第61話
ダンジョンアタック開始。
ダンジョンアタックの準備を済ませたエミリア達は、整備された山道を通り、切り立った断崖にある洞窟に辿り着いた。
そしてその中にあるダンジョンへと足を踏み入れる。
「このダンジョン、中は遺跡みたいになってるのか…」
「結構オーソドックスなダンジョンみたいだね」
「所でエミリア、彼女どうしよう?」
と、ハルトマリーが自分達の後ろについて来る椿を指差す。
「仕方ない。彼女に気づかれない様に目的の階層に入るしか…」
「如何致した?」
「あっ、ううん、何でもない!それにしても、まさか貴方もいきなりダンジョンに挑戦するだなんて」
「私も武士の端くれ。自らの腕がどこまで通用するのか試したい所存なのです」
と、椿は腰に帯刀している刀を叩く。
「それも見た事ない武器だけど、それも東方由来?」
「はい!これは刀と言って、皆さんで言う所の、東方で出回っている剣と言った所です!」
「成程~。それ、剣の仲間なんだ~」
「ですので、私も自慢の剣技をご覧に入れましょう!」
この様な会話を行った後、一行もダンジョンの中を進んで行くのだった。
こうして通路を進んで行くと、前方からコボルドの団体が現れた。
「皆、戦闘準備…!」
「あいや待たれよ!」
と、椿がエミリア達を制して前に出る。
「皆の衆、これも何かの縁。なればこちらも礼儀として、私の剣技を最初に見せよう!」
そして飛びついて来たコボルドを椿が反射で居合切りで切り裂いた。
「あれが刀…。私達の知る剣と違って、刀身が弧状に沿ってて、細長い…!」
「それだけじゃない。剣の振りも速くて、切れ味も良い!」
「しかも居合の速度も速いし、所作も整ってる!あれが侍!」
そして椿も残りのコボルドの群れへと向かって行く。
1体のコボルドの爪を刀で受け止め、胴を一閃。
2体が両側から飛び掛かって来たのに気づいた瞬間に鞘に納めて抜刀、そのまま2体を真っ二つ。
そして最後の1体目掛けて突きを繰り出し、その喉を刺して引き抜き、血を振り払って鞘に納めた。
「良いものを見せて貰ったわ、椿。確かに私達の知ってる剣術とは違って面白いわね」
「左様ですか。異国の剣士にそう言って貰えるのは光栄です」
「しかし、僕達の知ってる剣とは違うとはいえ、大した剣術だよ」
「えぇ、この刀は東方の地にて、鋼を丹精込めて打った一振りです。使い手の技量によって、鋼鉄さえも技だけで斬る事が出来ます。まぁ、そちらの剣と違って、刃側以外からの熱や錆や衝撃に弱いのが欠点で、それ故に振るう際も、横向きに働く力に警戒しなければなりませんが」
「成程、了解。それじゃあ、分かった所で先に行きましょう」
「はい」
と、一行はコボルドの死骸から素材を回収、後処理をして先に進むのであった。
こうしてエミリア達は5人で連携しながらダンジョンの中を進んで行く。
そして第1層のボス部屋、一行はウェアウルフと対峙を果たした。
「ウェアウルフは身体能力が高いから気を付けて」
ウェアウルフが距離を詰めて爪を振り下ろすが、一行は散らばって回避。
ハルトマリーが魔力弾を放って牽制、カイトが駆けてその足を斬り付ける。
ウェアウルフの態勢が崩れた所をスバルが光の鎖で拘束、そしてエミリアが光を纏った剣で胴を一刺し、椿が駆け出して跳躍、ウェアウルフの首を斬り落とした。
「…これでこの階層のボスは倒した。皆の者、こちらが押し掛けた形とはいえ、私の動きにも合わせてくれた事、有難く礼を言う」
「いえいえ、こっちも侍と言う者が何なのか知りたかったし、気にしないで」
「それで椿さん、僕達まだダンジョンを進むけど、君の方は?」
「…いや、私は此処で降ります。今回は集団で戦ったから此処までこれた。今度は独りでも第1層のボスを倒せる様になってから、先に進みます」
「そんな謙遜しなくても…」
「何を言う。そなたらは私などよりよっぽど強いではないか」
「あ、やっぱり分かっちゃう?」
「左様。武の心得がある者ならば直ぐに分かる」
「分かったわ。それじゃあ、ウェアウルフの素材、貴方にあげるわ。そしてまた会う日まで」
「うむ、また相まみえよう」
そう言ってウェアウルフの素材を回収した椿は、ワープゲートを使ってダンジョンを出た。
「…さて、私達も先へ行きますか」
そしてエミリア達も先の階層へと進んで行く。
それから第2、第3階層を進んで行き、エミリア達は目的の第4階層へと足を踏み入れた。
「此処が目的の階層…」
「何か今までと同じに見えるけど…」
と、スバルが壁に手を置くと、その部分が凹み、天井から飛んできた矢をエミリアが斬り落とす。
「…どうやら此処はトラップルームの様ね。罠に気を付けながら進みましょう」
それからエミリア達は所々に設置されたトラップをかいくぐり、ボス部屋に到達した。
「…此処のボスはグリフォンか。5月の時を思い出すなぁ」
「でも、私達だってあの時より強くなってる。グリフォンだって敵じゃないわ」
グリフォンが直ぐに飛び上がって突風を起こし、一行はその場で踏みとどまる。
動きが止まっている隙にグリフォンがカイトへかぎ爪を立てるが、カイトはそれを防ぐ。
ハルトマリーが影から棘を突き出し、グリフォンも回避するが、そこに待ち構えていた精霊達が包囲、魔法を放って集中砲火、グリフォンも悲鳴をあげる。
そしてオーラを解放したエミリアが剣と全身に雷を纏わせ、飛行魔法で飛び上がり一閃、グリフォンの首を斬り落とし、エミリアも優雅に着地し、剣の血を振り払った。
「…ね?私達、ちゃんと強くなったでしょ?」
「うん、そうだね。これまでの経験がちゃんと生きてる」
「私達もこの1年の成果で、こんなに強くなったんだ!」
「それじゃあ、先ずはグリフォンの素材の回収からね」
そして一行はグリフォンの死骸から素材を回収するのだった。
「それで姉さん、一応この階層のテストは終了って事だよね?この後はどうするの?」
「あぁ、それについてはもう少し待ってて。そろそろ出てくる頃だから」
と、広場の中央にワープゲートが現れる。
「さぁ、あの中に入るわよ」
そしてエミリア達がゲートに入ると、着いた先は応接室であり、奥の扉が開くと、そこから水色のストレートロングの少女が入って来る。
「リニューアル階層のテストのご協力、ありがとうございました、エミリア様」
「紹介するわね。彼女が此処のダンジョンマスター、アーニャ・ストラジーよ」
「初めまして、アーニャ・ストラジーです。よろしくお願いします」
そしてエミリア達は、第4階層の攻略の感想をアーニャに詳細に述べた。
「はい、感想ありがとうございます。それでは、今の感想を参考にして、細部調整を行いますね」
「しっかし、ダンジョンマスターがこんな小さな女の子だったなんて」
「甘く見ない方がいいわよ。この子、これでも宮廷魔導士に匹敵するレベルの魔法使いだから」
「はい。戦闘系に精霊魔法等、ダンジョンマスターに必要な魔法は勿論の事、杖術に槍術も嗜んでいます」
「そう言う事。ダンジョンマスターである以上、当然だわ」
「はい。強さは勿論、経営者としてのノウハウだって持ち合わせています。ですので、ダンジョンの人員についても、問題ありません」
「…あれ?私達が言うのも何だけど、此処の魔物とか、結構殺されちゃってない?流石に現場担当の数が減るんじゃあ…?」
「あぁ、それなら問題ありません。現場の方々は複製された肉体に降霊術の応用で入って貰い、それで現場に出るので、その心配はありませんよ」
「成程。それなら安心だ」
「そう言う訳ですので、ダンジョンで入手した素材やドロップアイテムは、私からの追加報酬としてお渡しします。皆さん、お疲れ様でした」
そしてエミリア達は、運営用通路を使って、ダンジョンの外へ出る。
「今回のダンジョン、結構ドキドキしたね~」
「こうやってダンジョンは成り立っていくものなんだって初めて知ったよ」
「…椿さん、また会う事になるかな?」
「きっとまた会えるわよ。さぁ、ギルドに報告しましょう」
それからエミリア達も、ギルドに今回の報告を済ませて帰路に着く。
東方から来た少女、花宮椿。
彼女との再会は、そう遠くない内に訪れるだろう。
侍との再会もいずれ。




