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第42話

ハロウィンイベント開幕。

 夜、とある墓地

 その場所を2人の男性冒険者が歩いていた。


「やっぱ夜の墓場は不気味だなぁ…」


「何だお前、怖いのか?」


「ばっ!?そんなんじゃねぇよ!大体何でこんな場所に行こうって言い出したんだよ!?」


「ほら、街はそろそろハロウィンだろ?それで墓場もどういった感じになるのか気になっちゃって」


「物好きな奴だな、お前も。呪われたって知らねぇぞ?」


「大丈夫だって。そんな事は…」


 と、その時、2人の周りが更に薄暗くなり、霧も出てきた。


「なぁ、これって…」


「いやいや、大丈夫だって。これは奥に進んだからで…」


 そこから更に、幽霊達が宙を舞い始めた。


「これってやっぱり…!」


「俺もそう思ってきた…!」


 そして墓地の奥から人影がやって来る。


『ぎゃあ~!』




 10月31日、この日は街もハロウィンのムードに包まれていた。

 街の至る所で仮装する人々が行きかっていて、子供達も「トリックオアトリート」の掛け声と共に街中からお菓子を貰いに回っていた。

 当然、エミリア達もまた、街に繰り出していた。


「街中の至る所に顔に見える様に穴を空けられたかぼちゃがいっぱい」


「そして街の人達もあらゆる仮装で溢れている」


「まぁ、アタシらだって同じだけどな」


 現在の衣装は、エミリアは男装騎士、カイトはテンガロンハットの剣士、ハルトマリーは黒猫魔導士、スバルはサキュバス、レオニーは海賊船の船長、アリアはショートドレスとなっている。


「姉さんもそういう衣装選ぶんだ」


「普段から城だと良くドレス着てるし、外出用の衣装の方も基本スカートばかりだから、こういった機会じゃないとズボンは履けないもの」


「普段着がドレスばかりで基本スカートしか履けず、ショートパンツすら滅多に履けない。お姫様あるあるだ」


「スバルのサキュバスだって、普段隠しているエロさが開放されちゃってるから違和感無いよ」


「それ言わないでよ~」


「アタシについては、前の仕事に戻ったって感じだな」


「私だってお嬢様ですから、ドレスくらいちゃんと持ってるってアピールしとかないと!」


『トリックオアトリート!』


 と、子供達が声を掛けて来た為、エミリア達も配る用に持って来ていたお菓子を渡す。


「はい、どうぞ!」


『ありがとう!』


 子供達が走り去った途端、近くのテラスから気になる話が聞こえる。


「なぁ、聞いたか、あの噂?」


「あぁ、墓場に幽霊が現れたって話だろ?」


「何でも、昨夜男2人が墓場に立ち寄った時に、急に周りに幽霊が出て来たと思ったら、今度は女の幽霊が歩み寄って来て、それでそいつら怖くなって逃げ出したんだと」


「まぁ、今はハロウィンの時期だし、そう言う事が起きるのは当たり前じゃないのか?」


「そうだと思うが、あそこにはあんまり近づかないでおこうぜ」


 この話を聞いたエミリア達も、場所を変えて話す。


「何か気にならない、あの話」


「そうだね。所で姉さん、ファルナの方は?」


「お母様にも確認を取ったけど、彼女、城の敷地の中から滅多に出る事は無いって」


「じゃあ別の幽霊?」


「早速確認を取りましょう」




 アルテミシア王国内墓地

 この場所に着いたエミリア達は、早速調査を行っていた。


「此処に例の幽霊が?」


「一体何の目的で?」


「そこら辺も含めて調べる為に来たのよ。皆も油断しないで」


 こうして奥へ歩みを進めると、周りが更に薄暗くなり、霧も出てきた。


「急に雰囲気が変わった…!?」


「これは…よく見たら、霧も影も魔力反応がある。恐らく、周辺を影魔法で暗くして、周囲を炎と水の合成魔法で霧を出してるみたいね」


 そして周囲も幽霊達が宙を舞い始める。


「ひっ…!」


「本当に幽霊が出てきやがった…!」


「ん?この幽霊、ちゃんと感知してみたら、敵意が無い。ただ驚かせているだけみたい」


「やっぱりこれは、心霊現象なんかじゃなく、人為的に起こされたものみたいね」


「でも一体誰が?」


 と、その時、墓地の奥から人影が近づいてくる。


「スバル、感知の方は?」


「うん、やっぱり霊気が無い。それによく見たら人間なのは確かだよ」


「おい、お前!何の目的でこんな事をする?悪戯にしちゃ、質が悪いぞ!」


 と、一同も、髑髏水晶を漂わせる銀髪縦ロールのゴスロリ少女に目を向ける。


「今宵はハロウィン。冥界に彷徨える魂達が安らぎを迎える時。安らぎを求める魂達の安寧を脅かしてはならない。今すぐこの場から立ち去れ、安らぎを脅かす者共よ!」


 と、少女の周りから多くのゾンビ達が這い出て来て襲い掛かる。


「来る!」


死霊使い(ネクロマンサー)だったのね!皆、迎撃態勢!」


 そしてエミリア達も武器を構えて、迎撃態勢に入る。

 エミリアとカイトが周囲を駆けながらゾンビの首や胴を切り裂いていく。

 ハルトマリーもゾンビ達に火炎を放って、その腐った身体を燃やす。

 スバルは周囲に聖域を張って有利なフィールドを作って光の鎖を放つ。

 レオニーはアリアを背負った状態で闇魔法を纏ったサーベルを振るっていく。

 そうして遂にゾンビ達も全て葬られる事となった。


「骨の王よ、今こそ冥府より現れよ!」


 少女の背後から巨大な骸骨が現れ、その手を振り下ろし、エミリア達も跳んで避ける。


「こんな馬鹿デカい隠し玉を持っていたなんて!」


「ぼやかない!今はあれを倒す事に集中!」


 そしてエミリア達も骸骨の周りを散会して駆け回る。

 先ずハルトマリーが周囲に魔法陣を展開し、魔力弾で骸骨を攪乱。

 次に煙が晴れた途端、スバルが光の鎖で骸骨を拘束、そのまま地に這わせる。

 そしてレオニーがサーベルを振るって、闇魔法で骸骨を半壊させ、カイトが胸部を斬り出し、剝き出しになったコアをエミリアが一突き、骸骨も消え去る事となった。


「さぁ、後は貴方だけよ。大人しく喋れば、これ以上は何もしないわ」


 エミリアが剣を突き出したその時、少女の近くを浮いていた髑髏が前に出る。


<上等だ!娘に手を挙げる気なら、俺が相手だ!>


「お父さん!私は大丈夫だから、ちゃんと話そう!」


「…お父さん?」




 こうしてゴスロリ少女、マーシャ・ストレダウンは観念して話す事に。


「実は私、死霊使い(ネクロマンサー)の家系で、しかもその力が強く宿ってしまったもので、それで友達が碌に出来ず、家で力の使い方に関する勉強ばかりをしていたんです。母も早く亡くしていた為、父も私が心配になって、こうして魂を髑髏水晶に宿す事でこの世に留まり、今も私の傍にいてくれているんです。そうして父に見守られながら、あらゆる霊達と交流を交わして、冒険者と占い師で生計を立てていたんです。このハロウィンの時期は、幽霊達も楽しく過ごす日でもありますから、こうして彼らの時間を守ろうとしていたんです」


「成程ね。それについては、確かに分からなくもないわ。それに実害も出てなかったみたいだし。所で貴方、冒険者って言ってたけど、ランクは?」


「一応、Bランクですけど」


「そりゃあんなデカいの出せるなら、そんなに強ぇのも納得だわ」


「仕方ない。お兄様に頼んで、暗部の仕事を回して貰える様にして貰いましょう」


「もしかして、何処かに雇ってくれるって事ですか?」


「えぇ。この私、エミリア・フォン・アルテミシアが、貴方を城の専属占い師兼暗部として雇ってあげるわ」


「貴方がエミリア王女…!ありがとうございます、エミリア様!」


<しかしよく見りゃ、美少女ハーレムの空間じゃねぇか、こりゃあ!こんな美少女4人を侍らせてる小僧は気に入らねぇが、ボンキュッボンの美少女3人は最高だ!特にお姫様がダントツで良い女だ!>


「何か急にアタシらの事、邪な目で見て来たぞ、この髑髏。」


「すみません。父は無類の女好きで、女性を見るといつもこうで」


「何か私、無視された気がするけど、気のせいですか?」


<ねぇねぇ、そこのお嬢ちゃん達!このナイスガイな俺と一緒に夜の街に繰り出さない?俺なら君達の事、充分楽しませられるよ!そんな小僧なんかよりも俺と一緒に…!>


「お父さん」


 と、マーシャは父を剣の柄で殴り落とした。


「お父さん。そんなにあの世へ行きたいなら、今すぐ送ってあげるよ?」


<ぎゃあ!待て待て!お父さんも悪ノリし過ぎた!だから剣しまって!ねっ、ねっ!?>


「幽霊になっても女を物色って、最低なエロ親父だな」


「後、私達あの人好みじゃないし。エミリアももうアラタさんがいるし」


 こうして、墓場での騒動はひと段落した。




 とある地下空間

 檻の中で寝そべっているケイリーの下に、とある来客が現れる。


「は~い、ケイリー。聞いたよ、勝手な事して隊長を怒らせて謹慎になったって」


「お前か…。態々嫌味を言う為に来たのか?だったら直ぐ帰れ」


「やーねー。私も今度向こうに行く事になったって報告に来たんだよ」


「んな事まで言う為に来てんじゃねぇ!とっとと消えろ!」


「仕方ないなぁ~。本当付き合い悪いんだから」


 そう言って、その人物はその場を去っていく。


「エミリア・フォン・アルテミシア…。どんな風に遊んで貰おうかな~?」


 そして"天の笛"の方でも、次の刺客が動く事になるのだった。

10月のエピソード終了。

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