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第80話

今年の交流会の前日談である。

 アルテミシア学園、生徒会室

 交流会の種目が発表された為、生徒会の方でも確認が行なわれていた。


「種目については変更なし。例年通りの競技で行われるそうです」


「それなら出場選手についても、これまでのセオリー通りで大丈夫そうですね」


「えぇ、そうですね。所で、1年生の出場選手の残り2枠、そろそろ決まりそうですか?」


「大丈夫です。教師陣にも聞いておいた事で、決定しましたから」


 と、アイラが一同に出場名簿を見せる。


「どれどれ…。…ん?"綺羅星春香"?東方っぽい名前だけど?」


「あぁ、実は私も気になったんですけど、彼女、そこの出身って訳でもないみたいで」


「…私、会いに行ってもいいですか?」


「えぇ、どうぞ」


 と、エミリアはすぐさま生徒会室を出て、1年3組の教室へ向かう。


「この名前に出身を仄めかす発言…。…まさか彼女は…」


 と、辿り着いた教室で、早速春香に声を掛ける。


「あの、実は貴方に個人的な用があるんだけど、良いかしら?」


「エミリア様…?はい、構いませんが…?」


 そして2人は校舎裏の裏庭に身を潜める。


「あの、エミリア様?一体何の御用でしょうか?」


「貴方に確認を取りたい事があって」


「私に?」


「もしかして貴方、異世界の人間じゃないかしら?」


「…っ!?」


「東方出身と言う訳でも無いのに、そこを思わせる名前の時点で気付くわよ。それに、今の動揺、如何やら当たりみたいね。大丈夫、私もとある理由で理解があるから」


 その時、春香の上着からナビィが顔を出す。


「春香、この人になら話してもいいんじゃない?」


「兎のぬいぐるみ?」


「ナビィ…。…うん、そうだね。はい、そうです。実は私、自分の世界で魔法少女と言う者をやってました。魔法少女カレイドスター、それが私のもう1つの名前です。人々の希望を奪う悪の集団と1年間戦っていました。それから中学の卒業式を迎えた日、謎の光に吸い込まれて、私達はこの世界にやって来る事になったんです。幸い、私達も親切な人達に出会えたお陰で、今の生活を整える事が出来たんです。知らない世界に飛ばされたけど、この世界でも私の力が必要とされてる事は分かったんです。そう言う訳ですのでエミリア様、どうか私の事は…」


「分かってる。私も信頼出来る人にしか喋らないから」


「…っ!ありがとうございます!」


「そう言う訳だから、後でその人達にもちゃんと説明させてね?」


「はっ、はい!」


 それからしばらくした後、エミリアは春香の事をカイト達にも紹介しておくのだった。




 夜、女子寮、エミリアの部屋

 夕食の後片付けを済ませたエミリアは、ゼシカと通信していた。


<こんばんは、エミリア王女>


「こんばんは、ゼシカ王女。一体何の御用で?」


<今回の交流会の種目がもう発表されたでしょう?ですので、私の方でも、貴方に挑戦状を。今回もまた、シティーズスクワットにエントリーして、あの時のリベンジマッチと参りましょう。あの時から1年、私の方も強くなりましたし、あの時の雪辱を果たせる筈です>


「…こうして直に挑戦状を叩き付けられた以上、お互いのプライドの為に受けるしかない。でもって、貴方の事だから、私の悪評をばら撒くと脅迫し兼ねないし。良いわ。その挑戦、受けて立ちます!」


<そう来なくては>


「言っとくけど、私だってあの時より強くなっているし、今やSランク冒険者よ。貴方だって、そこら辺知らない訳じゃないでしょう?」


<当然。ですので、私の方でも万全を期して挑みます。そちらも覚悟しておいて下さい。それではまた、当日に>


 そう言ってゼシカも通信を切った。


「随分自信満々だったわね、ゼシカ王女。今回も勝てる見込みは有りそう?」


「正直やってみなくちゃ分からないけど、私だって負けるつもりはないわよ」


「そりゃそうよね。アラタだって来てくれるし、格好悪い所、見せたくないわよね?」


「フィーナってば、またそうやって…。まぁ、取り敢えず、お風呂に入りましょうか」


 そう言いながらエミリアは浴室で入浴に入る事となった。




 校舎裏、裏庭

 暗い森林の中、ウェインは秘蔵回線で連絡していた。


「…以上が交流会の種目及びこちら側の出場選手です」


<ご苦労様です。ではこちらも、当日の計画を立てるとします。うちのスポンサーの1つが、アルテミシア王国が負ける事によって、大幅な利益を得る事が可能となる取引を行う事になったので>


「了解。では、こちらの方でも、うちのチームが不利になる様、裏で動けば良いんですね?」


<その通り。ではまた当日、追って指示を出します>


 その言葉を最後に、通信が切れる事となった。


「…さて、今回の交流会、かなり荒れる事になりそうだ」


 そしてウェインもニヤリとしながら、裏庭を去っていった。




 それから時は流れ、4月の終わり頃、空き教室にて交流会の集まりが開かれていた。

 先ずアイラから、代表選手達に挨拶を始めた。


「皆さん、お集まりいただき、ありがとうございます。今此処に集まっている我々は、来月に開催される交流会の代表メンバーとなります。その場で我々は、持てる力と技を以て、大会に挑む事となります。そして今年もまた、この場にいる皆の力を合わせて、優勝を目指していきましょう!」


「それでは今から下準備として、機材や装備、衣装のチェックに入ります。それが済んだら、全員当日に備えて、各自調整を行って下さい」


 こうして、各々でそれぞれの調整に入っていく。

 整備班と共に機材や装備の調整に入る者、衣装担当と共に衣装の採寸に入る者、生徒会と共に当日の流れを確認する者と言った具合にだ。

 3年生達は、今年が最後の出場となる為、悔いのない様に意気込んでいる。

 2年生達は、去年の失敗や敗北からのリベンジを果たそうと言う思いに溢れている。

 1年生達は、緊張や不安等言った感情がありながらも、精一杯やろうと気合を入れている。

 そう言ったあらゆる思いを胸に、一同は稽古に励むのだった。




 それから更に時は流れて5月の初め、交流会の前日を迎える事となった。

 セフィアスタジアム・グランドホテルで迎えた夜、そのホールにて、エミリアはゼシカと会っていた。


「お久しぶりですね、エミリア王女」


「貴方もね、ゼシカ王女」


 そう言いながら、2人は椅子に腰掛ける。


「エミリア王女、Sランク就任おめでとうございます。世界最高峰に到達するとは恐れ入ります」


「えぇ。私も漸く、この領域に辿り着く事が出来たわ。そんな私に、勝つ見込みはあるの?」


「正直、やってみなければ分かりません。ですが、私も半年前の屈辱を乗り越え、更に鍛錬を重ねて、更なる力を得て、この場に舞い戻って参りました。今年最後の出場となる交流会で、今度こそ貴方に勝てる様に」


「あら、嬉しい事言ってくれるじゃない?でも私だってそれは同じよ。今回も私が勝って見せるから」


「あらあら、それは勇ましい限りですね。では、シティーズスクワット、楽しみにしてますよ」


「えぇ、それじゃあ今度は戦いの舞台でね」


 そう言って2人は、笑ってそれぞれの部屋へ戻って行った。




 ホテル裏の森林にて、ウェインは秘蔵回線を使っていた。


「はい。それでは明日からの3日間、こちらも行動を開始します」


<えぇ。ではウェイン、そちらの方も頼みましたよ>


 その言葉を最後に、通信も切れる事となった。


「…悪いけど、俺だって仕事なんでね。今回はアルテミシア学園は負けて貰うよ。スポンサーの機嫌だって取らなきゃならないんだ。悪く思わないでくれよ」


 そう言ってウェインはホテルへと戻って行く。

 今年の交流会に立ち込める暗雲。

 果たしてエミリア達は乗り越える事が出来るのか?

 それは今後の、彼女達の運と実力次第である。

さて、今回はどうなる事やら。

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