第4話
冒険者生活の一端を見せます。
その日の夜、女子寮のとある部屋
そこに備え付けられているテーブルにて、妙な独り言を言う少女がいた。
「エミリア様も私達と同じあの人の関係者…。会うのが楽しみになって来たぜ。ちょっと姉さん、俺達もエミリア様と仲良くなれる様、第1印象に気を付けないと。だったらハルトが話しかけてくれ。お前の方が淑女らしいし。まぁいいわよ。マリー姉さん、女らしく振る舞うの苦手だし。仕方ねえだろ。私達が1つになった後遺症で女なのに男の人格要素が集中しちまったんだから。逆に俺は男なのに女の人格要素が集中する事になっちゃったのよね。嫌になっちゃうわ。私もお姫様と遊びたいぜ。俺もエミリア様とどう仲良くなろうかしら。」
休日の街中
エミリアとカイトは、とある場所へ足を運んでいた。
「私の用事に付き合ってくれてありがとう、カイト」
「構わないよ。姉さんが冒険者をやってるって話、本当だったんだね」
「アルベルトお兄様に剣を習う時に、実戦訓練も必要だからって」
冒険者とは、魔物討伐から護衛等、あらゆる仕事を請け負う者達である。
彼等は冒険者ギルドでライセンスを発行し、それらの仕事を引き受ける。
冒険者にもランクが存在し、ランクの高さによって高い難易度の仕事を受けられる。
「まぁそれはともかく、何で姉さんローブを羽織ってるの?」
「私がギルドに来ると、皆騒ぎ出しちゃうから」
「そう言えば姉さん、Aランク冒険者だって話だっけ?そりゃ王族でAランクともなればそうなるか」
そして2人はギルドに入ると、受付に声を掛ける。
「エミリアです。ギルドマスターに呼ばれて来ました」
「話は伺っております。少々お待ちください」
そこに素行の悪そうな男がエミリアに声を掛ける。
「姉ちゃん、こんな所に一体何の用だ?」
「ギルドマスターに仕事で呼び出されたのよ。分かったらどっか行って」
「そう言うなよ。姉ちゃん見たところ、かなりの上玉みてぇだし、俺と一緒に遊ばねぇか?」
その言葉に突っかかろうとしたカイトを、エミリアは片手で制する。
「生憎だけど、私は安くないの。そんな事してる暇があるなら、ちゃんと腕を磨いたらどう?見たところ貴方、自分より弱い者じゃないと手が出せないみたいだし?」
「っ!このアマ!」
男がエミリアの胸倉を掴もうとするが、エミリアはその手を掴み、足払いをして、男を一本背負いして床に叩き付ける。
その拍子にエミリアのローブが脱げ、その下の白を基調とした、胸元が見え、袖が分かれ、ロングスカートの前部分が無く、下のミニスカートと白のニーソックスとピンヒールが見えるバトルドレスが露になる。
そのエミリアの姿に、周囲の冒険者達がざわつく。
「あの方は、エミリア・フォン・アルテミシア!」
「この国の第1王女にして、Aランク冒険者の!?」
「その強さと美貌が相まって、冒険者達の注目の的になってる可愛い系の巨乳姫騎士!?」
「王族と言う事で、武力、権力共に高い事で有名な陽光の姫君!?」
このざわつきに、カイトもエミリアに耳打ちする。
「姉さん、かなりの有名人なんだね」
「…うん。王女としての責務で色々とやり過ぎちゃったから」
ギルドマスターの執務室
「申し訳ありません、エミリア様。あの男はしょっちゅう問題を起こしていて。こちらの方でも、王女に無礼を働いたと言う事で、謹慎を言いつけておきます」
「それでギルドマスター、話と言うのは?」
「はい。実はこの付近を根城にしている窃盗団についてです。奴らはこの周辺の者達から金品を強奪している素行の悪い冒険者達で、しかも金に汚い貴族と癒着関係を持っている為、賄賂を贈る事で揉み消しを手伝って貰っているのです。証拠が無い以上、訴える事も難しく…」
「分かりました。その者達は私達が摘発しておきます。実行犯の証言を抑え、王族の発言力があれば、問題の貴族も言い逃れ出来ないでしょう」
「助かります!エミリア様に相談して正解でした」
「先ずは窃盗団のアジトに向かいます。地図の用意をお願いします」
そして付近の森の中の小屋
見張りの男の1人が雷に打たれて気を失い、もう1人もカイトの不意打ちで気絶する。
そして2人が中に入ると、荒くれ者集団が構えていた。
「何だお前らは?俺達が何者か知ってるのか?」
エミリアもローブを脱ぎ捨て、バトルドレスを見せつける。
「えぇ。貴方達の事は、この国の第1王女として拘束させてもらいます」
「陽光の姫君!?仕方ねえ。お前ら、やっちまえ!」
リーダーの号令で周囲の男達が一斉に2人に襲い掛かる。
それをエミリアは軽やかな動きで躱し、剣と雷で気絶させていく。
カイトの方も後の先の剣技で峰打ちを決め込んでいく。
そして残ったリーダーも立ち上がり、斧を構える。
振り被られた斧をカイトが受け止め、エミリアが懐で雷を纏った掌底を与える。
その隙にカイトが斧を弾き飛ばし、エミリアが回し蹴りで男を気絶させる。
「これで鎮圧完了」
「姉さん、こいつらどうする?」
「取り敢えず冒険者ギルドに突き出して、取り調べが終わったら私の権力で背後の貴族を摘発するわ」
貴族の屋敷の執務室
エミリアとカイトとギルドマスターが問題の貴族を追い詰めていた。
「この者達を尋問した所、あっさりと貴方との癒着を明言した。金庫の中にある盗品についても確認済みだ」
「エミリア・フォン・アルテミシアの権限により、貴方を拘束します」
そして問題の貴族も投獄される事となった。
その帰り、エミリアとカイトは街道を歩いていた。
「姉さんもお疲れ様。今日はもう帰って休もう」
「カイトも私の仕事に手伝ってくれてありがとうね」
「それにしても、今の姉さん、本当にお姫様なんだなって思った」
「どうしたの急に?」
「普段からの立ち振る舞いもそうだけど、現場での戦闘と言い、公務執行の時と言い、実家にいた時とは考えられないくらいの変わり様だったから」
「そうね。私もあの家にいた時は、こうなるとは思ってなかった。このままあの家で劣等感に苛まれる人生を送るのかなって。でも、シェーラに出会ってスレイを捨てて、本当に良かったって思ってる。こうして女の子として可愛く優雅に振舞えるし、家族にも恵まれたし、伸び悩んでいた剣の腕も魔法剣士として才能を開花させて、今じゃAランク冒険者。そして王族として国の発展や秩序に貢献出来る様になった。今の私、エミリア・フォン・アルテミシアは、最高に幸せよ」
「そうだね。僕も今の姉さんを見てたらそう思う」
「それじゃ、帰ったらカイトにも私の料理を振る舞ってあげる」
「そう言えば姉さん、家事出来るって言ってたっけ?」
「ええ。城での生活をしている時に、メイド達の姿を見て、私も家事を色々やってみたくなっちゃって。城の皆には、毒殺、暗殺対策や潜入捜査の準備とか理由をつけて家事の勉強をさせて貰ったわ」
こうして2人は、楽しく笑いながら帰路に就くのであった。
戦うお姫様にもロマンはあります。




