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第37話

文化祭2日目開幕。

 文化祭2日目

 この日もまた、昨日の口コミによって、客が大勢やって来ていて、本日も大盛況を迎えていた。

 そして1年1組も、午前の追い込みにかけていた。


「これ、4番テーブルに!」


「7番テーブル、注文入りました!」


「2番テーブルのセットメニュー、出来たわよ!」


「今日の客足については、ペースが上手く整えられるくらい、落ち着いてるわね。これなら、大きなトラブルでも起きない限りは…」


「すみません、エミリア様!実は先程、接客担当が1人、急な高熱で医務室に運ばれて!」


「その子の容態は?」


「先生によると、慣れない雰囲気と業務量による過労だから、しばらく休めば良くなると」


「分かったわ。その子に大事ないなら問題ない」


「でもどうします?1人でも抜けると店も回り辛くなりますよ?」


「仕方ない。私が穴埋めするわ」


「えっ!?それは悪いですよ!」


「今はそうも言ってられない状況でしょ?大丈夫。確認した所、担当時間の方も午前の残り時間だけだから。さて、私も接客に向かいますか!」




 そして、エミリアもまた、ヘルプ要員としてメイド服を着て接客する。


「お帰りなさいませ、ご主人様!」


 席に案内してからのメニューの差出でも…。


「注文が決まり次第、貴方様の下へお伺いいたします」


 料理をテーブルに運ぶ時でも…。


「こちら、ご注文のオムライスです。ごゆっくりご堪能下さい」


 客が店を出るタイミングになった時でも…。


「いってらっしゃいませ、ご主人様。これからもお待ちしております」


 と、エミリアは完璧なメイド接客で客の心を魅了していった。


「やっぱり姉さん、こっちでもダントツの成果を出しちゃったか」


「仕方ないよ。エミリアはどっちでも手を抜く気はないし」


 また新たな客が来た事で、エミリアも挨拶をするが…。


「お帰りなさいませ、ご主人…」


「…あぁ」


 そうして、アラタが来客した事で、エミリアは顔を真っ赤にする事になった。

 そして落ち着いた事で、席に着いたアラタと軽く談話する。


「まさか私がヘルプに入ってる時に来るとは思わなかった」


「すまん。俺も一応、お前の護衛である都合上、この店に寄る必要があって」


 アラタに気付いた客達もひそひそ話をし始める。


「あの人、星空の勇者(ナイト・ブレイブ)じゃない?」


「本当だ。陽光の姫君(シャイニープリンセス)と恋仲だって話だけど、もしかして…」


「だから私と彼は、まだその関係じゃありませんから!…で、ご注文は?」


「あぁすまん。じゃあコーヒーとパンケーキを」


「はいはい。じゃあ待っててね」


 と、厨房に向かうエミリアにアラタが声を掛ける。


「エミリア!その、メイド服、似合ってる。とても可愛いぞ」


「…そう。ありがとう」


 と、エミリアも耳を赤くして厨房に入っていくのだった。

 そうしてアラタが店を出る際、こっそりとエミリアに耳打ちをしていくのだった。




 こうして、午前の波を越え、客足が落ち着いてきた事で、エミリアはカイト達と共に休憩に入る。


「さて、これからどうしようか?」


「取り敢えず、軽食取ってから聖堂に行かない?今日はライブステージとかの日程だし」


「そうね。そうしましょう」


 そしてエミリア達も近くの出店で買ったファストフードを食べた後、聖堂に入る事になった。

 先ず最初にライブステージ、鳴り響くあらゆるジャンルの音楽に、観客達は沸き上がった。


「ロックで観客を振るわせて、クラシックで静かにしていった」


「この学園も、色んな音楽を取り入れてるから、こっちも多様性があるわね」


「まさかこの世界でも、こんなライブステージがあるだなんてな」


「音楽もこうして進化していくものなのね」


 次に2年生達による演劇は、拍手喝采が贈られた。


「2年生達も、良い劇を見せてくれたよ」


「ちゃんと人に見せる事を意識しつつ、完成された物だった」


「うん。観客達の心を上手く掴めている」


 最後に、来客達への感謝の言葉で締めくくる事となった。


「さて、此処のイベントも終わったし、そろそろ戻りますか」


「そうだね。こっちも最後の一仕事を終えておこう」


 エミリア達もまた、自分達の店へ戻る事となった。




 こうして、文化祭2日目も終了し、そのアナウンスが流れる。


<皆さん、この2日間、本当にお疲れ様でした。皆さんのお陰で、今年も大成功を収めました。各々の片付けと終了の挨拶が終わったら、夜の打ち上げと参りましょう>


 その言葉の通り、各出店の片付けと終了の挨拶が済まされ、夜の中庭にて、打ち上げのキャンプファイヤーが行われる事となった。

 皆が焚き火を囲って踊る中、エミリアは1人抜け出し、校内の屋上へ向かっていき、そこに居たアラタに会う。


「ごめん、待った?」


「いや、大丈夫。こっちも警備の目を盗んで来た所だから」


「まさかアラタがこんな大胆な手を使って会いに来るとは思わなかったわ」


「お前の事だから、遠くからあの焚き火を眺めるだけで終わる気なんじゃないかと思ってな。こうして寂しくならない様、配慮のつもりで来たんだ」


「それって、寂しそうにしている女の子なら、誰でもこうしてるの?」


「そんな訳ない。お前だから、こうして来たんだ」


「えっ、それって…」


「エミリア、俺もお前が好きだよ。勇者と姫ではなく、男と女として。お前はどうなんだ?」


「…私も、6年前まで男として過ごしてきて、こうして女として過ごしていく中で、男性に対してそう言った感情を持てる自信が無かった。でも、こうして貴方と過ごしていく中で、貴方に対する感情が、他の皆と確かに違うものになっていった。これが、好きって気持ちなんだと思う。アラタ、私も、貴方が好きよ。女の子として、貴方の事が」


「そうか。なら、もう仮面も外れなくなりそうか?」


「いえ、この感覚はまだ外れそうよ。貴方に対する好きが、まだ本物になってないって事ね」


「そうか。…折角だ。今夜は俺と一緒に踊ろう」


「えぇ。喜んで」


 そしてエミリアはアラタの手を取り、舞踏会の様に、2人でダンスを踊り明かす事になった。




 女子寮、エミリアの部屋

 打ち上げを終えたエミリアは、部屋で夕食と入浴を済ませてくつろいでいた。


「文化祭も大盛況で終える事が出来たわね」


「本当にね~。アタシもコッソリ飛び回ってたけど、皆楽しそうにしてたわね~」


「何か姿を見ないなと思ってたら、そんな事してたの?誰にも見つかってないでしょうね?」


「アタシだってそんなヘマしないわよ。それよりもエミリア、アンタも素顔の方を確認したら?今回もまた好感度が上がったでしょ?」


「いや、さっきアラタに言ったけど、まだちゃんと仮面も外れるわよ。でも、まぁそうね。一応見ておきましょうか」


 そう言ってエミリアは化粧台の前に座り、仮面を取ってみると…。


「…悪化してる」


 スレイとしての素顔は、顔はエミリアの物になり、髪も長さと質感と艶がエミリアの時を維持したまま、腰まで届く綺麗でサラサラな黒髪となっていた。


「ぷっははは!もう素顔もエミリアの時と対して変わらなくなってきてるじゃない!もうそのままアラタとゴールインして、ラブラブカップルになっちゃいなさいよ!」


「笑わないでよ!後、そう言うのは余計なお世話よ!」


 と、笑い転げるフィーナに、スレイも声を荒げるのだった。


「フヒヒ!顔はエミリアと対して変わらないのに、声は男のまま!」


「笑うなぁ!」


 勇者と姫の恋物語は、一体どの様になっていくのかは、これからの展開次第である。

文化祭2日目終了。

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