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第65話

ダブリス編第3話。

 リザロッテの屋敷、リザロッテの執務室

 早速エミリアとアラタは、リザロッテに査察官に関する話をした。


「査察に立ち会わせ欲しい?」


「えぇ、私もアルテミシア王国の第1王女である以上、城にこの街に関する報告をしておく必要がある。だからこの街にやって来る査察官とも、そこら辺に関する話を付けておかなければならないわ」


「ふむ、一理ありますね。分かりました、丁度明後日が査察の日ですので、同席を許可します」


「ありがとう、助かったわ」


「それで、査察官はどうやって来るんだ?」


「外交や貿易の為に造られたワープゲートが各貴族の領地内に設けられているんです。ですので、査察官は、我がティナーファ家の保有するワープゲートを通ってやって来ます」


「成程。そのワープゲートがあらゆる場所に繋がっているって訳ね」


「えぇ、査察官の所属しておられる組織も、あらゆる国に支部を設けておりますから」


「お前達は、そいつらが何をやっているのか聞いているのか?」


「一応査察官から、世界規模での大掛かりな活動と聞いておりますが…」


「分かった。なら良い」


「取り敢えず、明後日の査察、私達も立ち会わせて貰うからね」


 そんな2人の態度に、リザロッテは頭に疑問を浮かべるのだった。




 そして客室にて、エミリア達も密会を開く。


「成程。確かに、その査察官なら何か知ってる筈だから、目の付け所としては良い」


「えぇ。それで街の中の方はどうだったの?」


「やっぱり結界の影響下によって、誰も自分達の存在の在り方に疑問を持ってない。それによって、融合体である部分以外、外と大差ない生活を送っているよ」


「結界の方も指定された効果と条件が緩い方だったから、大した労力は掛かってない。核を使って作り出した事で、この空間全体に広げられているみたい」


「しかも、核の在処を探ってみた所、この街の教会の中だって事が分かった」


「こっちも治安担当のバルンティーザ家を訪問して見させて貰ったが、かなりのもんだった。屋敷のメイドも騎士達も、荒くれ者としての戦闘能力が貴族らしくなる様にされてやがる。当主のベラドンナも含め、下手な兵士や冒険者よりも強い方だった」


「こっちも査察官が来るのが明後日である以上、それまでに時間が空いているのに変わりは無い。明日は結界の核の在処を探りに教会に行きましょう」


「またリザロッテに頼んで、教会の中に入れる様にしないとな」


 早速エミリアも、リザロッテに話を通して、教会に入れる様にした。




 翌日、ダブリス教会

 教会のエントランスホールにて、エミリア達は責任者であるピンクのウェーブロングをカチューシャで留めた貴族令嬢と、藍色のストレートロングの高位のシスターと挨拶する。


「初めまして、私が責任者を務めるデミア・ブロンシアと申します」


「同じく、此処の最高神官を務める、ラティファ・ブロンシアです」


「デミアさんが可憐な見た目に合わないダンディなおじさんの声を出して、ラティファさんが美人な見た目に合わないイケメンなお兄さんの声を出しましたよ。どうなっているんですか?」


「失礼。私は父と次女の融合で、ラティファは長男と長女の融合でね」


「それで、父でもあるデミアがブロンシア家の当主を務め、元々高位神官でもあった長女でもある僕が、此処の現場監督を務めてるんだ」


「あ、そうなんですか…」


 と、そこに、見た目は2人より年下だが、その小さな身体に似合わないグラマラスな肢体を持つ、朱色のショートヘアーの中性的な少女がやって来る。


「この子は、私の妻と次男でもある…」


「初めまして、私はティフィー・ブロンシアです。よろしくお願いします」


「はっはっは。偉いぞ、ティフィー。さぁ、お客様をいつまでも待たせる訳にはいかんし、案内を始めよう」


「この人、見た目は可憐な貴族令嬢なのに、声と中身がダンディなイケメンおじさんだ…」


「そうですね。いつまでも待たせるのは、紳士のする事じゃないね」


「こっちは見た目は美人なシスターなのに、声と中身が紳士的なイケメンだ…」


「あらあら、そうですね。では皆様、ごゆっくり~」


「こっちは見た目は子供なのに、声と中身が気さくなマダムだな…」




 それからエミリア達は、教会の中をある程度案内される。

 そして応接室でエミリアとアラタがデミアとラティファの話相手になる事で時間を稼ぐ。

 その間にカイト達で手分けして教会の中を探索する事に。


「どうですかな、うちの教会の在り様は?エミリア様から見ても素晴らしかったでしょう?」


「えぇ、そうね。教会の職員達の反応や対応についても、2人が如何に優れた手腕を持っているのかが分かるわ」


「はっはっは。確かに、こんななりでも、私も当主、ラティファも次期当主ですからな」


「えぇ、それでデミアも家督を継いで嫁も迎えろとうるさくて」


「そりゃそうだ。見た目はお前の方が年上なのだから当然だ。私もそろそろ隠居してティフィーと共に、夫婦としても愛を育み、お前の弟妹としても好きな過ごし方をしたいのだから」


 そしてカイト達は、地下へ続く階段の前で身を潜めていた。


「…あの階段の先に、結界の核があるんだね?」


「うん。魔力感知で調べた所、此処の地下に強い反応があったから間違いない」


「でもって、ご丁寧に見張りまでついてやがる。案内の時は、儀式にも使われる神聖な場所だからと言ってたが…」


「考えられるとしたら、幾つもある部屋の1つか、そこら辺の認識を操作されてるか…」


「もしくはその両方の可能性だってあるね」


「そこら辺を確かめる為に地下に行きてぇが、あの見張りをどうするか…」


「アタシに任せて」


 と、フィーナが見張りの頭上で鱗粉を撒き、見張りを眠らせる。


「これで30分は起きない。時間内にちゃちゃっと調べちゃって」


 そして階下に降りたら、幾つもの扉がある廊下に辿り着いた。


「反応は奥の扉の中だよ」


 そして奥の一際大きな扉を開けると、そこに巨大な魔法陣と、それを囲う様に配置された魔法石のはめられた台座があった。


「やっぱり、これが結界の中心部よ」


「この魔法石を使って、魔力供給を行っているみたい」


「此処どうする?結界消しとくの?」


「待って。その場合、考えられるパターンは3つ。1つ、街中大パニックに陥るか。2つ、既に浸透しきってる為、意味ないか。3つ、何かしらの防衛トラップを作動させてしまうか。1つ目については、街の人達の分離の方法と、その後の生活の安全保障が先になる。2つ目については、もう手の打ち様が無いから、この街を維持する方向で。3つ目については、トラップの内容によっては命の危機に晒しかねない」


「仕方ない。今回は核の確認だけだし、今は手を引こう」


 そしてカイト達は、地下室を後にするのだった。




 そして話を終えたエミリア達は、教会を去る事になり、正面玄関前で挨拶していた。


「本日は教会を見せて頂き、ありがとうございました」


「いえいえ、こちらもご満足頂けた様で何よりです」


「では、失礼いたしました」


 と、エミリア達は教会を去っていった。


「…で、結界の核は確認出来たのよね?」


「うん。それでね…」


 と、ハルトマリーとスバルも分析結果を口にする。


「…まぁ、それはそうよね。私達も同じ判断をしていたわ」


「そうだな。そこら辺の裏取りの為にも…」


「明日来る査察官に問い詰めて見るしかないか」


「向こうも口割ってくれるか分からないけど、賭けてみましょう」


 と、エミリア達は明日の計画についても話し合う。

 今後の"天の笛"との行く末に、活路を見出す為に。

導入部終了。

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