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第67話

ダブリス編第5話。

 ダブリスは今、街のあちこちで悲鳴が上がり、街の方もあちこち壊され、火の手も上がっていた。

 住民達も必死に逃げ惑い、衛兵達も救助と避難誘導、そして賊の迎撃に当たっていた。


「きゃあぁああああ!」


「逃げろぉ!」


「皆さん、早く逃げて下さい!」


「こっちです、早く!」


「全く、此処の事がエミリア王女達にバレたんで、あの2人が余計な事を言う前に処分しろって言われたんで来てみたが、こいつら、本当に何も知らねぇんだな。この空間にいる限り、安全な場所なんて無いってのに」


「動くな!大人しく投降しろ!」


「おいおい、こっちの情けで今まで生かしてやっていた事を自覚してなかったのか?つくづくおめでたい奴らだな」


 そしてケイリーが一気に駆け出し、瞬時に衛兵達を斬り捨てて、倒れさせた。


「失敗作如きが、成功例である俺ら双性者(ジェミメイル)に敵う訳ないだろう」


「ひっ…!」


 と、木の影で座り込んでいる少女に気付き、ケイリーも近づく。


「此処にも居たか。そんじゃあ、こいつも!」


 ケイリーが2本のハンドアックスを合体させた大斧を飛び上がって振り下ろすが、それをレオニーがサーベルで受け止める。


「逃げろ!」


 そして少女が逃げたのを見計らい、レオニーもケイリーを弾き飛ばす。


「来たか、王女の暗殺者」


「実験体の保管場所がバレた途端、そこの連中諸共その場を破棄とは、随分と見下げた奴らだ」


「俺達の物をどうしようが、俺達の勝手だろ?元々廃棄処分になる予定だった奴ら何だから」


「気に入らねぇな、その態度。アタシの世界に腐る程居たクズ共と、この世界に来てから見続けたクズ共と同じ匂いがする」


「成程、お前転移者か。まさかそっちにも居たなんてな」


「かかってこい!テメェらみてぇな連中、アタシらは絶対に許さねぇ!」




 ベラドンナの管轄の領地内でも、住民の避難場所として屋敷を開放、彼女もメイドや近衛騎士達と共に対応に当たっていた。


「市民の救助と避難誘導を最優先!周辺の現状を把握しつつ、対処に当たりなさい!」


『はっ!』


 そしてベラドンナが残った数人と共に付近を見渡していると、目の前の黒い影からケールが現れる。


「何者ですの!?例の賊でいやがりますの!?」


「そうよ。この街の廃棄処分を担っている者の1人よ」


「自分から姿を現すとは良い度胸でいやがりますわ!このまま叩きのめしてやりますわ!」


 と、メイド達が襲い掛かるが、ケールはそれを影の触手で串刺しにした。


「…バルンティーザ家。上品な貴族達と、粗暴な輩達と言う真逆の中身による組み合わせで実験してみたけど、出来たのは両極端な令嬢やメイドばかり。やっぱり私やダーリンみたいに、完璧な女性らしい振舞いが出来つつ、戦闘も華麗にこなせる、美しき雌雄同体じゃないと」


 そしてベラドンナにも触手が伸びるが、それは光の壁に阻まれ、飛んできた矢をケールは躱し、そしてメイド達が光を帯びると、彼女達の傷は塞がり、そして立ち上がった。


「貴方達は…!」


「奴は私とネムちゃんが引き受けるから、貴方達は救助を」


「は、はい!」


 と、ベラドンナ達は去っていき、残ったのはシャーリーとネムとケールだけになる。


「貴方達、確かこの前ケイリーがやられた2人組ね」


「そう言う貴方こそ、あの時、あの女の子を助けたんだよね?」


「良いわ。どうせ貴方達も邪魔者認定されているんだもの。先に始末してあげる」


「そう簡単にやられてあげないよ?私はエミリアちゃんとカイト君のお姉ちゃんとして、2人への愛の為に戦っているんだから!」


「そうです!私もエミリアお姉ちゃんとカイトお兄ちゃんの妹として、2人への愛の為に戦っているんです!」


「うふふ、成程、愛。なら私も、愛するダーリンとの愛の為に戦ってあげるわ!」




 教会の方でも、カイト達に叩き起こされたリザロッテ達が方々に通信、救助活動を指示、その上で対応に当たり、教会も避難場所として提供、そしてリザロッテも領主として総指揮を執っていた。

 カイトとハルトマリーも教会の護衛に当たっていた。


「自分達で勝手に融合体を作っておきながら、挙句の果てに勝手に処分だなんて、何て自分勝手な!」


「僕達も、此処の人達がちゃんと普通の生活に戻れる様、守ってあげないと!」


 そして教会の中、避難箇所として使われている大広間とは別の小部屋、ダグとジェシーが拘束された上でスバルとフィーナに詰め寄られていた。


「哀れなものね。私達の侵入に気付けなかった罰として、この街と運命を共に迎えるなんて」


「黙れ!そもそもお前らがこの街にやって来なければ、この牧場も失う事も…!」


「自分達の行いを棚に上げて、私達の事を逆恨み。そもそも悪いのは、融合魔法の実験をしていたそっちでしょ?こっちだって、私の村の件、ちっとも許してないんだから」


 そしてスバルはダグの胸倉を掴み、顔を間近まで引っ張り寄せる。


「この街の人達の救助と分離が叶った後は、次は貴方達がこれまでの清算を受ける番だ。"天の笛"のやって来た事の数々から、ただで済むとは思わない事ね」


 そしてダグを突き放したスバルもフィーナと共に、教会の中を手伝いに行くのだった。




 レオニーVSケイリー

 ケイリーの振り下ろした斧をサーベルで受け止め、そしてケイリーの着地に合わせてサーベルを横に振るうが、彼女もバック転で躱し、そして跳んで両手をクロスさせる様に振って、レオニーも受け止め、蹴り飛ばす。

 そしてケイリーが宙に浮いている隙にレオニーも影の触手を出すが、ケイリーも地面を迫り上げ、横に跳んで回避。

 そこに壁の破片が飛び散る事になった。


「いいねいいねぇ。お前も殺し甲斐がある。」


「言ってろ、40入ってる筋肉親父が。こっちもテメェを叩き潰してやるよ」


 そしてレオニーも銃を発砲、ケイリーも壁を生成して防ぐ。

 その後ケイリーは壁を壊してその破片を飛ばす。

 それからオーラを纏った状態で突進、大斧を振り下ろし、レオニーも黒のオーラを纏って、更に闇の魔力を纏ったサーベルで受け止め、その衝撃波が大気を震わせた。


「勿体無ぇぜ。その力も、恐らく持ってるであろう転移者特典も、うちでならもっと有意義に使ってやれるのに。それをあの甘っちょろいお姫様の下で使われてるだなんて」


「黙れ。アイツの事を悪く言うな。その力も、権威も、受け継がれた王族の血も、誰かを守る為に、誰かに寄り添う為に、誰かの明日を守る為に使っている。アイツは王族としても、力持つ者としても、1人の女としても、気高く、強く、誇り高い女なんだ!お前らみたいに、自分達の勝手な思想や私利私欲の為に、人の尊厳を踏みにじり、奪う様な真似しかしてこない連中とは違う!幼女の皮を被って猫被ってる40代の親父が、エミリアを語るんじゃねぇ!」


「上等だ!テメェを持って帰ろうとしたが、止めだ!この場でミンチにしてやるよ!」


 そう言ったケイリーはレオニーを弾き飛ばし、彼女の周囲を壁と天井で囲って逃げ場を無くし、そして手にした大斧にオーラを纏わせ、巨大な土の斧へと変えた。


「この斧をまともに喰らえば、テメェは跡形も残らねぇ!砕け散れ!」


 そう高らかに吠えたケイリーが斧を振り下ろし、斧を戻す。

 そしてその場には巨大なクレーターが出来上がっていた。


「ハハハ!ざまぁねぇな、転移者!木端微塵だぜ!」


「壁と天井で囲ったのは悪手だったな。闇属性のアタシ相手に」


 その途端、ケイリーの影から弾丸が飛んで、その胸を撃ち抜く。

 そして影から出たレオニーが、倒れたケイリーを見下ろしていた。


「がはっ!テメェ…!」


「あの一撃を確実に当てる為の壁だったんだろうが、それが不味かったな。こうして逃げる為の影を作っちまったんだから。さて、テメェみてぇな奴でも、特殊精鋭部隊なのには変わりは無い。奴らの情報だって持ってる筈だ。本当はエミリアに拾われた以上、もう使う事は無いと思ってたんだが、まぁいいや。テメェを簒奪者の手(デモン・イーター)で喰らってやるよ」


「ち、畜生ぉおおおお!」


 こうして、自らの承認欲求の為に少女の容姿を奪った男は、眩い光を守る影となると誓った暗部の少女に、その全てを奪われるのであった。




 シャーリー&ネムVSケール

 影から槍を取り出したケールは、シャーリーに向かって突きを繰り出し、シャーリーもそれを受け流す。

 そしてケールの首目掛けて振るわれた剣を、身をよじって躱し、距離を取る。

 ネムの放った矢もケールは槍を回転させて防ぎ、シャーリーも彼女の周囲に光の剣を展開、剣が地面に突き刺さるが、ケールは影の中に入って回避した。


「息の合った2人ね。上手く連携が取れてるわ。それに飄々とした感じに反して強い」


「そっちこそ、思ってたより強いじゃない。流石特殊精鋭部隊だね」


「当たり前よ。私だって自らに宿る愛の為に戦っているのだから」


「上等です!私達の愛が上だって事を見せつけてやります!」


「だったら、私に勝つ事で照明して見せなさい!」


 そしてケールは影の触手を上から降らせ、2人も巧みに躱してみせる。

 ネムに向けて槍を突くが、彼女はそれを前転で躱し、そのまま矢を放つが、ケールも影で防ぐ。

 更にシャーリーが駆け出し、剣を振るうが、ケールも影に潜って回避。

 影から出たケールが放った短剣をシャーリーが弾き、それが彼女の影に刺さった途端、シャーリーの動きが止まる。

 そこからケールが槍を突き出すが、ネムが短剣を矢で弾き飛ばし、動ける様になったシャーリーも回避。

 そして光の剣を生成し、次々と飛ばし、ケールも影の触手で叩き落とす。

 叩き落とされた剣も周囲に円を描く様に突き刺さって、そして魔法陣を展開する。


「しまった!こいつ最初から…!」


「この光量なら影も出来ないし、もう影に逃げられないよね?」


「お姉ちゃん、こっちも準備出来ました!」


 そしてケールの頭上に光の剣と炎の矢の雨が降り注ぐ。

 そして土煙が晴れたそこには、所々ボロボロになり、マスクも破れて口元が見えてるケールが立っていた。


「あ~最悪よ。私、この口元と声嫌いなのに、それを人前で晒しちゃうなんて。この借りは高くつくわよ。覚えてなさい」


 そう言ったケールは転移結晶(テレポートクリスタル)でこの空間から去っていくのだった。




 エミリア&アラタVSヴァーリ&ファム

 ファムが足を振って炎の刃を飛ばし、エミリアとアラタも左右に別れて回避。

 そしてヴァーリが腕を振るってエミリアの首を狙うが、彼女も剣を挟んで防ぐ。

 そこからヴァーリを弾き飛ばしたエミリアは剣を突き立て、ヴァーリと斬り結んでいく。


 アラタの方もファムの蹴りを剣で防いで受け流し、そのまま剣を振り下ろすが、彼女も逆立ちして防御。

 そしてファムがその剣を蹴り上げ、そのまま高速回転。

 アラタも受け流し続ける。


 エミリアが剣に水を纏わせ、水の斬撃を飛ばし、ヴァーリも次々躱していく。

 そしてヴァーリの足元から火柱が上り、その隙を付いてエミリアが光を纏った剣で突く。

 それでもヴァーリはオーラを解放、炎を吹き飛ばして脱出、突きを躱して回転しながら突進。

 エミリアもオーラを解放して、全身に土の力、足元に闇の力、剣に風の力を纏わせて防ぐ。


 ファムがアラタの周囲を駆け、そこからアラタの首目掛けて足を振り下ろし、彼も剣を挟んで防御。

 アラタに弾かれた勢いを利用して炎の斬撃を飛ばし、アラタも水の防壁で防ぐ。

 そして着地したファムはオーラを解放、巨大な火の玉となって回転しながら突進。

 アラタもその勢いに後ずさっていく。

 それでもアラタはオーラを解放、ファムの足元から土の柱を出して打ち上げ、彼女の火も消す。

 ファムの着地に合わせてその足元を影で縛り、周囲に水の剣を展開して放つ。

 その瞬間、ファムも足元を抉って拘束を逃れて回避した。


「やるねぇ、流石は勇者の血族」


「姉さん、エミリア王女もあの時より強いよ。こっちも本気出した方が良いんじゃない?」


「そうだね~、ヴァーリ、合体だよ!」


 その言葉と共にヴァーリがファム目掛けて飛び掛かり、そして彼女の中へ入っていく。

 そしてファムの身体が音を立てながら変形し、そこに立っていたのは、紫のツーサイドアップの黒のドレス姿の女性だった。


『これが本気となった僕達、ヴェルナンデ。私達にこの姿を使わせた事、光栄に思いな』


「エミリア、行けるか?」


「えぇ、勿論」


 勇者と姫もまた、目の前の強敵を打ち破る為に、その心を奮い立たせる。

pixivのストックが無くなったので、次からはpixivと同時に投稿します。

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