第38話
10月のエピソード開始。
アルテミシア学園、中庭
この日は、文化祭の振替休日であり、エミリアは皆でのんびりお茶会をしていた。
その時、フィーナがエミリアの素顔の事を話した為、仕方なくエミリアも素顔を見せる事に。
「アハハ!素顔がもう大差なくなってきている!」
「もうそのままアラタさんと結ばれちゃいなよ!もうそこまで進んでいる以上!」
「フィーナ~!」
「いや、皆とっくに気付いてたし、ここまで来た以上、もう隠し立てする必要無いじゃない」
「まぁ、その、何だ。アタシ達だって、気にしないから、そのまま女としての幸せを掴め」
「勇者と姫の恋物語、着実に進んできてるみたいですね」
「レオニーとアリアまで!…どうしたの、カイト?」
「あぁ、ごめん。今の兄さんの顔、母さんを思い出しちゃって」
「スレイとカイトとしての母親の方って事だよね?」
「うん。サテラ母さんも、今の兄さんみたいに、綺麗な髪と、母性溢れる美貌を持ってたから、懐かしく感じちゃって。今の兄さんの生活も、これを含めて必然だったのかなって」
「それについては、憶測でしかないわね」
そう言ってスレイが仮面を被った所に、ラウディーが訪れる。
「エミリア君!」
「ラウディー会長?一体どうしましたか?」
「実はこの前の生徒会の件で話があってね。今、いいかい?」
「えぇ、構いません。それじゃあ悪いけど皆、私は席を外すわね」
そう言ってエミリアは、ラウディーと共に生徒会室へ向かう事となった。
生徒会室
「さて、もう来月から生徒会のメンバー替えの時期に入る訳だが、エミリア君の考えを聞かせて欲しい」
「そうですね。私も、この国の王族である以上、ただの生徒のままでいるのは極まりが悪い。そこら辺を考えると、それなりの集まりに所属しておいた方が良い。それに、私も将来、常に人の上に立つ役職で働く以上、相応の経験を積んだ方が良い。だから、次の生徒会、私も入っておきます」
「そうか。俺としても頼もしい限りだよ」
「そう言えば、今回でラウディー会長だけでなく、リリアン副会長も引退でしたよね?って事は、これから空く枠は2つって事ですけど、私以外にももう1人入る事になりますよね?一体誰が入るんですか?」
「それについては、あまり考えなくて良い。それよりも、明日から試験期間に入るんだし、今は試験勉強の事だけを考えるべきだろう?」
「そうですね。では、失礼します」
そう言ってエミリアは生徒会室を去るのだった。
とある小さな村
タケルとアンリエットは、遠くで遊んでいる子供達を眺めていた。
「やっぱり子供達が楽しく健やかに暮らせる場所ってのは必要だよな」
「タケル様も、そう思っているのですか?」
「そりゃそうだ。僕のいた日本だと、表の方では小さな子供を預けられる場所は勿論、一定年齢の範囲内での義務教育期間だって設けられているけど、裏ではいじめや不当な指導、家庭でも虐待とかが発生してたりする。それも親の背景やその子の見た目や内面、周りの環境等が原因に繋がっている。海外なんて更に酷いよ?学校に通いたくても通えなかったり、ご飯も碌に食べられなかったり、戦争地帯でも、少年兵として無理矢理戦わされている子供だっているんだから」
「そうなのですね。でしたら、せめてこの世界だけでも、そう言った事が起きない様にしなくてはなりません。皆が周りのありのままを受け入れ合い、手を取り合い、そして夢を見る事が出来る世の中にしていきたいです」
「具体的にはどうするつもり?」
「そうですね。先ずは我がアルテミシア王国を起点として、全種族、階級を問わず、そして他国の人間を受け入れられる、そんな国立の学校を設けましょう。その中身については、是非タケル様の意見を参考にさせて下さい」
「良いよ。君の望みなら、僕は幾らでも付き合う」
「ありがとうございます、タケル様」
そしてスレイは、自室のベットで目を覚ます。
「…今回は、アンリエットが今のアルテミシア学園の理念を抱いた事の記憶みたいね。まさかこの理念に、かつての勇者が関わっていたなんて。私も生徒会に入ると決めた以上、2人の理想の為にもやっていかないとね」
そう言ってスレイは仮面を被ってベッドを出て、着替えた後に朝食と朝の支度を済ませて部屋を出るのだった。
時は流れて10月初頭、気温も下がり始め、涼しくなって来ていた。
それに伴い、アルテミシア学園でも、生徒達の制服も長袖となっていた。
アルテミシア学園も試験期間に入ってる為、皆も中間試験に向けて勉強中である。
エミリア達も現在、図書室にて試験勉強している所であった。
「よっしゃー!この問題集もクリア!」
「次は数学の問題集に入るのか…」
「魔法学も、覚えなきゃいけない理論や術式でいっぱいです…」
「この調子なら、皆も必要最低ラインは維持出来そうね」
「そう言えば話が変わるけど、姉さん生徒会に入る事にしたんだよね?」
「えぇそうよ。やっぱり王族として、入っておいた方が良いと思って」
「それで確か、生徒会にまだもう一枠あるんだよね?誰が入るか聞いたの?」
「それが会長、まだ教えてくれないのよ。もう1人推薦で入る事になるか、結局立候補を待つ事になるのか。それすらも分からなくて」
「まぁそこら辺は大丈夫だろ。何だかんだ言って、此処の生徒会も出来る奴らである事に変わりはないし、残りの枠もちゃんと出来る奴が入ってくれるって」
「確かに、それについてはちゃんとした人選を信じましょう」
こうして、エミリア達も試験勉強を再開していくのだった。
それから2週間、アルテミシア学園の生徒達も中間試験を乗り越えた。
そして現在、エミリアは生徒会室にて、生徒会加入に関する話をしていた。
「では、今月いっぱいで俺とリリアンは生徒会を引退。新会長にアイラ、副会長にトール、会計にレニンを昇格。そこから、新たに入るエミリア君は、書記に入ってもらう」
「確かに、私も城で良く書類仕事をやってたので、書記として割り当てられるのは当然だと思われます」
「その通り。では君も、次期生徒会として励んでくれ」
「所で、流石に気になってたんですけど、残りの1人、新しく入る庶務って誰ですか?」
「おっと済まない。俺もそこら辺の話をしてなかった。新しく入る庶務なんだが、君と同じ様に、まだ1年生ながら学業でも冒険者でも多くの実績を積んでいる奴で、それにより、教師からの推薦で、次期生徒会に加入する事になった。だから彼については、君も期待しておいて良い」
そこに扉をノックする音が聞こえたので、ラウディーが入室を許可すると、部屋に金髪のウルフヘアーに幾つものピンを留めている少年が入って来る。
「あぁ丁度良かった。今、君の話をしていた所だったんだよ、ウェイン君。エミリア君、紹介しよう。彼が今言っていた新しい庶務のウェイン君だ」
「1年4組、ウェイン・バーティンガーです。よろしくお願いします」
「えぇ、私も新しく書記として入る事になったわ。よろしくね、ウェイン」
と、エミリアもウェインと握手を交わした。
「さて、顔合わせが済んだ所で、次は引継ぎに関する話だ。これについては、後日改めて行っておこう」
そう言って、今回はここで解散の流れになり、2人も生徒会を出る。
そしてウェインも1人廊下を歩いて、考え事をしていた。
「…エミリア王女が生徒会に加入。まぁこれは妥当か。さぁて、アルテミシア王国第1王女の手腕、見せて貰おうか」
彼がどの様に動くのかは、今後の展開次第である。
エミリア、生徒会加入。




