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第73話

春休み最終エピソード。

 始まってから色々あった春休みも、遂に終盤を迎える事となった。

 それによってエミリアも、書類整理をかなり進める事となった。


「ふぅ、書類の方も結構片付いたわね」


「そうだね。こっちも課題を終わらせてあるし、新学期も大丈夫でしょう」


「それに、俺もそろそろ冒険者の仕事を再開する事になってるからな。そう言う訳だから、お前らも日頃の鍛錬を欠かさない様にな」


「分かってるわよ。アラタの方こそ、気を付けてよね」


「なぁに、俺だって手を抜くつもりも油断する気もないさ」


「さて、それじゃあ、書類を一気に片付けるわよ」


 こうして、エミリア達も作業の手を早めていくのだった。




 "天の笛"本部

 ジルティナの方でも、これまでの組織の活動報告を確かめていた。


「…ふむ。研究については今も滞りなく進んでいて、成果も好調。研究員、調査員、戦闘員も人員配置は問題無し。よろしい、引き続き業務に戻りなさい」


「はっ!」


 と、ジルティナも報告に来た団員を下がらせた。


「…ケイリーがやられた事は、大した打撃にはならず、寧ろそのお陰でミルザの方も更にやる気が引き出された。そして転生者と転移者をこちらに引き込む事については上手くいってる。我々の方も万事問題ない様で何よりです」


「隊長」


 と、ジルティナの下にケールが訪れる。


「ケール、もう動いてよろしいのですか?」


「えぇ、私はヴァーリとファム程痛手を負ってなかったから、直ぐに動ける様になったわ。それよりも、団長が呼んでるわよ」


「分かりました。直ぐ伺います」


 と、ジルティナも直ぐにその場を去っていく。

 そして辿り着いた団長の部屋。

 ジルティナは扉をノックした上で、返って来た返事を合図に部屋に入る。


「失礼します。団長、どの様なご用件でしょうか?」


「来たか…。何、例のゴーレムの奪取の失敗の報告の時に、エミリア王女が500年前の記憶を見ていると言っていただろう?それで、こちらの方でも調査の手筈が整い次第、調べる事になっている」


「成程。それでその調査の際に、双性者(ジェミメイル)の方でも人員を出しておく事になると」


「あぁ。そう言う訳だから、手配の方も頼むぞ」


「はっ、失礼します」


 そう言ってジルティナは退室し、団長も1人物思いに耽っていた。


「…私の予想が正しければ、恐らくエミリア王女は…」




 夜、アルテミシア城、ユフィの私室

 ユフィを寝かしつけたエミリアは、静かに部屋を出ていった。

 そして廊下を歩いていると、目の前にアラタが現れた。


「アラタ?どうして此処に?」


「なぁに、ちょいと軽く散歩をしていただけだ。折角だ、少し話をしよう」


 そう言って、2人はバルコニーに出る。


「…こうして、城の中で星空を眺めるのは、1年ぶりだな」


「えぇ、もうそんなに経ったのね。今思えば、この1年間色々あったわね」


「あぁ、まさか俺も、こうして城の中に自由に出入り出来る様になるとは思わなかったな」


「私も思い返して見れば、元々は実家が嫌になってた時に、急に王女の生活をする事に驚いた。そしてオズワルドお父様にエルメシアお母様、アルベルトお兄様にユフィ、暖かい王族の家族にこうして受け入れられる事になった。それから5年、こうして王女と冒険者を両立しながら充実した日々を過ごしていた時に、本物のエミリアが死んだ原因であった組織と関わっていく事にもなり、カイトとアルフォードお兄様、ゲイルお父様とも和解して、ハルトマリーにスバルにフィーナ、レオニーにアリア、多くの人達と出会いを重ねていって、そしてアラタ、貴方ともこうして寄り添う様になっていった。6年前までは、私もこんな日々を過ごす事になるだなんて思いもしなかったわ」


「俺もだよ。勇者の血筋に迷いながら、のらりくらりと日々を過ごしていた俺が、こんな風に誰かと笑い合える時間を手にして、そして王女と交際するまでに至るなんて思いもしてなかった。俺も今までの生活から、こんな日々を迎える事になるだなんて、思いもしていなかった」


「フフフ、本当にね。…ねぇアラタ、ちょっとかがんで」


「…?」


 と、アラタがかがんで頭を低くし、エミリアが距離を詰めたと思ったら、エミリアがアラタの頬にキスをし、その行為にアラタも顔を赤らめる。


「えっ、あっ、エミリア?これは一体?」


「うふふ。私からの愛情表現。私もこれくらい出来る様になったんだから」


「あぁ、そうか。流石の俺も驚いたぞ」


「えぇ、そう。でもここはまだ待っててね。私もまだ覚悟も心の準備も決めてないから」


 と、エミリアはアラタの唇に人差し指を当てて微笑む。


「あぁ、分かった。取り敢えず、中に入ろうか。身体を冷やしてしまう」


「えぇ、それじゃあアラタ、おやすみなさい」


「あぁ、おやすみ」


 そう言って2人は城の中に戻り、就寝に着くのだった。




 シェーラの家

 ハルトマリーが寝たのを確認したシェーラは、リビングにて腰掛け、天窓から星を眺めていた。


「…これは偶然ではなく、運命だったのかもしれないわね。6年前、懐かしい気配を感じてやって来て見れば、そこにアンリエットの魂を持ったスレイと出会い、今のエミリアとしての人生を与えた事で、かつてのアンリエットと同じ思想を持って生きる事になるだなんて。そこから更にタケルの魂を持つアラタと出会って、再び心が惹かれ合う事になった。あの2人も輪廻転生した先で再び出会い、そして500年前と同じ様に心を通わせる事になった。いや、今のスレイの人生も、あの2人の恋模様も、500年前を超えているか」


 そう言って立ち上がったシェーラは保管庫に入り、その奥にある机に手を伸ばし、引き出しにしまわれていた日記と写真を取り出し眺める。


「…本当に、運命ってのは、巡り巡って来るものなのね。私も、この長い時の中を生き続けてきた甲斐があるってものだわ」


 その写真に写っていたのは、500年前の勇者パーティーとシェーラが仲良く写っているものだった。




 そして迎えた春休み最終日、エミリアは謁見室にて、国王夫妻と挨拶をしていた。


「それでは、行って参ります。お父様、お母様」


「うむ、行って参れ」


「こちらの事は気にしなくていいですからね」


 そうして玄関まで行くと、アルベルトとユフィが出迎えていた。


「エミリア、お前の事だから問題ないと思うが、気をつけてな」


「お姉様、いってらっしゃいませ」


「えぇ、行ってきます。アルベルトお兄様、ユフィ」


 そう言ってエミリアは馬車に乗り、アルテミシア学園へ向かう。

 そして馬車の中、エミリアの胸から顔を出したフィーナが語りかける。


「…本当、アンタの周りの人達も暖かい人達ね。今のアンタも健やかに育つのも納得だわ」


「そうね。今の私があるのも、あの人達のお陰なのは確かだわ」


「だったら、ちゃんと安心させてあげなさい。学園でも、王女としての生活でも、冒険者でも、"天の笛"との戦いでも」


「えぇ、勿論。それが私に出来る恩返しであり、使命であり、責任であり、やりたい事だから」


「そう。なら頑張りなさい。アタシも陰ながら応援してあげるから」


 こうして、エミリアは学園生活へと戻っていく。

 この4月から、エミリア達は2年生を迎える事となる。

 これからの学園生活がどうなっていくのかも、エミリア達はまだ知らない。

 それでも彼女達は進む。

 自分達の信じる未来の為に。

そして、遂に2年生へ。

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