第76話
Sランク冒険者の会議が始まる。
アルテミシア学園女子寮、エミリアの部屋
エミリアとフィーナは、お茶を嗜んでいた。
「所でエミリア、アラタの誕生日会も済ませたし、次のデートくらいは考えているのよね?」
「まぁ、それは考えているけど、今は無理かな」
「何でよ?別にお互い多忙って訳でも無いし、倦怠期でも無いでしょ?」
「言い方。…それがアラタ、Sランク冒険者の報告会をやる事になってるのよ」
「Sランクでもあるのね、そう言う集会」
「そりゃあSランクはその強さ故、行動の自由の幅が効きやすくて、緊急時以外では滅多に集まる事が無いくらいよ。でもやっぱり、Sランクでも報告とかの義務が生じてる事には変わりないから」
「そりゃそうか。しかしSランクの集会かぁ。どうなるんだろう?」
「大丈夫じゃない?世界最高峰の冒険者達だから」
「それもそうか」
と、2人は優雅なお茶会を過ごすのだった。
冒険者ギルド、会議室
その場に設けられてるテーブルの一席にアラタが座っていた。
「…またこの時がやって来たか。報告会でもSランクは滅多に集まらないからな。さて、今回はどのくらいやって来るか…」
「アラタ君、久しぶり~!ざっと1年くらいかな~?」
と、紫のロングヘアーで暗色系のドレス、紫の水晶の杖を持つ糸目の女性が声を掛ける。
「ざっとそれくらいで合ってる。アンタの顔も久々に見るな」
「はぁい、千里の貴婦人、ミザリー・フィンベール、やって来ました~」
と、ミザリーはアラタの隣に座る。
「聞いてるよ、アラタ君。エミリア王女と交際を始めたんだって~?」
「何だよ?別にいいだろう、俺が誰と付き合おうと」
「そうだね~。そう言うのは個人の自由だからね~」
「そう言うアンタこそ、今まで何してたんだ?まぁ、掴み所が無いのはいつもの事だが」
「あぁ、それ。裏の人間を取り締まったり、違法品を管理したり色々とね~。5ヶ月前くらいに、私が目を付けていた違法品を横取りされたりもしたけど」
「それもそうか。アンタ裏でも顔が効く力と頭脳の持ち主だからな」
「そうだね~。私達が一緒に仕事してた頃が懐かしいね~」
「何だ、お前ら来てたのか?」
と、目の前の席に白の着物と黒の羽織を着た、黒髪の中年男性が座る。
「アンタまで来たか。東方の侍の1人にして剣聖、校倉刀史郎」
「何だよ。俺も丁度暇だったんで、顔出しに来たってのに」
「風来坊の貴方が来るなんて珍しいからね」
「はいはーい!迷宮の心臓、リアナ・ウォーカー、到着しました~!」
と、赤髪で眼鏡の女性が席に座る。
「…って、あれ~?Sランク、今回も全然集まってない感じ~!?」
「仕方ないだろ。俺達はそう言う連中の集まりなんだから」
「ちゃんと出席するのは、私とアラタ君とリアナちゃん、そして長老くらいだからね~」
「仕方あるまい。今回も我々だけで済ませるぞ」
と、一番大きな席に、大柄で仙人の風貌の老人が座る。
「Sランク冒険者リーダー、冒険老君、アトラ・ゴージュ。只今参上した」
「それじゃあ、俺達だけで会議を始めましょうか」
「では先ず、各々の近況報告から始めておこうか。先ず私だが、各国のギルド及び国家へと赴き、国の情勢や市井の状態等を目視し、あらゆる取り締まりを助力していた。あらゆる人の流れを把握し、冒険者の秩序を守らねばならんからな」
「次は俺だ。色んな場所を渡り歩いて来たが、いけ好かねぇ奴らをちらほら見た。そいつら、力は大した事ねぇ癖してあちこちで威張り散らしたり、逆に自分の力を見せつけて人を見下してるろくでなしまでいる始末だ。やっぱりこの手の仕事でも、人格に問題が生じやすいのも事実だ」
「次は私だね。私も地形をいじったり、天然のダンジョンに潜ったりしながら、色々探ってたんだよね~。けど、これと言った成果は無し。やっぱりハードルが低い所は、大した情報は得られないって事だ」
「次は私だね~。こっちも裏側の情勢を探ったり、情報の伝手を確保したりと色々ね~。でも最近、あちこちで妙な動きを掴んでるんだよね~。違法品の盗難だったり、あちこちで大量失踪が起きてたり、妙な空間移動や魂の呼び寄せの痕跡だったり。しかもその裏で妙な連中が変な動きをしてるのを確認してるんだよね~。"天使の羽根と光輪と十字架のエンブレム"を持つ奴ら、アラタ君なら知ってる筈でしょ?」
「何を根拠に…?」
「君とエミリア王女達が連中と関わっているのは調べが着いているんだよ~」
「っ!?…アンタの"目"の前では誤魔化せないか。それじゃあ最後に俺から。俺は冒険者の仕事をしている最中にエミリア王女達が妙な組織と戦っている現場に出くわした。組織の名は"天の笛"。奴らは人体実験で手駒を増やしたり、異世界の力を取り込んだり、あらゆる方法でこの世界の実権を握ろうとしている。連中の行動が目に余るものだったので、俺も連中の撲滅に手を貸している訳だ」
「成程。それは看過出来んな。分かった、アラタは引き続き"天の笛"の対処に当たれ。我々はこれまで通りの動きを続ける。Sランクが大きく動くと、連中に感づかれかねないしな」
「ありがとうございます」
「そう言う事だったんだね~」
「成程ね。良し分かった!私も連中に気づかれない様、探っとくよ」
「俺が斬る分は残しておいてくれるんだろうな?」
「今回の報告は以上となるが、それ以外に2つ。先ず知っての通り、私ももう歳だ。老い先だってもう短いし、私に何かあった時の為に、色々手を打っておかねばな。それで、私の後任となる新たなSランクのリーダーだが、星空の勇者、アラタ・ホシミヤを推薦する!」
「俺が!?ミザリーやリアナだっているだろ!?」
「それなんだが、2人だけでなく、Sランクは癖の強い連中の集まりでもあるからな。そこで、Sランクの中で比較的真面目で人格者、そして常識的なアラタが適任だ」
「否定出来ない…。分かりました、考えておきます」
「うむ、頼むぞ。そしてもう1つだが、これはエミリア王女に関わる話だ」
「何でアイツの名前が?」
「ミザリーから色々報告を受けているからだ」
「なっ!?」
「うふふ」
「彼女は王族としての公務の傍ら、冒険者にも籍を置き、今やAランク。そしてこの1年間でも目まぐるしい成長を遂げ、"天の笛"の事件を含め、多くの成果を出し続けた。そしてその末に、アラタと肩を並べて戦える程にまで成長した。私はこの成長を讃え、陽光の姫君、エミリア・フォン・アルテミシアをSランクへ昇格させようと思う!」
「ま、待って下さい!アイツはこの国の王女ですよ!?万が一の事があったら…!?」
「無論、そこら辺も含めて、オズワルド陛下やアルベルト王子とも議論した。そして2人も、本人が立場に縛られず、自らの王族としての正義を全う出来るならと了承した。そう言う訳だからアラタ、この事を本人に伝えておいてくれるか?当然、お前も彼女をちゃんと守るつもりだろう?」
「…分かりました」
「よろしい!では、今回の会議はここまで!」
翌日、アルテミシア学園、応接室
アラタはエミリア達に会議の内容を話していた。
「…と言う訳だが、これについてはお前の意思を尊重した上での話になる」
「…分かったわ。私、エミリア・フォン・アルテミシアは、Sランクへの昇格を受け入れます!」
「良いのか?危険な任務にも就く事になるぞ?」
「構わないわ。私だって王族だもの。そんな風に誰かに守って貰ってばっかりじゃあ、私の正義を証明出来ない。"天の笛"の様な奴らから人々を守る為なら、Sランクにだってなってやるし、どんな危険な任務にだって就いて見せるわ!」
「そうだった。お前はそう言う奴だった。分かった、俺からもちゃんと伝えておく。あ、それなんだが、お前らまだ学生だろ?だから向こうも、今は学業優先で良いって言ってた。そう言う訳だから、ちゃんと勉強しておけよ」
「分かってるわよ、それくらい」
「しっかし、姉さんがSランクかぁ。そうなると、僕達はどうなるんだろう?」
「あぁ、それについては大丈夫だ。エミリアが信用してるなら問題ないと」
「それじゃあ、私達も更に励まないと!」
「そうだね!」
「それに、私も生徒会の仕事があるし、そっちもやっておかないと」
こうして、エミリアはSランク冒険者の仲間入りを果たし、更に陽光の姫君の名が上がる事となった。
エミリアとアラタ、世界最高峰となった勇者と姫の戦いは、新たな始まりを迎えたのだった。
エミリアもSランク冒険者となった。




