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第82話

交流会2日目、開幕!

 交流会2日目、影の円卓の者達も、本日の悪巧みを企てていた。


「今日の種目は、シールドシューター、ウォールクライム、シティーズスクワット、ダイビングターゲット。シールドシューターは無視して、残りの3つで細工を行おう」


「そうですな。この3つなら、外部から干渉して、アルテミシアの妨害が出来る」


「だが昨日は千里の貴婦人(レディ・アイズ)迷宮の心臓(ラビリンス・ハーツ)に邪魔されただけでなく、選手側も強かった上に、優秀な精霊使いまで居ただろう?そこら辺はどうする?」


「なぁに、向こうに気付かれなければ、どうと言う事は無い。これで我々の望む通りの展開に」


 と、"天の笛"のスポンサーも笑みを浮かべるのだった。




 セフィアスタジアム、第5競技「シールドシューター」

 今日は、アルテミシアチームの1人であるフェリシアが大番狂わせとなった。

 彼女が洗練された構えから繰り出される正拳突きに、魔力ブーストと四大元素の力を上乗せし、その拳によって、破格の100mを出し、この競技で1位となった。


「これは飛んだ大番狂わせだぁああああ!まさかあのヴァンデグドのご令嬢が、こんな記録を出すだなんて、誰が予想出来たものか!?正に単純物理型最強クラス!彼女は紛れもなく天才拳闘士です!」


 そうして拳を突き上げたフェリシアは、観客達を大いに沸かせた。

 ただ1人、アルテミシア王国側のVIP席に座っていた彼女の兄は胃薬を飲んでいたが…。




 第6競技「ウォールクライム」

 ステージに用意された絶壁に、選手達は登っていく。

 しかしその裏で、陰から覗いている係員の姿があった。


「…タイミングを合わせて小型爆弾を起動させて、岩場を破壊。傍から見れば、運悪く崩れた様にしか見えないから、事故に見せかけられる。悪く思わないでくれよ、アルテミシアの諸君」


 そう言いながら係員がスイッチを押すが、岩場に何も起きなかった。


「っ!?どういう事だ!?確かに爆弾は埋め込んだ筈だ!?」


 係員が狼狽える中、選手達も次々にゴールしていった。


「不味い!爆弾は失敗!上にどやされる!」


 係員が去っていく中、観客席のミザリーとリアナが笑いながら会場を見ていた。


「…だから爆弾くらい、私の"目"でバレバレだって」


「そして私が空間を弄って爆弾を取り除き、こちらで処理させて貰ったよ。私達を出し抜こうったってそうはいかない」


「皆の楽しみの邪魔は、絶対にさせないからね~」




 第7競技「シティーズスクワット」

 アルテミシアチームからエミリア、カイト、レオニー、フェリシア、椿が出場。

 そして出場選手達は、用意された市街地へ転送される。

 広場へと転送されたアルテミシアチームも、今後の方針を話し合っていた。


「私が索敵魔法で半径50m以内を確認、レオニーと椿も耳を使って補助。狙撃やトラップを警戒しながら進んでいくわよ」


「了解。不意打ちや影打ちはアタシが警戒しておく」


「承知した。野戦は私の得意分野でござる」


「いつまでもこんな開けた場所にいるのは危険です。直ぐ移動しましょう」


 そしてアルテミシアチームもすぐさま移動を開始した。




 市街地周辺エリア

 そこでは、黒ローブの男達があちこち動き回っていた。


「去年は市街地で動いてたからゼシカ王女に邪魔される事となった」


「だが今回は選手にも会場のカメラにも映らない範囲だ。この場所なら霊脈を弄って建物を倒壊させる事だって…」


 その時、1人が雷撃によって倒れ、それに驚いた1人が背後から斬り捨てられた。


「何だ!?一体何が起こって…!?」


 そしてまた1人、当て身によって気絶させられ、それをやったアルフォードも見下ろしていた。


「…良し。これで大丈夫だ。アラタ、シェーラ殿、協力ありがとう」


「いえいえ、これくらい容易い事よ」


「俺も、どうって事は無い」


「アルフォードく~ん!」


 と、シャーリーも光の鎖に縛った男達を引きずってやって来た。


「こっちも、怪しい人達全員縛っておいたよ~!」


「良し、流石シャーリーだ。それじゃあ、こいつら連れて此処を離れるぞ!」


 そう言って一同はその場を去っていった。

 その様子に、影の円卓の者達も声を荒げていた。


「何で星空の勇者(ナイト・ブレイブ)とアルテミシアの王宮騎士がやって来るんだ!?」


「しかも、こちらが仕掛けようとしたタイミングでピンポイントに!」


「…一体どういう事だ?まるでこちらの動きが読まれているかの様に…?」


 次々起こる失敗に、"天の笛"のスポンサーも不審に思い始めるのだった。




 何処かの建物の中の開けた広場

 辺り一帯に糸が張り巡らせられ、その中心にブレジアンチームが佇んでいた。

 そして1本の糸が揺れたかと思うと、それは周辺の糸と共に氷に覆われ、レシアンに届きそうになると、ゼインが直ぐに糸を切った。


「…成程。獲物の探知の為に張った糸を、そのまま利用されたか。あと一歩の所だったが、残念だったな、ゼシカ王女」


 と、暗がりの中からフィルビアチームが顔を出して来る。


「うふふ。エミリア王女とのリベンジの前に、何人か片付けておきたかったけど、流石に貴方方は簡単にはいきませんね、ゼイン王子」


「こっちだって武の国の人間だ。この程度の搦め手、対処出来る」


「そうですか。こちらもメルティチームを2人程退場させたのですが」


「こちらもメルティチームを3人退場させたが、成程。既にメルティチームは全滅と言う訳か」


「その様ですね。それではアルテミシアチームが来るまでの暇潰し、付き合って貰えますか?」


「上等だ。逆にこちらがお前らを全滅させてやる」


「折角だからこんな屋内ではなく、外の空気を吸いながらやりましょうか」


 そう言ってゼシカが手を上にかざすと、魔力の光と共に建物が崩壊する事となった。

 そして瓦礫の中から両チームが這い出てくる事に。


「…ぷはっ!ゼシカ王女!これは幾ら何でもやり過ぎだぞ!」


「あらあら。単純な魔力を凝縮して一気に解き放つ、単純な魔力爆発をしてみたつもりだったけれど、意外な威力が出たわね。私も魔力量が上がってきたって事かしら?」


「何て白々しい…。元々レシアンの糸と言うアドバンテージを潰す為にやっておきながら…!」


「全く、あんな爆発起こしたら、自分達の居場所を教えてる様なものでしょう?」


 と言いながらエミリアは、他のメンバーと共にやって来る。


「あらあら、エミリア王女。そちらの調子はどうでしたか?」


「こっちも探知しながら進んでたんだけど、セフィアチームを見つけた途端、フェリシアが足元に拳を叩き付けた衝撃波で彼らの足を止めて、その隙に全員拳圧で退場させちゃったのよ。これを見てる彼女の兄も、また胃薬を飲んでる所でしょうけど」


「そうですか。では、ここで三つ巴合戦を始めましょうか」


「言ってろ。我らブレジアンが全員打倒してやる」


 そう言ったゼインが剣を足元に刺すと、周辺が炎に囲まれた。


「レシアン、お前達は他の連中の相手をしていろ。エミリア王女とゼシカ王女は俺が引き受ける」


『はっ!』


 そう言ってレシアン達が駆け出した所に、デュークがレシアンの前に立つ。


「レシアン殿、貴方は私がお相手致します」


「デュークさん、僕も忘れないで下さい」


 アルテミシア、フィルビア、ブレジアンの残り3名での混戦の上に、エミリア、ゼシカ、ゼインで、そしてカイト、デューク、レシアンでの三つ巴合戦が幕を開ける。


 レシアンが細目状にした糸を飛ばすとカイトとデュークは左右に分かれる。

 そしてデュークが剣に纏った風を糸状にして隙間に通し、レシアンを縛る。

 そして巨大な斬撃を飛ばして2人共切り裂こうとするが、カイトが前に出て剣で防ぎ、刀身で滑らせて起動を変える。

 そこから回転して斬撃を飛ばすが、デュークは仰け反って回避、レシアンは風の糸を切らせて自由になる。

 そしてレシアンは糸を固めて巨大な拳を形作る。


「デュークさん、僕達も本気出しません?」


「そうですね。では!」


 そう言ってカイトとデュークはオーラを解放、そしてレシアンへ突撃する。

 迫りくる拳をカイトが受け流し、速くなったデュークがレシアンを斬り捨て退場させる。

 そしてそのままカイトを切り裂くが、そのカイトは水になって崩れ落ち、それにデュークが気を取られてる隙にカイトが背後から斬って退場させる。


「…身代わり、上手くいって良かった。レオニー達も片付いたみたいだし、後は姉さん達だけだ」


 ゼシカが吹雪を起こすと、ゼインは炎の斬撃を飛ばし、ゼシカも側転で回避。

 エミリアが水を纏った突きを繰り出すと、ゼインも剣で防ぐ。

 そしてそのまま切り結んでいき、ゼインの真向斬りをエミリアは受け流し、ゼインを蹴り飛ばす。

 そのまま後方に下がったゼインを極寒の戦姫(ブリザード・メイデン)を発動したゼシカが氷のドームに閉じ込め、その内側に無数の氷柱を作り出して飛ばす。

 ゼインも何とか弾いていくが、対応し切れなくなり、幾つか掠って膝を着いた所にドームが消え、オーラを解放したエミリアが突撃。

 そして逆袈裟斬りを受けたゼインは退場。

 エミリアとゼシカは向き合うのだった。


「…さて、では私達も決着と行きましょうか」


「そうね。直ぐに終わらせましょう」


 そしてエミリアは自身の周囲を熱して氷点下から身を守り、ゼシカも氷の雨を降らせる。

 そして防御の際に溶けた氷から発した水蒸気でエミリアの視界が覆われ、横からゼシカが極太の槍を突き出し、エミリアに迫っていく。

 しかしエミリアは本能からか、土を纏った剣で槍を上へ弾き、そうしてがら空きになったゼシカの身体を、光を纏った剣で斬り捨て退場させた。

 そうしてアルテミシアチームの勝利が確定した事で試合終了。

 エミリア達もスタジアムに転送された。

 そして観客から歓声が上がる中、ゼシカはエミリアに向き合う。


「見事でした、エミリア王女。完全に意表を着いたつもりだったのですが」


「えぇ。私もあの時、日々の研鑽と経験の賜物からか、直感であの動きが出来たのよ」


「成程。流石はSランクに上り詰めただけはありますね」


「それは俺も同意見だ」


 と、ゼインも声を掛けて来た。


「俺も戦ってみて分かった。エミリア王女、アンタは確かに王族としても戦士としても強い。これは確かだ。だから俺も敬意を表する」


「ありがとうございます、ゼイン王子」


「私も、戦ってくれてありがとうございました」


 こうして、3人の王子と王女はお互いに頭を下げて、健闘を称え合うのだった。




 第8競技「ダイビングターゲット」

 選手達が水槽の中で泳ぎながらターゲットを破壊していく中、会場の外から眺める黒ローブの姿があった。


「流石にここいらで決めておかないと上にどやされるんでな。こちらも水流に紛れて水中に攻撃を…」


 黒ローブが魔法陣を出したその時、巨大な白い狼がその男を取り押さえる。

 そして狼の後ろからサーシャとランスロットが現れる。


「サーシャ王女…!?何故此処に…!?」


「貴様らの考えている事などお見通しだ」


「私の方でも魔力探知と、この子の嗅覚でこの周辺を探ってたんです。仕掛けるならこの辺しかありませんから」


「くっ…!お叱りが確定してしまうが、仕方ない!」


 男が煙玉を使って煙幕を張り、その隙に転移結晶(テレポートクリスタル)で脱出していった。


「…逃げられましたか」


「もう競技も大半が終わっています。心配する必要はないかと」


「いえ、奴らもその背後も、これで簡単に諦めてくれるとは思えません。まだ何か仕掛けてくる筈です」


 そう言いながらサーシャも、ミュリナのいるステージに目を向ける。

 ダイビングターゲットの方も、何事もなく終了する事となった。




 影の円卓の者達も、忌々し目に声を荒げていた。


「クソっ!まさか2日連続で失敗するだなんて!」


「お陰で我々の計画とギャンブルが成立しなくなってきている!」


「これじゃあ、折角の我々の余興が台無しだ!」


「落ち着け!まだ手は残ってる!それに、万が一の時は、大会を中止に追い込めばいいだけだ!」


 "天の笛"のスポンサーも、何とか他の者達をなだめておくのであった。




 夜、パーティー会場

 エミリアがグラス片手に佇んでいると、アラタが歩み寄って来た。


「エミリア、今日のシティーズスクワット、見事だった。流石俺の見込んだ女だ」


「ありがとうアラタ。貴方にそう言ってもらえると嬉しいわ」


「あらあら、お熱い事で」


 と、そこにゼシカとゼインが歩み寄って来た。


「エミリア王女、私も貴方に2度も敗北しましたが、私は清々しく思ってます。これからもよき友として、交流を深めていきましょう」


「俺からも、今回貴殿と戦えた事に礼を言う。今後、我が国に寄る事があれば、これからもお互いの国で仲良くやっていこう」


「えぇ、私からもよろしくお願いするわね、ゼシカ王女、ゼイン王子」


「それではアラタさん、折角ですから私とも…」


「あっ、駄目駄目!アラタは私の!」


「あら、何を勘違いなさっているのかしら?私はビジネス的な話をしていたのですけれど」


「っ!?…う~、もう!」


「ハハハ!エミリア王女も、年頃の少女らしい所もあるんだな!」


 こうして、交流会2日目も、無事に幕を下した。

 そして次の最終日、これから裏で暗躍する者達との勝負の決め手となるだろう!

エミリア、ゼシカ、ゼインはよき友である。

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