第79話
今年度もあの時期が訪れる。
アルテミシア王城、地下牢
エミリア達はアルベルトとアルフォードと共に、牢の中の死体を確認していた。
「…真夜中に急に気絶したこいつらが警備兵の詰所に現れたと報告を受けて、身元の都合上、うちで身柄を預かる事になったんだけどな。やっぱり口封じの呪術を仕込まれていた。まぁ、オリエンテーションを狙った犯行だと聞き出せたのは、不幸中の幸いだ」
「恐らく、奴らは何らかの理由で、王家の信用を落とす為に、今回の犯行に及んだと見ていいだろう。我々を失墜させて、その先にある行動とは一体…?」
「今回みたいな事が起きた時の対策も取らないといけないって事だよね、兄さん?」
「私の方でも、学園に気づかれない範囲で予防策は講じておく。ミルザもフェリシアを狙って、今回の犯行に出たと言う証言だってあったくらいだし。私も生徒会役員として、出来る限りの事はしておくわ」
「無論、王宮の方でも、最低限の事はやっておく。だからお前達も学生らしく振る舞っておけ」
そして見聞を終えたエミリア達が学園に戻る中、エミリアは1人、何かを考え込んでいた。
「…オリエンテーションの時期を狙った計画的な犯行。そして奇襲のタイミング。おかしい…。何で日程や場所を正確に把握出来たの?…まさか」
街中のカフェにて、ウェインとお忍びの格好をしたジルティナが、対面してコーヒーを飲んでいた。
「…と言う訳で、作戦は見事に失敗に終わりました」
「魔法少女によって奇襲は失敗。そしてミルザも敗れて、今後の見込み無しとして捨てられたと。折角こちらが流した情報が無駄に終わっちゃったみたいですね」
「えぇ。ですので我々の方でも、人員の再編成をやらなくてはならなくなりました」
「で、俺をカフェに呼び出したのは、お説教の為ですか?」
「いえ、貴方を叱りに来たのではありません。次の計画の為の話です。これから5月に入ったら交流会が開かれるでしょう?去年は思わぬ邪魔が入った為失敗しましたが、今回は情報の内容次第で我々の行動を決めておこうかと思います」
「成程。では、俺の方でも情報を仕入れておきますので、それまで暫しお待ち下さい」
「えぇ、よろしくお願いします」
こうして、コーヒーを飲み終えた2人は店を出るのだった。
そして転移の為に路地裏に入ったジルティナに声を掛ける男達がいた。
「姉ちゃん、お前かなりの別嬪さんだなぁ?ちょっと俺らと遊ばねぇか?」
「大丈夫。俺達もちゃんと可愛がってやるし、気持ちいい思いもさせるからよぉ」
「…見たところ、悲惨な目に会って当然のクズですし、被験体として持ち帰りましょうか」
「あぁ?何言って…って、ぎゃああああ!」
男達は悲鳴と共に氷漬けにされ、ジルティナも彼らと共に転移魔法で姿を消した。
後日、アルテミシア学園、生徒会室
今回から5月に控えている交流会に関する会議が開かれていた。
「では、本日より来月に迎える交流会に向けて会議を行います。種目についてはまだ告知されていませんが、選手の方は今の内に選出しておきます。2年生と3年生については、前回と変更する可能性はあります。1年生については、これから我々の方で審査しておくとします。今回はここまでにして、次回から本格的な審査をやって参ります」
今回の会議を軽く終わらせ、生徒会も解散となる。
ウェインが廊下を歩いていると、エミリアが声を掛けて来る。
「ウェイ~ン!」
「…エミリア様?どうなさいました?」
「ウェイン、今回は生徒会室メンバーとして交流会に出る事になったでしょう?この学園の代表として参加する事になって緊張してないかと思って」
「アハハ。大丈夫ですよ。俺だってやる時はやりますって」
その時、エミリアはウェインの肩と胸に手を当てて、その挙動にウェインも驚く。
「エ、エミリア様!?一体何を…!?」
「…緊張、少しは和らいだ?」
「へ…?」
「男の人って、こうしてあげると安心するって、聞いた事あるから」
エミリアの可愛らしい顔が間近に見える事で、ウェインも顔を赤らめる。
「…っと、兎に角、早く離れて!誰かに見られたら誤解されるし、何より、彼氏さんにも悪いですから!」
「アハハ!そうね!ちょっとからかい過ぎちゃった!」
と、エミリアは笑いながらウェインから離れる。
「…兎に角、交流会、お互い頑張りましょう!」
「えぇ、勿論!」
「じゃあ、私はこれで!」
と、エミリアはすぐさま自分の教室へと戻って行く。
「…ドキッとしたな、あれは。本当に中身男なのか?…っと、ヤバい!俺も戻らないと!」
と、ウェインも直ぐに教室に戻って行った。
同時刻、フィルビア王国
フィルビア学園の修練所にて、ゼシカは修練に励んでいた。
そしてベンチに座り、タオルで顔を拭いていると、デュークが水筒を持って来た。
「お疲れ様です、ゼシカ様」
「ありがとう、デューク」
「成果の方は如何程に?」
「上々な成果が出てるわ。5ヶ月前に辛酸を舐めさせられてから、こちらでも修練しておいたもの。これなら今度こそ、エミリア王女にリベンジを果たせるわ」
「そのエミリア王女ですが、最近功績を認められて、Sランクに昇格したと言う話です。流石に彼女も、あれから相当強くなっている筈では…?」
「確かにそうかもね。でも、だからってこちらも尻込みしたりもしない。持てる力を以て、彼女をねじ伏せるのみよ!」
「そうですね。俺もお供致します。…しかし、彼女の方も、今回もゼシカ様と同じ種目に出るとは限らないのでは…?」
「それは大丈夫。種目が発表されたら、私も直ぐに彼女に挑戦状を叩きつけるから」
「成程。その為に彼女の通信水晶の回線を聞いたのですか」
「や~ね~。"天の笛"の対策に協力するのは本当だってば」
「…学園生活最後の交流会、悔いのない様にしないといけませんね」
「えぇ。そう言う訳だから、貴方もエスコート、お願いね」
「えぇ、勿論」
それから休憩を終えた2人は、修練に戻るのだった。
翌日、アルテミシア学園、生徒会室
今回は、代表選手の選出を行っていた。
「生徒会メンバーは、前回同様、レニンを裏方に回して、他4人で出場。3年生は前回出た5人は引き続き出場可能となっている」
「2年生については、カイトとハルトマリーは続投。去年と比べて実績の振り幅が大きかった事で、残り3枠は、スバル、レオニー、ミュリナが入る事になった」
「1年生の方は、先ずフェリシア嬢は確定しちゃってるだろ?で、残りの4枠は、ネム・サントライト、花宮椿、それから…う~ん、どうしようかなぁ…」
「でも、出場する種目についてはどうするだ?」
「それなんだよなぁ。各人毎の相性だってある以上は、慎重にならないと」
「まぁ、それについては、また今度話しましょう。今はまだここまでで」
そして生徒会が解散した後、エミリアはカイト達に出場に関する報告をした。
「…と言う訳だから、皆も修練を怠らない様にね」
「うん、それは勿論」
「私達も気合い入れて頑張るよ」
「エミリア、"例の件"について、どうするつもり?」
と、フィーナがエミリアに話しかけてくる。
「勿論、抜かりなく動いておくわよ。だからフィーナにも手伝って貰ったんじゃない」
「何の話?」
「あぁ、ごめん。ちょっとした調べ物でね。確信が持てたら、皆にも話すわ」
「アタシらもそろそろ行こうぜ」
「あぁ、ごめん。それじゃあ、ミュリナにも声を掛けないと!」
と、一同は2組の教室へと足を運ぶのだった。
今回も迎える交流会。
今年もまた、激しい歓声を背に、エミリア達も邁進するだろう。
今年の交流会も波乱を呼ぶ事になるのか?




