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第5話

シェーラの弟子が出ます。

 女子寮エミリアの部屋

 エミリアはカイトにビーフシチューを振る舞っていた。


「どう?貴方の口に合うかしら?」


「うん、美味しい!流石姉さん!」


 そこにシェーラ用の水晶が光った為、エミリアは応答する。


「もしもし?」


「あら、今はエミリアのままなのね?」


「当たり前でしょ?カイトを部屋に入れてる以上、来客を警戒しておかないと。要件は何?」


「近々貴方に紹介したい子がいるの」


「紹介?どんな人なの?」


「元々私が気まぐれで拾った子でね。そのまま弟子として勉強させてたの。そしたらその子、本当に出来る子でね。アルベルト王子に口利きして、そっちの学園に入れて貰ったの」


「シェーラの弟子!?初めて聞いた…」


「そろそろ向こうの方から挨拶するって話だから。その時はよろしくね」


 そう言ってシェーラは通信を切った。


「姉さん、何だって?」


「シェーラの弟子が挨拶に来るって」


「誰なんだろうね、その人?」


「さぁ?」




 週初めの学園の朝の教室

 席に座ってるエミリアに、藍色のストレートヘアーの女子生徒が声を掛けてきた。


「エミリア様、お…私はハルトマリー・メティーアです。お時間宜しいでしょうか?」


 そして2人は人気の無い外側の庭へ移動する。


「それでハルトマリーさん、私と何の話がしたのかしら?」


「誰も来ない内に話を進めましょうかエミリア様、いえ、スレイさん」


「っ!?」


「実は剣の授業の時、アルフォード様との立ち合いの隅に俺もいたんです。あぁ、身構えないで結構です。俺もあの人の関係者ですから」


「あの人…?まさか…!」


「えぇ、俺はシェーラ先生の弟子です」





「まさか貴方がシェーラの弟子だったなんて」


「両親とは俺が5歳の時に事故死で死別してしまい、行く当てが無かった所を、偶然通り掛かったシェーラ先生に拾って貰ったんです。そして先生の指導を受けて魔法を身に着け、今後の生活の方針の為にと、この学園に入学させて貰ったんです。確かその時、王族のコネがどうとかって言ってたけど、まさかエミリア様絡みとは」


「まぁ私も、アルベルトお兄様にバレたって話した時に、折角だから自分の事も紹介しろって言われて、この通りにね」


「おいハルト、私にも喋らせろ。あぁ、ごめんねマリー姉さん」


「…独り言?」


「あ、いえ、実は俺達、双子が1人の人間になってるだけなんです」


「どういう事なのかしら?」


「それが8歳の時、先生の魔法の本の中に、融合による強化ってのがあって。ちゃんとした指導を受けてなかった時期だから、失敗しちゃって。それ以降、不完全な融合状態で過ごしてるんです」


「そうかしら?ちゃんと1人の女の子になってるみたいに見えるけど?」


「実はその、俺達双子の姉と弟で、人格面での男らしさと女らしさが逆になっちゃってるんです。今こうして女の子らしくエミリア様と話してるのが、弟の俺ハルトで。逆にこんな風に男らしくガサツな態度を取ってるのが姉のマリーだ」


「あぁ、だから2人の名前を合わせてハルトマリー。貴方達、結構苦労したんじゃない?」


「えぇ、ちゃんとした術式の組み方や手順を守らなかったから、中身も逆に。お陰で俺が前に出て見た目通りの女の子として振る舞い、どっちの性器もある両性具有である事を隠して過ごしているんです」


(聞きたくなかった、そんな話…)


「それでエミリア様と一緒に過ごして、今後の事を考えようかと」


「それって、どういう…」


 その時、予鈴のチャイムが鳴る。


「あぁ、もうこんな時間!早く教室に戻りましょう」


 そう言ってハルトマリーまエミリアの手を引っ張り、教室へ駆けて行く。




 1限目の授業

 50代白髪の眼鏡の男性教師、ジラード・イスティーラの歴史。


「今回の授業は、今の種族間交流の起源、勇者の歴史についてです。かつてこの世界は、今程互いの種族に関する理解が深くなかった。そこに500年前、神の啓示を受けたエルフ達が人々を説得し、色んな苦労の末、人間、エルフ、ドワーフ、獣人等が互いに手を取り、それぞれの技術を共有し、魔導工学を初めとする技術が完成した。それにより、突如として現れた魔王の軍勢に立ち向かえる様になり、神に選ばれ、強い正義感とカリスマ性を持つ初代勇者の手で魔王が打たれた。そして今でも、勇者の血族は宗家と分家で存在しているし、初代勇者の力強い説得の末、魔族もその後に新たに擁立された魔王を初めに我々との共存を考えてくれています」


「先生、魔族が再び攻めてくる危険性については?」


「良い質問です、ハルトマリーさん。それについては人間と魔族の間で結んだ和平協定がありますし、魔族側にも治安維持の組織は存在していますのでご安心を」


 エミリアは1人、ハルトマリーを見ながら思い耽っていた。


(あの子達、私と一緒にいて、どうしたいのかしら?)




 2限目の時間

 20代の緑のショートヘアーの女性教師、ケイミー・レクトの魔法薬学。

 彼女の指導の下、生徒達が魔法薬を作る中、ハルトマリーは1番良質な薬を作っていた。


「ハルトマリーさん、薬品の調合も器材の使い方も随分手馴れてますね」


「えぇ、腕の良い先生の下で育ちましたから」


(でしょうね。シェーラは魔女としての腕は確かだから)


「その先生、私も会ってみたくなりました。今度紹介して貰っても?」


「どうでしょう。あの人、気難しいから」


(普通、魔女なんて会わせて良いかどうか分からない存在だからね)




 4限目、校外の実技

 エミリアとカイトの木剣での模擬戦が終了した所だった。


「そこまで!」


「エミリア様も凄いけど、カイト君も渡り合えて凄い!」


「流石剣の名家の三男ね!」


 そして次は、ハルトマリーとバザーグの模擬戦が始まろうとしていた。


「女だからって油断はしない!全力で叩き潰す!」


「エミリア様に負けたのが、相当堪えてるみたいね」


「始め!」


 バザーグが一気に木剣を振り下ろしたが、ハルトマリーは剣を振り上げてそのまま彼の剣をへし折り、胴に突きを入れて、遠くへ突き飛ばす。


「そこまで!」


「何、今の!?」


「彼女、バザーグの剣を思い切りへし折らなかったか!?」


「あんな華奢な身体付きで、そんな芸当が出来るのか!?」


「魔力強化なら可能だろうけど、一応感知してみたら、反応は無かったわよ!?」


「じゃあ単純な腕力で!?」


 呆気に取られているエミリアの元にハルトマリーが駆けよる。


「どうでしたか、エミリア様!?」


「貴方、あれは一体…?」


「あぁ、融合によって、外側に付いてる脂肪の内側に、2人分の筋肉が圧縮されているんです。それにより、2人分の筋肉に掛け算が加わったパワーが引き出せる様になっているんです。それで私も、見かけでは判断出来ないパワーで暴れられるって訳だ。脂肪の方も掛け算されてるから、肉付きも良くて胸もFカップだから、俺の方も複雑な気分だわ」


「あぁ、そう…」


「姉さん、まさか彼女…」


「そう、昨夜シェーラが言ってた子。詳しくは後で話すから」




 放課後、中庭

 エミリアはハルトマリーに呼び出されていた。


「エミリア様、人避けの結界を張りますので、仮面を取っても大丈夫ですよ」


 そう言ってハルトマリーが結界を張った所で、エミリアも仮面を外す。


「で、話って何だ?」


「スレイさん、実は折り入って頼みがあって。そのぉ…、大丈夫でしたら、俺と、俺達と友達になって貰えないでしょうか?」


「どうした急に?」


「ほら、俺達シェーラ先生に拾われてから、同年代の子と交流した事が無くて。それに俺達、こんな状態だから、それを打ち明ける自信が持てなくて。そうして悩んでいた時に、貴方の事を知って、先生に確認を取った事で知ったんです。共通の人物と交流を持っていて、秘密も持ってるなら、理解して貰えるかと。だから、その、お願いします!この通り!」


「…友達ってのは、別に頼み事してなるものじゃない。俺の経験の話では、城の方の兄と妹とも、色々あったが、ちゃんと思いを伝えた事で分かって貰えた。実家の方の兄と弟も、俺がいじけても、2人はちゃんと思ってくれていた事が分かって、和解する事になった。つまり友達ってのはさ、そうしてお互い心が許し合える仲になった時に、初めてなれるものじゃないのか?だから先ずは、気兼ねなく話せる様になってからだ。そうして心が近く感じる様になった時に、改めて友達になろう」


「…!はい!俺達もちゃんと頑張ります!」


「後、友達になりたいなら、敬語もなし」


「あぁ、ごめん。それにしてもスレイ、素顔でも姿勢や動作がお姫様のままなのね」


「言うなよ。俺も城での生活で完全に染み付いて、気にしてるんだから」


「私から言わせりゃ、お前はマジでお姫様って感じだもんな。ちょ、姉さん!?」




 アルテミシア城、とある1室

 アルベルトとアルフォードとシェーラが、1人の貴族を抑えていた。


「ご協力感謝します、シェーラ殿」


「いいわよ、これくらい。それじゃ報酬はAランク魔法石1つをお願い」


「まさかこの大臣がエミリア様とユーフィリア様の件を手引きしていたとは」


 と、アルフォードは気絶している大臣を見て言う。


「そうだな。当時どちらも城の警備は問題なく、向こうも監視の目を縫う様に出入りしていた。正確に監視の目を突いて出入りしたなんて、城の人間の配置を把握していたなら話が早い」


「こいつも例の組織と関わってると見ていいでしょう」


「私の方でも、記憶を覗いて見たけど、肝心の所に靄が掛かっていた。恐らくこいつは、最初から捨てられる事になっていただろうから、放っておいても大丈夫だわ」


「なら一体、誰がエミリア様を殺して、ユーフィリア様を攫う様にしたのでしょう?」


 その時、シェーラの水晶が光り、音が鳴り始めた為、彼女も応答する。


「もしもし?」


「はぁーい、シェーラ。お久しぶり。私、リリンよ」


「あんた、一体何の用で…」


「私、仕事の都合でそっちに来る事になったから。その時はちゃんと挨拶に来るから。じゃあまたね」


「あっ、ちょ…!?」


 そして水晶の通信も速攻で切られる事に。


「シェーラ様、今のは?」


「…知り合いのサキュバスよ」


「サキュバス!?魔族の!?」


「えぇ、今人間世界の勉強の為に、人間に擬態して生活してるの。所謂覆面調査って奴ね。連れの者達も同様、擬態させているって話よ。確か今、人間の冒険者パーティーをやってるって話だったかしら?」

次回は魔族側についてをやります。

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