第77話
エミリア、Sランク昇格へ!
週末、冒険者ギルド、会議室
エミリア達はアラタと共に、エミリアのSランク就任の件で挨拶に来ていた。
「エミリア王女、そなたのSランク昇格の件なんだが、本当に良いのか?」
「はい!私も王族と冒険者、どちらにも掲げている信念の為に、そして、私の信じる正義を貫き通す為に、Sランクに就任致します!」
「良かろう!では、ここに冒険老君、アトラ・ゴージュの名の下に、アルテミシア王国第1王女、陽光の姫君、エミリア・フォン・アルテミシアのSランク昇格を認める!」
「ようこそ、Sランク集いの場へ!取り敢えず、主立ってる私達4人だけでも覚えておいてね。Sランク冒険者は、会議でも滅多に集まる事はないから」
「リアナさん…。はい、分かりました。それと、私も今は学生ですが、会議等に呼んでも構いませんよ。私だって王族である以上、必ず出席しますので」
「うふふ~。やっぱりこの子も、アラタ君と同じで、真面目で素直な子だね~。アラタ君が交際をする事になったのも頷けるね~」
「もう、揶揄わないで下さいよ、ミザリーさん!」
「しっかし、これがSランク冒険者の顔となってる4人か~」
「そこにエミリアが入った事で、実質5人なんだよね」
「本当、エミリアもそこまで名前が売れる様になる程、強くなったんだね」
そしてミザリーは静かにエミリアの耳元に顔を近付ける。
「貴方の素顔の事とかは、ちゃんと黙ってあげるからね、スレイ君」
(っ!?そう言えばこの人の目は、千里眼とかの類だって話だった…!って事は、仮面の同化や、フィーナやシェーラの事も知っていたっておかしくない…!)
「では、お主がSランクへ昇格した事は、後に告知される事となる。この後の事後処理等については、私の方でやっておくので、もう下がってよいぞ」
「はい、失礼します」
そう言ってエミリアはカイト達と共に退室するのであった。
「…アラタ、お主の方でも、ちゃんと彼女を守ってやれよ」
「心得てます」
「うふふ、これで彼女は正真正銘、誰も迂闊に手を出せない存在になったね~」
「あぁ、実力と権力、この両方の力は、かなりの有効打になるだろう」
「アンタら、最初からそれを狙って…」
「そう言う事だ。無論、我々も出来る限りの事はする。アラタ、お主も頼むぞ」
「はい、かしこまりました」
そしてエミリアは受付カウンターでも手続きを行っていた。
「はい、エミリア様のSランクへの昇格、承りました」
「こちらもギルドに来たついでに、1年生達のオリエンテーションに来られそうな冒険者がいないか、スケジュールの確認を行いたいのだけど、良いかしら?」
「畏まりました。少々お待ち下さい」
それを了承したカガリも、冒険者達のスケジュール確認に入る事となった。
「しっかし、エミリア様がSランクにねぇ。益々利権争いの的になりかねないんじゃないんですか?」
「まぁ確かに、私もそこら辺どうにかしておきたいわよ」
「どういう事、2人共?」
「よく考えてみなさい。Sランク冒険者は世界最高峰の称号の1つ。それ故に、汚い大人やずる賢い権力者等が、その影響力を手中に収める為に、政略結婚や取引の交渉を始めとする小ズルい手段で手に入れようとしてくる。特に私なんて王族でもあるから、国の利権目当てで縁談とかを持ち掛けられた事もあったし、500年前だって、勇者も魔王討伐の功績を手にした事で、利権争いの標的にもされたくらいよ」
「あぁ、成程。確かに実力と権力両方共トップクラスじゃあ、エミリアの事を欲しがる人達も現れるわ」
「それで今までどうやってその手の話を回避して来たの?」
「そりゃあ、お父様とお母様が圧力を掛けたり、お兄様が騎士団と連携して裏取りしたり、私も王族の権力と冒険者としての実力を使って、片っ端から潰していったわよ」
「じゃあ今回も、同じ手で回避していくの?」
「えぇ、今はレオニーだっているし、あの子にも裏取りとか色々頼んでおくわよ。それにこの話は長老達だって対応してくれるのは間違いないわ」
「確かにそうか。あの人達だって大人だもんね」
「そこら辺は当人達の手腕に任せておくしかないでしょう。…っと、はい、エミリア様」
と、カガリは書類をエミリアに手渡す。
「こちら、この2週間の冒険者達の勤務スケジュールです。目ぼしい人間を見つけたら、お声掛け下さい。ギルドを介して、仕事の依頼を発注しておきますので」
「ありがとうございます。このリスト、生徒会の方でも精査させて貰います。それじゃあ、私達はこれで失礼させて貰います」
「ありがとうございました。こちらもご依頼承らせて貰いますね」
こうして、エミリア達も冒険者ギルドを出る事となった。
休み明け、アルテミシア学園、生徒会室
アイラはエミリアから貰ったリストに目を通していた。
「…はい。では、こちらの方でもリストを精査しておきます」
「はい、よろしくお願いします」
「では、今朝の会議に入ります」
そして会議が始まる中、ウェインもエミリアを見ながら思考していた。
(…本当に目麗しい美少女にしか見えないなぁ。これで中身が男だなんて。DNA鑑定ですら本物と同じ判定が出る程の肉体改造。そして記憶の転写。"組替の魔女"シェーラってのは、本当に凄腕の魔女なんだなぁ。この秘密は利用価値があるんで、上もこれと言った指示とかは出していないんだろう。さて、上もどうやってこの案件を使う気でいるのか…)
「…以上で、来週に控えている1年生のオリエンテーションの会議は終わります。引率の冒険者については、協議の末、我々の方から交渉すると言う形で」
こうして、今朝の会議は終了する事となった。
その夜、"天の笛"本部、修練所
その中央で、ミルザは電撃を迸らせて、そして静まり返っていた。
「…フフフ。調整は完璧だ。これであの暴力令嬢にリベンジ出来る!」
「ミルザちゃ~ん、精が出るね~。僕も手を貸してあげようか~?」
と、糸目の少年がミルザに話しかけてくる。
「要らない。アタシ1人で十分よ。アンタは大人しくしてなさい」
「そんなつれない事言わないでよ~。僕達の仲じゃないか~」
「やかましい!アタシはアンタのその態度が気に入らないのよ!」
「向こうだって力を付けているだろうし、エミリア王女だってSランクに上がったって話だよ?それによって、彼女の警戒レベルが星空の勇者と同等にまで引き上げられたって話だし?」
「だとしても、これはアタシ1人でやる。これはアタシのプライドの問題だ」
「あっ、そう?だったら今度は負けない様にね~?流石にこれ以上の黒星はまずそうだし~」
「言われなくても分かってる。今度こそ、アタシの価値を確かなものにする」
そう言ってミルザは通路の中へ消えて行った。
「頑張ってね~、ミルザちゃ~ん!」
翌日、アルテミシア学園、裏庭
ウェインは秘蔵回線で通信していた。
「1年生のオリエンテーションの日程とスケジュールを教えて欲しい?」
<はい。ミルザが今年入った1年生の1人にリベンジしたいと意気込んでおりまして>
「何でオリエンテーションの日に?別に他のタイミングでも良くありません?」
<経験が浅く、危機感の無い1年生達が集まる中、想定外の事態を起こし、1年生達に恐怖を植え付け、自信が喪失した所をエミリア王女に責任を負わせる。そうして炎上した所を狙って、彼女の正体を暴露し、アルテミシア王家の信用を失墜させる。それを狙った計画なのですよ、これは>
「成程。では、こちらも随時報告しておきます。ジルティナさん、それではまた」
そう言ってウェインは通信を終え、校舎に戻っていく。
「さぁて、この後、どういう展開になっていくのか見物だな」
こうして、今年のオリエンテーションは波乱を呼ぶ事となる。
果たして、この先の展開はどちらに転ぶ事になるだろうか。
それはまだ誰も分からない。
そしてオリエンテーションを狙った新たな事件へ!




