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第84話

交流会の後日談。

 5月、交流会が終わって時間が経って、アルテミシア学園は試験勉強期間に入っていた。

 そして2年1組の教室にて、エミリア達は交流会の裏側の件を話していた。


「あれからしばらく経ったけど、ウェインについては、別の学校へ転校したと言う事になってたわ」


「こっちも寮の部屋を見たけど、もう退寮を済ませた後だった。実に抜け目の無い奴だったよ」


「捕らえた黒ローブ達についても、シェーラ先生の方で結界を張って貰ったから、殺される心配はないよ」


「"天の笛"のスポンサーを始めとする円卓に居た人達って、確かギルドの預かりになったんだよね?」


「そうだな。黒ローブとあの連中の事は、これから城とギルドで連携して吐かせるって話だしな」


「そうね。相手が相手だし、それぞれが贔屓にしている拷問官を呼ぶ事になりそうね」


「へぇー、この世界に拷問官いるんだ?アタシの世界じゃあ見ない人種だぞ?」


「えぇ。今回の場合、鞭拷問官を呼ぶ事になるわね」


「鞭拷問官?」


「この世界の拷問には、飴と鞭の2種類が存在するわ。鞭拷問は、撲殺、爪剝ぎ、鞭打ち、串刺し、水責め等言った肉体的苦痛と精神的苦痛によるもの」


「それはアタシのよく知る拷問だ」


「飴拷問は、美味しい食べ物で釣る、一緒に遊ぶ、動物を愛でる等言った娯楽や誘惑等でその気にさせるもの」


「小学校以下かっ!?」


「悪戯や軽い怪我で済んだ人身事故等の軽犯罪を犯した者達には飴拷問、殺人や裏社会行為等言った重犯罪を犯した者達には鞭拷問と言った具合に、対応が違ってくるわ」


「鞭の方は兎も角、飴の方はちゃんと情報引き出せるのかよ?何か出来なさそうなイメージだけど…」


「あら、どっちの拷問もちゃんと多くの成功例があるし、拷問官の福利厚生だって完備されてるわよ」


「何で拷問に福利厚生があるんだよ…?」


「それに、城やギルドが贔屓にしている拷問官だって、キチンとしたホワイト企業の会社からの人間なんだから」


「何だよ、ホワイト企業の拷問官って?」


「拷問官だって、バイトも正社員もちゃんと真面目にやってくれる人達よ」


「何でバイトとか正社員とかの制度まであるんだよ?何、その会社みたいな拷問の世界?」


「まぁまぁ、これは人間もエルフもドワーフも獣人も魔族も共通の事柄だし」


「ちょっと待て。今、魔族もって言ったか?アタシの考えてるイメージとかけ離れていってるんだが?」


「リーベルさんや平助さんの話によると、魔王城を始め、勤務している魔族達の職場改善も色々実施されて、魔王城も福利厚生や特別休暇等もキチンと配備されたホワイト企業だって話よ」


「何だよ、その会社みたいな魔王城?段々俗世っぽくなってきてねぇか?」


「それ程までに、今の4種族も魔族も相互理解が出来てるって事だよ」


「まぁ取り敢えず、今は勉強に専念。生徒会も、ウェインが抜けた分忙しくなっちゃったからね」


 と、エミリア達は図書館に向かって勉強しておくのだった。




 "天の笛"本部、研究室

 ウェインは、預けていた通信水晶を受け取っていた。


「はい、これに仕込まれていた盗聴用の術式は解除しました」


「ありがとうございます」


「いや~、まさか出し抜いたつもりが、逆に出し抜かれていただなんて、君も詰めが甘いね~」


 と、後ろにいた総一郎がウェインを嘲笑う。


「あぁ、お陰で俺も学校を辞めざるを得なくなってしまった。ついでに今回の件でスポンサーを1つ潰してしまったし、ジルティナさんにも怒られたよ」


「で、君もこれからどうするつもりなの?」


「これからはこっちの業務に専念しておく」


 そう言ってウェインは総一郎の横を通って、扉の前に立つ。


「俺だって"天の笛"の一員として、成し遂げたい目標がある事に変わりはないからな」


 そう言ってウェインは部屋を出ていく。


「…本当、真面目な男だねぇ、君も。そうする程の物が此処にあるのかな?」




 アルテミシア城、アルベルトの執務室

 アルベルトは現在、アルフォードとシェーラと共に拷問の結果を共有していた。


「城の地下牢に捕らえてある連中ですが、あいつら、下っ端だったから大した情報を持っていなかった。俺達が知ってる様な情報ばかりでした」


「折角だから、転移結晶(テレポートクリスタル)くらいは貰っておこうかと思ったけど、捕らえられた場合の保険として、直ぐに処分出来る様にされていたみたいで、捕らえて直ぐに処分されちゃってたのよ」


「そこら辺抜け目の無い奴らだった様だな。先程、ギルドの方から連絡が来たが、交流会の裏で賭博に興じていた連中は、裏社会の人間だった様でな。連中、裏で色々悪さをしていたみたいで、調べてみたら他にも似た様な事をしていたみたいなんだ」


「となると、"天の笛"は裏社会にも顔を効かせていると言う事ですか?」


「あぁ。ダブリスの人達を人身売買に出したのも、その筋でやったんだろう。奴らのスポンサーの1つを潰せたのは良いが、楽観視するつもりはない。奴らの事だから、他にも替えの効くスポンサーが居たっておかしくない。アルフォード、シェーラ、引き続きよろしく頼んだぞ」


「了解です!」


「えぇ、勿論」


 報告を終えた3人は、自分達の仕事に戻っておくのだった。




 "天の笛"本部、団長の部屋

 ジルティナは団長と共に今後の話をしていた。


「団長、今回の件で団員も20人くらいは減り、スポンサーも1つ潰れてしまいました。人員の補充と新たなスポンサーの確保について検討してもよろしいのでは?」


「この程度、我が組織の規模からしたら大した誤差にはなってないし、スポンサーについても、まだまだ代わりはいる。別に慌てる程ではない。それよりも、双性者(ジェミメイル)や転移者や転生者の方についてはどうなっている?」


「転移者と転生者については、既に訓練を終え、間もなく配備出来ます。双性者(ジェミメイル)についても、人員の見直しは既に終えています」


「ならば良し。お前も仕事に戻っていいぞ」


「はっ!」


 そしてジルティナも敬礼して、部屋を出ていった。




 夜、アルテミシア学園男子寮、カイトの部屋

 今日1日の時間を終えたカイトは、ベッドで眠りに着こうとしていた。


「ふぅ~、今日も疲れた~。また明日から頑張…」


 と、カイトが寝返りを打つと、そこに銀髪ロングヘアーの活発な少女が横たわっており、想定外の侵入者の存在に、カイトも驚いてベッドから転げ落ちる事となった。


「うわぁぁぁぁぁぁぁ!…っ、痛てて。何で僕の部屋に女の子が?戸締りはちゃんとしてた筈…?」


「初めまして、カイト・ワーグナー君!私、フェミン!君に会いに来たんだ!」


 と、フェミンはベッドから降りてカイトの方へ歩み寄っていく。


「僕に?一体何の用で?って言うか何処から?」


「組織で君の事を聞いた時から気になってたんだ!」


「組織…!?まさか君は…!?」


「そう!私は"天の笛"の1人だよ!」


 そしてカイトと距離を詰めたフェミンは、カイトの顔を両手で挟んで、自身の顔を近づける。


「ねぇ君、もしかしてエミリアちゃん達にコンプレックスを感じていない?」


「一体何を…?」


「だってそうでしょう?君のお兄さんのスレイ君は、本物のエミリアちゃんの身体を移植して貰って、王族の遺伝子と膨大な魔力を手に入れて、更に王族の立場に相応しくなる様、あらゆる教養を受けて、更に武芸も磨き上げて、今やSランク冒険者。加えてあの美貌に人格も相まって、今のエミリアちゃんはスーパーカリスマプリンセスとして有名になっている。そんなあの子に、実の弟として劣等感の1つぐらいは抱いている程でしょう?」


「…そんな事はない!僕もアルフォード兄さんも、エミリア姉さんの事はちゃんと認めている…!」


「エミリアちゃんだけじゃないでしょう~?ハルトマリーちゃんも"組替の魔女"シェーラの弟子として、その魔法の腕を見せてるし、スバルちゃんも、うちの元実験体である事もあって、精霊術者としての才能を開花させてシスターとしても一躍している。レオニーちゃんも転移者特典もあって、そのお陰でこっちの世界でも困らずに済んでいるし、アラタさんも勇者の血族と言う特別な血筋で最強の力をその身に宿している。他にもソーマ君とかトウヤ君とか色々といるでしょう?それに比べて、君はこれといった血筋も才能も、ましてや特典も改造等もない、剣術に優れているだけのただの凡人。君の周りと比べると平凡過ぎるんだよ」


「…何が言いたい?凡人だから、僕は楽に殺せるとでも言うつもりか?」


「ううん、その逆。凡人だからこそ、私は貴方を気に掛けたの」


「何…?」


「ねぇ、カイト君。私と一緒に来ない?」


 そう言いながらフェミンはカイトの目を深く覗き込んでいく。

 この悪魔の囁きに、カイトは乗ってしまうのか?

 それとも突っぱねるのか?

 それはカイトの選択次第である。

悪魔の囁きがカイトに…。

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