第31話
9月のエピソード開始。
アルテミシア城、城門前
夏休みが終わりを迎えたエミリアは、アルテミシア学園に戻る事になり、ユフィと挨拶を済ませる所だった。
「お姉様、私も寂しいです」
「大丈夫よ、ユフィ。また直ぐに会えるから」
「…はい。ではまた、次に帰って来る時まで!」
「えぇ、行ってきます!」
と、エミリアは馬車に乗って、アルテミシア学園に向かうのだった。
「さて、これからの学園生活、私達もサポートしますので、よろしくお願いしますね。サーシャ王女、ミュリナさん」
「はい、これからもよろしくお願いしますね」
「姫、私も24時間付き添いますので、私の方でも…」
「あ、貴方は男子寮に入るんですよ、ランスロット」
「何故ですか?!私は貴方の…!」
「まぁ、当然だよなぁ…」
夜の深い森の中
旅に出て1ヶ月、タケルとアンリエットは、焚き火を囲って休息を取っていた。
「旅に出て1ヶ月、魔物や魔族以外にも、人々は日々の生活で困っている事がある。それは私も、城でもお父様達に聞かされていたから知ってましたけど、実際に目にすると、それらが身に染みて来ます」
「仕方無いよ。アンリエットも箱入りお姫様って感じだし」
「まぁ!それは私が形だけのお飾りだって事ですか?」
「ち、違うよ!アンリエットは王族特権で行く先で困らない様にしてくれてるし、戦闘でも、攻撃だけでなく補助や回復の魔法で助けてくれてるじゃないか!じゃなくて!アンリエットだって僕と一緒に行く先々の人々を助けてくれる、心優しい女の子だって事!」
「フフッ、ありがとうございます。やはりタケル様は優しい方ですね。ねぇタケル様、私はアルテミシアの姫として、これからも人々の生活を助けていきたいんです。この魔王討伐の旅が終わっても、私の事を手伝って下さいますか?」
「…そうだね。僕もこの世界の事が好きになってきてるし、何より僕もアンリエットが好きになってきた。良いよ。僕の方も、これからもずっと、アンリエットの夢を手伝うよ」
「ありがとうございます、タケル様。これからも、よろしくお願いします」
そしてスレイは、女子寮の自室のベットで目を覚ました。
「…500年前の勇者の夢、久しぶりに見たわ。何だかあのやり取り、私とアラタみたいだった。本当に何でこんな夢を見ちゃうのかしら?確か、夏休みが始まった辺りからよね?まさか仮面との同化の影響?いや、まさかね」
と、スレイはベッドから出て仮面を被り、制服に着替えて、朝食の準備をする。
「おはよう、エミリア~」
「おはよう、フィーナ」
「朝から元気な事で」
「当然よ。今日から新学期ですもの。ちゃんとしておかないと」
そして朝食と後片付けを済ませたエミリアは、全ての身支度を整え、校舎に向かうのだった。
アルテミシア学園、聖堂
そこでは、新学期の挨拶と共に、留学生の紹介も行われた。
「…と言う訳で、マリステラ王国より、第2王女のサーシャ様と、魔導工学研究所の候補生のミュリナ君、そして若くも大手の商会で信用を得ている錬金術師のトウヤ君とその従者達が、我が学園に留学する事となった。皆も彼らと仲良く過ごして欲しい」
そして皆はそれぞれの教室へ戻っていく。
サーシャとミュリナは1年1組、ソーマとランスロットも専属護衛としてついて来る。
トウヤ達は1年3組にそれぞれ在籍する事となった。
「それではエミリア王女、本日からよろしくお願いしますね」
「こちらこそ、よろしくお願いしますね」
「いや~、流石ファンタジー世界の学校。如何にもって雰囲気が出てるなぁ」
「何だかソーマさん、周りから注目されている様な…」
「あぁ、実はバトルロワイアルでの話が、もう広まってるのよ。それで皆、注目する様になっちゃって」
「そりゃそうよね。あの真っ赤な格好と言い、爆発と言い、巨大ゴーレムと言い、注目しない訳ないわよ」
そこに、ラウディーが教室に入って来る。
「ラウディー会長?」
「エミリア君、ちょっと生徒会室に来てくれるかい?」
そしてエミリアはラウディーに連れられ、生徒会室に。
「次期生徒会への推薦?」
「あぁ、俺達3年も、秋のイベントを終えたら、もう引退の流れになる。それは我々生徒会だって同じだ。それで、次の生徒会メンバーに、是非入って貰いたくてね」
「私がですか?」
「あぁ。実際、君はこの国の王女であるだけでなく、学年主席の座に着いている上に、あらゆる場所で実績を積んでおり、学園内だけでなく、国中からも信頼される程の人望の持ち主。そんな有望な人材、生徒会としても逃さない手はない。と言う訳で、どうだろうか?是非生徒会に入ってくれないか?」
「…考えておきます」
「そうか。いい返事を期待しているぞ」
そしてエミリアは生徒会室を出て、廊下でカイト達と合流する。
「会長、何だって?」
「私に次の生徒会に入って欲しいって」
「エミリア、凄いじゃん!会長のお眼鏡に適うなんて!」
「そうかしら?」
「そうだよ!胸を張りなよ!」
「それで返事は?」
「保留にしておいたわ」
「え~、折角だから入っておきなよ。皆だって期待している筈だよ」
「そう?なら入っておこうかしら?」
1年1組教室
現在、マシューによる朝のHRが行なわれていた。
「えー、本日より新学期を迎える事となった。皆で迎えられた事、先生も嬉しく思う。そして、9月にはアルテミシア学園文化祭が開催される事となる。通常通りの授業と平行しつつ、文化祭の準備も進めていき、最終の土日で開催だ。それまでに、うちのクラスでも出し物を決めて、準備に取り掛かれる様にしたい。と言う訳で、今日の放課後のHRで出し物について話し合う事となる。皆も、それまでに案を考えておく様に」
そしてHRは終了し、皆も授業の準備に入っていく。
「文化祭か~。この世界にも存在するんだな~」
「やっぱりどの世界にも文化祭があるものなのね」
「アタシはこの世界の学校で文化祭を迎えられると思って無かったな」
「まぁまぁ。取り敢えず、それについては放課後でまた話し合う事になるんだし、今は勉強しておこう」
「そうだね」
そうして本日の授業日程を全て終え、放課後のHRを迎える事となった。
現在、1年1組の教室では、クラスの出し物について案が出されていた。
「うちのクラスの出し物についてだが、何か案のある奴いないか?」
「はい!私、展示会が良いです!」
「俺はコンセプトカフェ!」
「僕はゲーム系の出し物!」
「私は売店が良い!」
「私は演劇!」
「はいはい、落ち着け!一旦黒板に案を書き出して、そこから多数決を取る!では1つずつ書き出すぞ」
それから黒板に書き出された案を1つずつ多数決をしていく事になった。
「では多数決の結果、第1候補『コンセプトカフェ』、第2候補『演劇』、第3候補『展示会』となった!この投票結果を職員室に持ち込み、他のクラスや委員会等と精査して決める!補欠候補になっても、全員文句が無い様に!」
こうしてHRは終了し、生徒達も帰り支度を始める。
「文化祭、俺も何かワクワクして来たぜ」
「確か文化祭は、外部からの客も大勢やって来ると言う話。サーシャ様に害虫が寄って来ぬ様にしなくては」
「ランスロット、貴方も少々過保護なのでは?」
「じゃあ僕、修練所で軽く素振りしてから帰る」
「私達は図書室で勉強しておくよ。エミリアもどう?」
「あ、ごめん。私、街に用事あるから。じゃあ」
と、エミリアはそそくさと教室を出て、そのまま街へ繰り出す。
「今月にはユフィの誕生日と、お父様とお母様の結婚記念日が控えている。今の学生の立場を使って、街中で自由に選んでおきましょう」
と、エミリアも普通の買い物をしながら、記念日のプレゼントについて考えるのだった。
秋のイベントも控えてます。




