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第86話

シェーラの過去が語られる。

 何処かの薄暗い洞窟の中、タケル達は1人の魔女と対話していた。


「シェーラさん、これ以上他人をむやみやたらに改造するの、止めて貰えませんか?」


「何よ?アイツらは私の事を悪く言ってきたのよ?これくらいの制裁、当然じゃない」


「だからって、こんな事するのは間違ってます!これじゃあ、貴方の評判も悪くなる一方です!」


「確かにそうね。でも私は黒魔女、嫌われ者の側の1人である事に変わりはないのよ。人や精霊に好かれやすい性質を持った白魔女ならともかく、黒魔女は人に嫌われやすい性質の持ち主なのよ。どれだけ人が良くても、黒魔女だからと言う理由で言われの無い差別や迫害を受けるし、そのせいで世間から身を隠したり、人の道を踏み外した奴らだって大勢いるのよ。私も黒魔女である以上、ずっと嫌われ続ける事に変わりはないし、もういっそのこと、自分から悪評をばらまいて、人を遠ざける日々を送るしかないじゃない!勇者だか何だか知らないけど、身体を弄り回されたくなければ、とっとと去りなさい!」


「…そんなのは駄目だ。それじゃあ、貴方はいつまでも独りぼっちのままになる」


 そう言ってタケルはシェーラの下へ足を進める。


「貴方の言ってる事、僕にだって分かります。僕の世界の人達も、同じ様に言われの無い差別や迫害だってしています。虐めやハラスメントだって、その最たる例の1つです。確かに人間は醜い存在かもしれない。僕だって、そんな人達まで助ける必要があるのか、今でも疑問に思っています。でも、だからって、それが見捨てていい理由にはならない。その人達にだって縁があるから。まだその心に善意や優しさが残ってる可能性だってあるから。だから…!」


 そう言いながらタケルはシェーラの手を取る。


「僕は貴方の事だって見捨てない!手を伸ばす事を諦めない!独りぼっちにさせない!シェーラさん、貴方に居場所が無いなら、僕達が貴方の居場所になります!僕らの優しさを伝える事で、貴方の優しさを思い出させて見せます!白魔女だの黒魔女だの、そんなのはどうでもいい!そんな理不尽な偏見、僕達が変えて見せる!白魔女だけでなく、黒魔女だって陽の光の下で歩ける様にして見せる!だからシェーラさん、僕達と一緒に来て下さい!勇者パーティーの名声を使えば可能な筈です!一緒に魔女の世界を変えていきましょう!」


「…私、アンリエット・フォン・アルテミシアも同意見です。見事魔王を討伐した暁には、王家の権限を使って、我が国の領土に貴方の住まいを提供する事を約束致します」


「そうだね~。私、ライムも、気持ち良く魔女を名乗れるなら同意見だよ~」


「教会の方でも、このハンナが説得しておく事を約束します」


「僕もタケルを同意見だよ~。あっ、僕、シアン・ウィンチェスター!よろしくね!」


「…本当に、お人好しなんだから…」


 シェーラはそんなタケル達の姿に、一筋の涙を流しながら笑みを浮かべるのだった。

 そして、そのシーンを最後に、スレイも自室のベットの上で目を覚ます。


「…シェーラが500年前の勇者パーティーの1人?一体どういう事なの?」




 アルテミシア学園、図書室

 エミリアは勉強会をしながら、今朝の夢の内容を話していた。


「500年前の勇者パーティーに、シェーラ先生もいた?」


「そうなのよ。で、ハルトマリー、貴方達もシェーラからそこら辺何か聞いてない?」


「いや、俺達は何も聞いてないよ。あの人、基本自分の事はあんまり喋りたがらないし。前に「先生は昔は何してたんですか?」って聞いたら、「色々やっていた」としか言わなかったし」


「500年前から生きてるって事は、魔女ってのは長命種なの?」


「いや、魔女を就任するのに種族は関係ないよ。人間でも魔法の才能が認められれば名乗る事は出来る。ほら、スファニア様も人間で高齢のおばあちゃんだってのは知ってるでしょう?まぁ、アディニタ様みたいな長命種との混血みたいのだっているけど」


「で、シェーラの事だけど、種族とかについては聞いてるの?」


「いや、全然。そこら辺も喋んないから」


「仕方ない。こうなったら本人に直接聞くしかないわね。丁度明日週末の休みだし、都合が良いわ」


「でも先生、話してくれるかな~?」


「それでも、疑問を解消しておきたい事には変わりはないでしょう?念の為、アラタも呼んでおきましょう」


 こうして、予定の話もしながら勉強を続けるのだった。




 週末、シェーラの家

 そしてアラタも連れたエミリア達は、単刀直入に本題に入る事となった。


「…と言う訳なんだけど、貴方の口からちゃんと聞かせてくれるんでしょうね?シェーラ、貴方は本当に500年前の勇者パーティーの1人なの?そして貴方は当時から生き永らえている本人なの?そこら辺、ちゃんとはっきりさせて頂戴」


「…いつかこうなる時があるとは思ってたけど、仕方ない。ちゃんと話すわ」


 そしてシェーラも、観念した態度で話す事にした。


「貴方が察している通り、私はかつての勇者、星宮タケルの仲間だった者よ」


「やっぱり…」


「当時の勇者パーティーの1人本人って事は、先生は長命種なんですか?」


「いえ、私は純血の人間種よ」


「えっ?じゃあどうやって生き永らえているんですか?」


「忘れたの?私は肉体改造を生業としている事を。その応用で自分の身体を弄って、いつまでも若い身体を維持し続けているのよ」


「成程。確かにそれならいつまでも見た目が変わらず、長生きしている事にも納得だ」


「それで、どういった経緯で、勇者パーティーに入る事になったの?」


「そうね。タケルと会う前の私は、自分が黒魔女の才能を持っていたせいで、人々から嫌われまくっていたの。私が何処に居ようとも、何をしようとも、黒魔女だからと言うだけで、誰もが私から遠ざかって、蔑み、拒絶され、酷い時は石を投げられた事もあったわ。そんな人生ばかりを送っていたせいで、私も性根が曲がってひねくれ、その仕返しに自分に暴言を吐いたり石を投げたりした奴らを弄り回して、そうする事で追い返しつつ、誰とも関わらない様にして生きてきたわ。それからしばらくして、私の下にタケルが現れた。最初の頃は私も彼の事を信用していなかったわ。どうせこいつも今までの奴らと同じで、私の事を下らない偏見で殺しに来たんだろうと思っていた。だから私も他の奴らと同じ様にして追い返そうと思っていた。けどタケルは違った。彼は私に歩み寄って、私の目を見て、私の手を取った。そして私の心の中の寂しさを理解した。今まで誰からも嫌われていた私を、彼と仲間達は受け入れてくれた。嬉しかった。誰かに手を取って貰えた事が、寄り添って貰えた事が、本当に嬉しかった。そして私は近隣の人々を元の姿に戻して、非難を浴びながらも地元を去った。そしてタケルやアンリエットと共に旅をして、一緒に過ごしていく内に私も変わっていって、助けた人々から感謝の言葉を貰った時は本当に嬉しかった。それから当時の魔王の討伐に成功した功績を称えられ、黒魔女のイメージも払拭されて、私もアンリエットの計らいでこの国に住居を貰う事になった。そのお陰で私だけでなく、世界中の魔女達も前より生きやすくなって、人々と交流を持てる様になり、白も黒も関係なく、皆魔女を受け入れて貰える様になった。それで私の方でも、その恩義に応える為に、長い時を生き続けながら、2人の夢を守る事を決めたのよ」


「黒魔女の迫害…。確かに歴史の授業でも話していた。そのせいで当時の魔女達は普通に生きる事は難しかったって。まさかその歴史に終止符を打ったのも、500年前の勇者だったなんて」


「そうね。そこら辺についても、ずっと貴方達に感謝してるのよ、エミリア、アラタ」


「どういう事?私達はその時の勇者と姫本人じゃあ…」


「あら、もしかして気づいてなかったの?エミリア、いえスレイ、貴方はアンリエットの魂が転生した存在。そしてアラタも、タケルの魂が転生した存在なのよ」


「えっ…?」


「貴方が去年の夏頃から、500年前の記憶を夢で見る様になったのは、エミリアの仮面が同化を始めた事で、その身に移されたアルテミシア王家の遺伝子が貴方の魂と反応して、その魂に刻まれたかつてのアンリエットの記憶が呼び起こされる様になったからなのよ」


「私が、アンリエットの生まれ変わり…?」


「俺も、タケルの生まれ変わりだと…?」


「えぇ、7年前、魂の波長を感じるソナーを感覚を掴み直す為に使った時、アンリエットの魂を感じて来てみたら、彼女の転生先のスレイが、エミリアの死体の傍に居た事には驚いたわ。そして国の行く末の事まで考えている事も、あの頃と同じ。私も500年前の恩義の為に、今の生活を与える事にしたのよ。そして去年、アラタと初めて会った時も、貴方もタケルの転生先だったから、私も運命を感じたくらいよ。それから2人の寄り添い合う姿は、500年前を思い出し…」


「関係ないわ」


「えっ…?」


「転生とかそんなのは関係ない。私達が惹かれ合う事になったのは、私達自身の意思よ。これまでも、これからも、それは変わらない事実だわ」


「俺もだ。俺の今までの人生も、そしてこれからも、確かに自分で選んできたんだからな」


「フフフ。確かにそうね。ごめんなさい、失言だったわ。でもやっぱり、2人を見てると、この言葉が出てくるわ。スレイの持つ、王女としての仮面と、アラタのあの時のタケルを思い出させる流星の様な剣筋。2人の並び立つ姿は、そう…"王女の仮面と星降る剣"って言った所かしら?」


 こうして、シェーラの過去と、エミリアとアラタの前世が語られる事となった。

 しかし、そんな事は2人には関係ない。

 エミリアはこれからも自分で選んだ王族としての人生を歩み続けるし、アラタも自らの血に宿る受け継がれる正義を成し遂げる為に剣を振るう。

 それは500年経って生まれ変わった今でも、変わる事はない、確かな事であった。

タイトル回収、成功!

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