第68話
ダブリス編第6話。
エミリア&アラタVSヴェルナンデ
『それじゃあ、僕/私達からの絶望、たっぷり味わいな!』
そう言ってヴェルナンデが、籠手とグリーブの刃を展開、2人目掛けて腕の刃を振るい、2人も左右に別れる。
そしてヴェルナンデが逆立ちして回転、炎と風の刃を飛ばし、2人も光の防壁で防ぐ。
そこからヴェルナンデが高く跳んで乱回転、炎と風の刃の雨を降らせ、2人は回避に専念。
そうしてバランスを崩したエミリア目掛けて、ヴェルナンデは空中を蹴って突進。
ヴェルナンデの腕の刃をエミリアも直ぐ風の力で態勢を立て直して剣で防ぐ。
エミリアの振り抜いた剣をヴェルナンデもバック転で回避、彼女の着地に合わせてアラタも剣を振り下ろす。
そしてすぐさまヴェルナンデは腕を交差させて防ぎ、アラタを蹴り飛ばして突き放す。
「エミリア、足くじいたりしてないか?」
「えぇ、大丈夫。回復魔法でちゃんと治してある」
『さぁて、久々の合体だったんで、ウォーミングアップから始めさせて貰ったけど、対応が早いねぇ。こっちも身体が温まって来たし、オーラを解放させちゃおうかな!』
と、ヴェルナンデは炎と風のオーラを解放、エミリアとアラタもオーラを纏う。
ヴェルナンデは足元を爆破させた推進力でエミリアに迫り、腕の風の刃を振り抜く。
エミリアも光を纏った剣で防いで受け流し、ヴェルナンデを蹴り飛ばす。
そこにエミリアは炎の剣を生成して飛ばし、ヴェルナンデも炎の壁で相殺し、煙に包まれる。
そして煙からアラタが飛び上がって水を纏った剣を振り下ろし、ヴェルナンデも後ろに跳んで煙からも脱出。
ヴェルナンデの着地に合わせてエミリアが全身に風を纏って剣を突き立て、その突進の勢いを利用して扉を突き破り、彼女を部屋の外に追い出す。
『馬鹿め!部屋から追い出したって…!』
「アラタ!」
「あぁ!」
アラタがヴェルナンデの背後にワームホールを出して、彼もその後を追いかけ、3人はワープする。
そしてワープした先は、街の大広場だった。
『まさか最初から…!?』
「こっちもカイト達から通信を貰ってたのよ。教会を避難場所として使っているって。上に大勢の人がいる状態じゃあ、こっちも満足して戦えないから」
「だからこっちも手加減しながら戦わざるを得なかった。だが、此処でなら存分に戦える」
「さぁ、私達も本気を出させて貰いましょうか!」
レオニーは現在、街のあちこちに蔓延る構成員達を撤退に追い込んでいた。
「はぁ、はぁ、これで大体追い出せた」
「レオニーちゃん!」
と、そこにシャーリーとネムが駆け付ける。
「そっちはどうだ?」
「こっちも双性者を1人追い出して、他の構成員も追い出している所。そっちの方は?」
「こっちも丁度同じ様な事してた所だ。でもって、向こうの情報も入手しておいた」
「そうなの?それじゃあ、この騒ぎが片付いたら、共有しておこう」
「あぁ、分かってる。急ぐぞ!」
と、3人は別れて対応に戻る。
(…しっかし、どうしたもんかなぁ、この情報)
エミリア&アラタVSヴェルナンデ
ヴェルナンデは逆立ちして勢い良く回転、周囲に炎と風の刃を飛ばし、2人も駆ける事で避けていく。
そして2人同時に跳躍で距離を詰め、揃って剣を振り下ろすが、バック転で回避。
そこから両手足の刃を連続で振り抜いて刃を飛ばし、2人も回避と受け流しに専念。
飛んでいった刃は消える事無く、円を描く様に周囲に刺さっていく。
そして炎と風のドームが形成され、3人はその中に閉じ込められる。
『この燃え盛るドームの中、お前達はじわじわと酸素と体力が奪われていく!そうなれば思考能力も低下し、体力も奪われ、段々と息苦しくなっていく!さぁ、どっちを選ぶ!?酸欠で窒息死するか、重くなった身体によって殺されるか!?』
『そんなの、どっちもごめんだな/わ!』
そう言った2人は、足元に剣を突き立て、大量の水を流し込み、ドームの炎を弱める。
その際に発生した水蒸気で身を隠し、エミリアが急接近し、風を纏った剣で連続斬り、そしてヴェルナンデを蹴り飛ばし、エミリアの頭上を飛び越えたアラタが斬り付ける。
『ぐっ…!?』
「エミリア、この前教えた剣技、行けるな?」
「えぇ、私も貴方と共に並び立てる様に、日々の研鑽を怠らずにやって来たわ。2人で一気に決めるわよ!」
そう言って2人は剣に全属性の魔力を集中させて研ぎ澄まし、綺麗な魔力の刀身に整えて仕上げた。
そして2人はすれ違い様にヴェルナンデを斬り付け、そして2人で同時に交差させて斬り裂く。
それによって膝を着いたヴェルナンデは音を立てながら身体を変形させ、右がファム、左がヴァーリとなってる胴体に2人の首が分かれて生えてる状態となった。
ドームも消え、エミリアとアラタは2人に剣を突き付ける。
「どうやら合体も維持出来なくなったみたいね?」
「大人しく投降して貰うぞ」
「誰が…、捕まってたまるもんですか!」
そう言ったファムは足元を強く踏みつけ、自ら火柱に包まれる。
そして火柱が消えた後には2人の姿が消えていたのだった。
「…火柱の中で転移結晶を使って逃げたか」
「構わないわ。これで向こうもしばらく動けなくなった筈だもの」
こうして、"天の笛"からダブリスを守ったエミリア達は、リザロッテに感謝されるのだった。
「ありがとうございます、皆様方。何とお礼を申し上げたら良いか…」
「気にしなくていいわ。こちらも務めを果たしただけだから」
「所で、査察官の事なのですが、どちらにいらっしゃるのでしょうか?」
「あぁ、気にしないで。あの2人は今、別の場所で休んで貰っている最中だし、こちらでも、これからのこの街の管理の引継ぎに関する話をする事になってるから」
「そうなのですか。それで、この後皆様はどうなさるおつもりで?」
「もうこの街での用は終わったし、これから城に帰らせて貰うわ」
「そうですか。では、エミリア様、皆様、またのご来訪をお待ちしております」
それからエミリア達は、自分達の使った勝手口から街を出て、その場で縛れているダグとジェシーに目を向ける。
「さて、姉さん、この人達はどうするの?」
「しばらくの間、王宮の地下牢に入って貰うわ。そして"天の笛"について色々と喋って貰う」
「それならこっちでも、ケイリーが持ってた情報もあるぞ」
「助かるわ、レオニー。後、ダブリスの管理についても、城で話しておかないと」
「こっちでもシェーラ先生に、街の人達の分離について相談してみるよ」
「そうだね。あの人達も普通の暮らしに戻れる様にしておかないと」
「それじゃあ、俺達も引き上げるとするか」
こうして、エミリア達はアルテミシア王国の王都へ戻る事となった。
"天の笛"本部
ジルティナはダブリスに関する報告をケールから受けていた。
「そうですか。ダブリスがエミリア王女達の手に渡りましたか」
「えぇ、ケイリーの姿が無いって事は、あの子やられちゃったのね」
「構いません。ケイリーは元々、我ら双性者の中では最弱の部類の1人だったので」
「隊長も冷たい人ね」
「事実を言ったまでです。それに、ダブリスが無くなった所で、大した痛手にはなりませんし、ワープゲートも既に対策済みですから」
「それもそうね。じゃあ、私はお暇させて貰うわね」
そう言ってケールは自室に戻って行った。
「…ケイリーは兎も角、ヴェルナンデまでやられるなんて。こちらも戦力を見直しておく必要がありますね」
そう言ったジルティナも、団長へと報告に向かって行く。
エミリア達と"天の笛"の戦いも、次の一歩へと進んだのだった。
ダブリス編、終了。




