画の上映会」


「まさか貴方達があの作品のファンだったなんて」


「姉さん達、これから見る映画の事知ってるの?」


「今から観に行く映画は、ベストセラー入りした話題のサスペンス作品よ。あのミステリー展開に、謎解きパート、私も見入ったぜ」


「私も、城でもメイドや兵士達が話題にしてたのを耳にしてたから、気になって原作本を読んだくらいよ」


「姉さん達がそこまで言うなら、僕も気になってきたな」


「あ、もう映画館に着くわ。早く早く!」


 ハルトマリーは2人の手を取り、映画館の中へ駆けて行く。




 上映終了後、カフェのオープンテニス


「はぁ~、面白かった」


「姉さん達が気に入っただけはあるね。僕もドキドキしたよ」


「それでも原作との変更点は確かに存在するけどね」


「映画見終わったし、この後どうする?」


「そうねぇ~」


「だったら、私に付き合って下さらない?」


 その声に3人が振り向くと、そこにはウェーブロングの銀髪の女性がいた。


「えっと、貴方は?」


「私、この国に来たばっかの観光客で、地元の人の案内が欲しいと思ってた所なの。ご予定が無いのでしたら、お願いしたいのですけど」


「…まぁ確かに、これと言った予定は無いし、貴方も悪い人には見えなさそうだし、良いわよ、付き合ってあげる」


「ありがとうございます」


 そして3人は期待を胸に上映された映画を目にする。




 こうして4人は、気軽によれる噴水等のお手軽名所から回り、途中でクレープを買って摘み、ブティックで服を試したり、国の中心シンボルとなってる王宮にも立ち寄った。

 それから現在歩いているのは大通り。


「うふふ。アルテミシア王国、市民の生活にも力を入れてるのね。街を歩いてる人々を見ると伝わってくるわ」


「えぇ、広い視点で人材発掘をする異種族、異文化交流が売りの国だもの。当然、市民の生活環境を整えてあるわ」


「成程、やっぱり案内を貴方に頼んで正解でしたね、エミリア王女」


「っ!?私の事気付いて!?」


「他国の重要人物の事くらい、ちゃんと調べておりますわ」


「…エミリア様の事を知っててコンタクトを取ってくるなんて、何か怪しい。そしてその上品な佇まい、貴方は一体…」


「キャー!ひったくりよー!」


 その時、近くの女性の鞄を盗んだひったくり犯が、4人の方向へ向かって来た。


「クソ!どけ、邪魔だ!」


「くっ…!」


 エミリアが魔法の構えに入ったその時、銀髪の女性が指を鳴らすと、一瞬にしてひったくり犯が氷漬けにされ、鞄も落ちる。


「魔法の展開が早い!?しかも氷漬けになるまでの時間も一瞬!?彼女、かなりの魔法の腕前よ!」


 そして女性も、鞄を持ち主に返す。


「はい。鞄は無事ですよ」


「あ、ありがとうございます」


 その場に駆け付けた警備兵にエミリア達も事情を説明した。




 事情聴取を終えたエミリア達も、女性と別れようとしていた。


「今日は私の観光を手伝ってくださり、ありがとうございました」


「えぇ、どういたしまして。…貴方一体何者なの?私の事を知ってた事と言い、さっきの魔法と言い、何か引っ掛かる。どう考えても普通の観光客じゃないわよ」


「うふふ。それはどうでしょう?私としては、ミステリアスな女の気分を味わいたいけど…」


「やっと見つけた!」


 そこに、緑色の髪を纏めた青年が駆け付ける。


「もう、急にいなくならないで下さいよ。お陰であちこち探し回る羽目になったんですから」


「あら、ごめんなさいデューク。私も1人で見て回りたくなっちゃって」


「貴方の身に何かあったら、護衛の僕にも責任が問われるんですから。あまり1人でうろつかないで下さいよ」


「1人じゃないわ。エミリア王女も一緒だったもの」


「ん?あっ!これは失礼しました、エミリア王女!僕の代わりにゼシカ王女の傍に付いていて下さり、お礼申し上げます」


「ゼシカ!?まさか貴方、フィルビア王国の第2王女、ゼシカ・フォン・フィルビア!?」


「あら、バレてしまいました」


「フィルビアって、魔法研究者が多く集まってる国の!?」


「姫様、貴方まさか自分の事教えてなかったんですか?」


「正体を隠してた方が面白いかなって。まぁ取り敢えず、エミリア王女、私達は近い内にまた会う事になりそうね」


「え、それって…」


「貴方も選ばれたのでしょう、交流会に?」


「まさか…!?」


「そう、私も参加する事になってるから。それじゃ、その時は仲良くしましょう」


 そう言ってゼシカは、デュークと共に去っていくのであった。




 夕方、フィルビア王国王城

 帰って来たゼシカを兵士や使用人達が出迎えていた。

 そしてゼシカと似た顔立ちの赤を基調としたドレスの銀髪セミロングの女性が声を掛ける。


「ゼシカ、また城の外へ出ていたのですか?」


「あら、メリア姉様」


「貴方もこの国の王族なのだから、デュークから離れてはなりませんよ」


「いいではないですか、何事も無かったのですから。それに、今度の交流会で活躍すれば、姉様だって文句は無い筈でしょう?」


「貴方と言う人は…。まぁいいでしょう。そこまで言うなら、ちゃんと結果を残しなさい」


 そしてメリアと別れ、ゼシカとデュークは廊下を歩いて行く。


「ゼシカ様、我がフィルビア学園の生徒達も、準備は進んでおります」


「そう。けどうちが勝てるかどうか分からないですわよ。なんせ今年は各国から王族が出場する事にもなってるから」


「そうですね。しかしうちの学校も負けてないのも事実です。ゼシカ様は2年生トップにして、現在の生徒会長でもあるのですから」


「そうね。貴方にも期待してますよ、親衛隊隊長デューク・ディトクス」

次回より5月へ。

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