表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
67/72

第66話

ダブリス編第4話。

 朝、リザロッテの屋敷、ワープゲート

 今日は査察官がやって来る日の為、エミリアとアラタはリザロッテと共に待ち構えていた。

 そしてワープゲートから、黒ローブの男女が現れた。


「お待ちしておりました、査察官」


「あぁ、本日もよろしく…って、陽光の姫君(シャイニープリンセス)星空の勇者(ナイト・ブレイブ)!?何で此処に!?」


「本日はエミリア様とアラタ様も立ち会う事になりますが、よろしいでしょうか?」


「私も一国の王女として、この街の事を城に報告しておく義務がありますからね」


「俺もSランク冒険者として、ギルドにも報告しておきたいのだが」


「え、えぇ、構いません。どうぞご自由に」


 男が食い気味に返事した後、女が耳打ちする。


「…不味いわよ、うちの組織のAランク指定の警戒人物が2人も来てるだなんて」


「街の連中はそこら辺知らないんだぞ。ここで拒絶の態度を取れば、街の連中にだって怪しまれる。こうなったら、穏便に済ませて引き下がり、アイツらにこの街から去って貰おう」


(…とか考えてるわね、あの2人。こっちだって、タダで帰らせるつもりは無いわよ)


「…改めまして、俺は査察官を務める、ダグと申します」


「私は、彼の助手を担当している、ジェシーです。よろしくお願いします」


「えぇ、こちらこそよろしくね」


「それでは、先ずは街の様子を見させて貰いますね」


 と、一同は街の方へと繰り出すのだった。




 そして街中で市井の様子を見ながら会話をする。


「どうでしょう?市民も皆、穏やかな日常を過ごしており、私共もその為に尽力致しました」


「ふむ、確かに問題ない。街中活気が溢れて何より」


「けど、融合で人間関係がこじれたりしないかしら?」


「無論、そちらの方もこの街の貴族達の方でも、政策を整えてありますのでご安心下さい」


「だが、複数の思考を持ってると言う事は、感性や人の見え方までも複数同居してる事に変わりは無い筈だろう?当然、そのせいで脳の処理が追い付かなかったり、混乱が生じる訳で…」


「まぁまぁ、エミリア様もアラタさんも、此処の住民達も気にしないでいてくれるんだから、そこら辺とやかく言わずに流してあげましょうよ」


(こいつらがこの街にやって来た事事態、こっちにとっては誤算だって言うのに、余計な事を勘繰られたら、俺達の首を絞められる事になり兼ねない!)


(向こうも私達がこの街にやって来た事でかなり焦っている筈。そして何とか私達を出し抜く方法を必死に考えている最中と言った所ね。こっちだって、そう簡単にやられる様な真似をするつもりは無いわ)


「それでは、教会の方へ参りましょう」


 こうして一同は、教会へ向かう事になった。




 ダブリス教会

 デミアとラティファに教会の中を一通り見せられた後、応接室にて、報告会を行う。


「如何でしたかな、教会の様子は?」


「えぇ、ちゃんと教会としての体裁を守ってらっしゃる。流石はブロンシアのトップ達だ」


「お褒めに預かり光栄です。僕達も嬉しく思います」


「実は昨日、エミリア様達にもお褒めの言葉を貰ったばかりだったのですよ」


「そうだったんですか。王女から称賛されたなら、確かに嬉しいですね」


「えぇ。私達もこの2人の手腕は確かだと思ったわ」


「それでは、そろそろ地下の様子も見させて欲しいのですが…」


「おぉ、そうですな。では、ご案内します」


「それ、私達もご一緒出来るのよね?」


「申し訳ない。あそこは幾らエミリア様達と言えど…」


「まぁまぁ、相手は王女と勇者の血族ですよ。見せてあげたって問題は無いでしょう」


「それもそうですな。では、ご案内します」


 そしてデミアとラティファの案内の下、地下室に向かう。


(…不味いな。他の連中の目もあるから、同行を許可したが、こいつらの事だから結界を掌握される。そうなったら、こっちもお上に確実にどやされる。こうなったら、こいつらの隙をついて出し抜かなくては)


 そして地下通路の中央付近に辿り着くと、リザロッテとデミアとラティファがその場で倒れ込み、3人共その場で寝息を立てながら眠り込む。


「何だ!?一体どうし…!?」


 その途端、ダグとジェシーの身体が光の鎖で縛られ、そして周りにカイト達が姿を現す。


「何ぃ~!?一体どういう事だ!?何で陽光の姫君(シャイニープリンセス)のパーティーメンバー達が!?」


「ずっと私の妖精の隠匿魔法で隠れて貰ってたのよ。そして貴方達はそれに気づかず、此処まで一緒に来させた」


「勇者の血族である俺と、アルテミシア王国第1王女であるエミリアの存在は、お前らの注意を引き付けるには充分だからな。それによって、こいつらの事を隠しやすかった」


「そして、こうして誰も立ち入らないこの空間に入ったのを見計らって、私が3人を眠らせたって訳」


「しまった…!出し抜かれたのは俺達の方だったか…!」


「さぁ、知ってる事、洗い浚い吐いて貰うわよ」




 そしてリザロッテ達を小部屋で寝かせ、エミリア達は大広間で尋問を開始する。


「先ず、この街についてだけど、此処は双性者(ジェミメイル)を生み出す過程で出来た失敗作達を、認識の阻害を掛けた上で置いておく為の場所ね?」


「あぁ、そうだ。これまでの魔法や科学での実験の歴史でも、必ずトライ&エラーと言う物が存在している。それは当然、融合魔法だって例外じゃない。例え戦闘で出せなくても、それ以外に使い道はある。だから、今後の資金や労働力の確保の一部の手段として、この街を造った」


「労働力については分かる。だが資金だと?確かに貿易の話は聞いているが、カイト達から聞いた牧場や農場では、作物の育ちや家畜の状態等で相場や仕入の数も変動しやすい。とても満足出来る額に達成出来るとは思えない」


「闇市も使ってるんだよ。雌雄同体の人間なんて滅多に見られないものだからな。だから此処の貴族達に外の世界での働き口を紹介したいと言って、何人かを連れ出し、物好きな貴族達に大金と引き換えに提供してやってんだよ」


「人身売買!?貴方達、そんな非合法な手段にまで手を出してたの!?」


「別に良いだろ?アイツらは元々、上の判断で処分されそうになった所を俺が口利きして、この空間に住まわせてやってる失敗作達だ。その見返りとして貴族への商品にするくらいは良いだろ?」


「この野郎!いけしゃあしゃあと…!」


 と、いきり立つレオニーをエミリアが片手で制する。


「それじゃあ、此処の結界何だけど、消しても効果は消える?トラップとかは無い?」


「何だ、やっぱり気付いてたか。此処の結界を消せば、確かに効果は消えるぜ。でもって、トラップも無い。元々、この空間に俺ら以外の人間が入って来るだなって思ってなかったからな」


「なら、此処の支配権をこっちで掌握して、そして分離の研究をしておけば大丈夫よ」


「これで、この街に関する質問は以上だ。では、最も肝心な部分を聞こう。お前ら"天の笛"のボスと本拠地についてだ」


「そ、それは…」


 と、その時、何処からかワームホールが開き、そこから飛び出してきた風の刃がダグの頭目掛けて来て、それに気づいたカイトが弾き落とす。


「誰だ!?」


 呼びかけに応えて現れたのは、ヴァーリとファムであった。


「お前ら、何で此処に!?」


「何って、お前らと戦いに来たんだよ」


「アンタ達も詰めが甘いねぇ。実は私達、一昨日暇してたんで、良い遊び相手がいないかとこの街までやって来て、そしてエミリア王女達が来てた事に気付いてたんだよねぇ。で、アンタ達がやって来る今日なら、こいつらも動き出す筈だと踏んで、コッソリついてきた訳」


「そう言う事~。で、僕達と遊んでくれるよね~?」


「良いわ、相手してあげる。そして、私達はあの時より強くなってるわよ!」


「うん、それもケイリーとミルザから聞いてる~!だからその分、楽しませて~!」


「それに、もう此処の事がバレてるって上に言ったら、此処の処分も決まった事だし~!」


 と、その時、地上から轟音が鳴り響く。


「まさか…!ごめん、上の人達の救助をお願い!」


「此処は俺とエミリアに任せて早く!」


「分かった!」


 と、カイト達もダグとジェシーを連れて部屋を出て、エミリアとアラタも剣を構える。


陽光の姫君(シャイニープリンセス)星空の勇者(ナイト・ブレイブ)、中々いい絵のコンビじゃない!」


「それじゃあ、遊ぼ~!」


「行くぞ、エミリア!」


「えぇ!」


 そして、勇者と姫のデュエットが奏でられる。

次回、戦闘開始。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ