第24話
夏休みの始まりです。
アルテミシア学園
1学期の終業式を終えた生徒達は、これより夏休みに入る。
これから実家に帰省する者達、学園に残る者達と分かれていた。
そしてエミリア達は帰省する側となっていた。
アルテミシア王城、謁見室
城に帰って来たエミリアは、国王夫妻に挨拶していた。
「エミリア、1学期ご苦労であった」
「夏休みの間、ゆっくり休みなさいな」
「はい、お父様、お母様」
そしてエミリアも謁見室を去り、廊下を歩いていると、ユフィが抱き着いて来た。
「お帰りなさい、お姉様!」
「おっと、ただいまユフィ」
「これから私の部屋に来ませんか?お話したい事いっぱいあるので!」
「えぇ、良いわよ」
そしてユフィの部屋に入った途端、フィーナが空中に飛び出した。
「初めまして、アタシはフィーナ。エミリアのガイド妖精をやってるわ」
「うわぁ!本物の妖精さん!初めて見ました!可愛い!」
「ありがとね、可愛らしい第2王女様」
「うふふ。それじゃあ、フィーナの事も含めて話しましょうか」
「はい!」
そしてエミリアはユフィとフィーナと共に雑談をするのだった。
夜、エミリアの部屋
エミリアが夏の課題をやっていると、扉をノックする音が聞こえ、エミリアは入室の許可を出す。
「お帰り、エミリア」
「アルベルトお兄様。どうしてお城に?」
「父上と母上と一緒に溜まった書類を片付けようと思って、帰って来ただけだ。…そちらが、例の妖精だな?ユフィから聞いてる」
「はぁい、アタシが妖精のフィーナちゃんで~す」
「それとエミリア、1学期の間、本当によく頑張った」
「はい。ありがとうございます」
「あ、それとレオニーの方はどうだった?」
「彼女もちゃんと警護役出来ていますよ。それに転生者の友達も出来ました」
「転生者まで居たのか?」
「はい。アリア・ガルウェナーがそうでした」
「あぁ、ガルウェナー家のご息女か」
「えぇ。彼女、レオニーにすっかり懐いてます」
「それは良かった。所でお前、アラタとの関係はどうなんだ?」
「だから彼との関係はそこまで進んでませんって!そう言うお兄様こそ、彼女のお相手をしなくて良いんですか?」
「そうだな。時間が出来たら、あいつの所へ顔を出す。それじゃあエミリア、俺はこれで」
「はい、お兄様。あ、それと、新しい武器の代金の立替、ありがとうございます」
「何、兄として当然の事をしただけだ」
アルテミシア城、大広間
その場に魔法陣が展開されたかと思うと、急に黒髪の少年が現れた。
その光景に、集まってた王族を始めとする城の者達は驚く事に。
「貴様、何者だ!?何処から入って来た!?」
「うわっ!?ま、待って下さい!実は僕、トラックに轢かれそうになった女の子を助けたと思ったら、急に周りが光り出して。良く分からない空間に出て来たと思ったら、女神を名乗る女性に、「ある世界を救って欲しい、その後の選択は自由にして良いから。」と言われ、そして気付いたら此処に居たんです!」
「何を訳の分からない事を…!」
「待って下さい!」
そこに金髪の麗しい姫が兵士に待ったを掛け、少年に近付く。
「もしかして貴方、この世界の女神に選ばれた勇者様ですか?」
「勇者!?かつてエルフの神官が言ってた、世界の危機を救う為に訪れる、異世界の勇者か!?」
「あっ、そう言えばあの人、色々勇者特典やるから、これで世界を救ってくれとも言ってた様な…」
「やっぱり!勇者様、貴方は神に選ばれ、この世界を救う為に訪れたのですね!?あっ、申し遅れました。私はこの国の王女、アンリエット・フォン・アルテミシアと申します。勇者様、貴方のお名前は?」
「僕は…」
と、そこで映像は途切れ、スレイは自室のベットの上で目を覚ました。
「今の夢、一体何だったのかしら?やけに懐かしさを感じた様な…」
エミリアの執務室
エミリアが書類仕事をやっていると、水晶に通信が入って来る。
「はい、もしもし?」
<もしもし、エミリア様?実は…>
そしてエミリアは突然やって来たゼシカとデュークを客室に招き、お茶を出す。
「どうしたのですか、ゼシカ王女?いきなりこちらにお越しになるなんて」
「先日、貴方方が秘密裏に捕らえた海賊の件ですよ」
「何処でそれを?」
「うちの情報網を舐めないで頂けます?私の方からお礼を申し上げに来たのですよ。あの海賊にはフィルビア王国も手を焼いていたのです」
「いえ、こちらも王女として当然の事をしただけです。後、彼らはうちの暗部として働いてくれてます。…こちらに来たのはそれだけじゃないんでしょ?そろそろ本題に入っても?」
「やっぱり気付いてましたか。…交流会の時に捕らえた黒ローブの者達の事です。彼らを引き渡した時の貴方方の態度、何か引っ掛かりました。話して下さいますね?」
「…仕方無い。貴方も奴らに関わってる以上、話しておく必要があるわ」
そしてエミリアは、ゼシカに組織に関する情報を話した。
「…成程。それは確かに、我々にとっても由々しき事態です」
「えぇ。だからこの事は、他言無用でお願いしたいのだけど…」
「心得ています。一応、こちらの方でも出来る限りの協力もしておきます」
「ありがとうございます」
「しかしエミリア王女、貴方前に会った時より、随分物腰が柔らかくなりましたね。もしかして、お好きになった殿方でも出来たとか?」
その言葉にお茶を飲んでたエミリアもむせてしまう。
「あら、図星でしたか?」
「ゴホッゴホッ、ゼシカ王女まで何言ってるんですか!?私は別に色恋沙汰をしている訳では…!」
「でも、気になってはいるんですよね?お相手は誰ですか?」
「うっ…!…アラタ・ホシミヤと言う方です」
「あぁ、勇者の血族のSランク冒険者星空の勇者ですか。成程、確かに彼ならエミリア王女とお似合いのカップルになりますね」
「ゼシカ王女まで私の事揶揄うんですか!?」
「その言い方、貴方の周りの方々は、星空の勇者との関係を認めていると見えます。確かに彼は勇者に相応しい人格の持ち主ですし、周りも文句は言わないでしょう」
「そう言うゼシカ王女こそ、色恋沙汰とか婚約者の話はあるんですか?」
「私も一応縁談の話は来てますが、まだ受ける気は無いので断ってます。殿方を見定める際にも、私に相応しくないと判断したら、去勢して突き返しておきますので」
(この人もこの人で、綺麗な顔してえぐい事言うわね…)
「そう言う訳ですので、エミリア王女も恋の成就、頑張って下さいね?」
「だからその話は止めてぇ!」
夜、アルベルトの執務室
エミリアは昼間のゼシカ来訪の件をアルベルトに報告していた。
「そうか。ゼシカ王女も協力してくれる事になったか」
「はい。フィルビア王国は魔法研究国家ですので、奴らの研究や痕跡の分析に役立つと思います」
「確かに、魔法に精通している国の支援は有り難いな」
「そうですね。…所で、話は変わりますが、実はゼシカ王女に海に誘われたんですよ」
「ゼシカ王女が?一体何の為に?」
「詳しくは分かりません。ただ、あの人…」
<折角ですので、エミリア王女とパーティーメンバーの皆様と海をエンジョイ致しましょう。私だって夏のリゾートを楽しみたいんですよ。あっ、勿論皆さん、装備一式をキチンと持って来て下さいね?>
「…と言っていて、何か面倒事の予感がするんですよね…」
「成程。俺も不安になってきた…」
「海!?私も行きたいです!」
と、ユフィが部屋に入って来た。
「ユフィ?言っとくけど、何か面倒事が起こりそうだから…。」
「その時はお姉様が守ってくれるんでしょう?それに、私もお城に籠りきりで、いい加減外に出たいんです!私も海に連れてって下さい!」
「お兄様…」
「分かった。後でレオニーにも同行を命じておく」
こうして、エミリア達はゼシカの招待の下、海へ向かうのだった。
次回、フィルビア王国へ。




