表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/28

第18話

修行&新衣装

 生徒会室

 エミリア達はラウディーにとある事を相談していた。


「新しい装備?」


「はい。これまでは私達も各々で用意した持ち合わせの装備で何とかやって来ました。けど、先月の交流会での戦闘は、学生の範囲内だったからギリギリでしたけど、今後私達が関わる事になるであろう大きな戦いの事を考えると、今の装備のままでは、どうも力不足になるのが目に見えてるので。冒険者衣装の新調についてはティティアに任せています。後は武器と防具に装備アクセサリーの当てが欲しくて」


「うーん、そうだなぁ…。あ、そうだ!実はこの街にレニンの叔父が営んでいる鍛冶屋があった!あの人は相手が何者だろうとしっかり見定め、その人に合った装備を造る!エミリア君達に合った武器や防具だって造ってくれる筈だ!レニン、紹介状を書いておいてくれ!」


「はい、分かりましただ」


「ありがとうございます」


「あ、後、彼は気難しい性格だから。気を付けておく様に」




 放課後、街の裏路地

 そこに目立たずに構えている鍛冶屋にエミリア達が入ると、ガタイの良いドワーフが鉄を打っていた。


「すみませーん!私達、レニンさんの紹介で来た者ですが、ゴルバ・アシトさんで会ってますかー?」


 その声にゴルバは手を止めて振り向く。


「…何の用だ?」


「実は私達、新しい武器に防具、装備アクセサリーを造って貰いたくて。あ、これ、レニンさんからの紹介状です」


 そう言ってエミリアは紹介状をゴルバに渡す。


「…成程。エミリア王女御一行の新装備と来たか。だが俺だって人を選ぶ。幾ら王族でも、腕が伴ってなきゃどんな武器も鈍同然だし、逆に腕が確かなら、どんな粗悪品でも使いこなせる。でもって、装備に愛着が湧かない様な浮気者じゃ装備が可哀想だ。大体、俺に頼らなくても、王族のコネで何とかなる筈じゃねぇのか?」


「それじゃ駄目なんです!私達がこれから関わるであろう大きな戦いは、生半可な腕の者に任せられないし、王族の立場に甘える訳にはいかない!だからこそ、王女である私であっても信用出来る、確かな腕の持ち主じゃないと駄目なんです!」


「僕も剣の名家の血を引く者として、負けっぱなしじゃいられない!だから僕も強くならなくちゃいけないんです!」


「俺だって、魔女の弟子として、エミリアの友達として着いて来れなくちゃならないんです!だから魔法使い用の装備も造って下さい!」


「私も家族と故郷を奪われた身だ!私も奴らへの復讐を果たさなければならない!例え聖職者らしからぬ考えでも、それが私のやりたい事だ!」


「…どうやらお前さん達にも、譲れねぇもんがあるみてぇだな。分かった。取り敢えず、合いそうな装備が無いか見定めてやる」


『…!ありがとうございます!』


 そうしてゴルバはエミリア達の観察から始める事にした。


「軽く見た所、先ずカイト、お前は常に剣の素振りを欠かさずにやってるだろ?手のタコや姿勢を見ればそれくらい分かる。けど身体の出来が精々中の上と言った所だな。だったら、お前に合う剣は、軽くて丈夫なロングソードと言った所か。次にハルトマリー、お前は魔力の扱いは上手く、展開も早い。だがそれだけだ。体内の魔力の扱いは申し分ないが、大気中のマナの伝導率が追い付いて無い。だからお前は先ず、大気中のマナを自身の魔力に変換する技術を磨け。そしたら、魔力コントロールと術式の構築と展開を向上させる杖を持て。次にスバル、お前精霊魔法が使えるんだって?それは精霊に対する理解とコミュニケーションがものを言う。だから精霊に関する書物を読み漁り、自然の中で精霊と対話し、理解を深めろ。そして光魔法に磨きを掛けろ。そしたら、精霊魔法と光魔法を補助する杖一式を使わせてやる。最後にエミリア、お前は剣の扱い方が身体に合ってない。女の細腕じゃ重い物は使い切れない。次に全属性魔法と言うポテンシャルにまだ技術が追い付いて無い。だから、先ずやるべき事は、ちゃんと身体に合った剣の振り方を覚える事。お前に合ってるのは細剣だ。そして魔法のポテンシャルを最大限引き出せる様になる事。そうすればお前は更に強くなれる。それが出来たら、細剣ベースのロングソードと、魔力補助アクセサリー一式を与える」


「ご指摘ありがとうございます。けど、どの様に直していけば…?」


「それも既に検討が付いている。先ずカイトは、肉体の出来については生まれついての物だからな。だから無理に身体を作ろうとせず、剣の基礎をキチンと固めろ。そして身体に合った動き方を模索する事だ。力ではなく、技と速さを使う方向で。次にハルトマリー、お前はマナの濃度が濃い場所でマナを感じ取り、取り入れる技術を磨け。常にマナを感じ取り、直ぐに体内に魔力として変換出来る様になれば、魔力量を常に最適に出来るし、大型の魔法を放てる様になる。次にスバル、精霊魔法についてはエルフの専売特許だ。だから知り合いのエルフに頼んで、エルフの里で勉強させて貰え。精霊の事だけでなく、魔法についても教えて貰える。最後にエミリア、先ず剣については、細剣の使い手にキチンと師事して貰え。魔法についても、各属性の専門家達を回ってキチンと勉強させて貰え。これらについては、お前も容量良い方なら、冒険者ギルドに頼むだけで事足りる。全員理解したら、直ぐ動け。お前らなら2~3週間で最低ノルマに辿り着けるだろう。その間、俺も装備を造っておくから、ちゃんと修行しておく様に」


『はい!』


 そして各々、修行を始める事となった。




 カイトの修行

 カイトはアルフォードに頼んで、朝の王国軍第1部隊の訓練に参加させて貰っていた。

 先ずランニング10周、筋トレ各50セット、剣の素振り100回をこなしていく。

 そしてアルフォードに剣を見て貰いながら、動き方の模索をしていた。


「カイト、お前の身体はやっぱり剛剣向きじゃない。だから技と速さを使えと言う指摘も最もだ。お前に合ってるのは、足腰をキチンと整え、剣を技術力で振るうスタイルが良いだろう」


「成程。それじゃ、剣の稽古をお願いします」


「カイト、お前も随分と精が出るじゃないか」


「当たり前だよ。僕も姉さんも、これからの為にもっと強くなりたいから」


「そうか。本当に良く頑張る妹と弟を持ったと思うよ」


 それから2人は剣を持ち合い、稽古に励むのだった。




 ハルトマリーの修行

 ハルトマリーもシェーラに頼んで、濃厚なマナが漂うスポットでマナを取り込む技術を磨いていた。

 その途中でハルトマリーが膝を着いた事で、シェーラもマナの薄い地点まで下がらせる。


「マナ酔いよ。マナを容量オーバーまで取り込んだ事によって起きる症状ね。これについては焦ったって容量が直ぐ上がる訳じゃないから、長い目で容量を増やす事ね」


「いえ、先生。俺達だって、貴方の弟子ですよ。この程度で音を上げてる場合じゃないわ。私達も、負けた悔しさをそのままにするつもりは無ぇ。絶対に負けた時よりも強くなってみせる」


「…そこまでして強くなりたいなんて。エミリアとの出会いが、良い感じに作用したみたいね。良いわ、付き合ってあげる。但し、ペースの管理も徹底させて貰うからね」


 そしてハルトマリーはシェーラの監視の下、マナの技術力を上げていくのだった。




 スバルの修行

 スバルもミーシアに紹介状を書いて貰って、エルフの里で修行させて貰っていた。

 そして現在、自然をより感じ取れる様に瞑想している所であった。

 そこに指南役のエルフの女性が声を掛ける。


「スバルさーん?」


「あっ、何ですか?」


「あっ、ごめんなさい。集中してました?」


「いえ、大丈夫です。そろそろ精霊の文献を読ませて貰う時間だったので」


「そう。ふふっ、スバルさん、貴方も随分熱心ね」


「ええ。私も強くなりたい理由があるので。それに、他の皆も頑張ってますので」


「貴方の強くなりたいって思い、確かに伝わってくるわ。つい応援したくなっちゃうわ」


「ありがとうございます。では私はこれで」


 そしてスバルも、エルフの里の書庫へと足を運ぶ。

 それからも、スバルは精霊に関する文献を読ませて貰うだけでなく、魔法や精霊の勉強を見て貰い、瞑想で自然や精霊に心を通わせる技術を磨いていった。




 エミリアの修行

 エミリアは冒険者ギルドに通い、細剣や各属性魔法の専門家の所を回り、彼ら彼女らに師事を仰ぎ、各分野の技術を磨いていた。

 そして休憩時間、細剣の講師が疑問を口にする。


「そう言えばエミリア様、どうしてそこまでして強くなりたいんです?貴方はこの国の王女、本来守られる立場である筈なのに?」


「…その守られる立場が嫌だからよ。私にだって意地とプライドってものがある。私だって戦えるんだって所を見せつけて、強くなって、後ろでじっとしている様な女じゃないって見せつけてやるの。だから政治と策略だけじゃなく、武力を磨く事で、あらゆる方面でも活躍出来るって事を見せて、このアルテミシア王国を、そして世界をより良くしてみせる。それが私の信念よ」


「そうですか。では、稽古を再開しましょう」


 そしてエミリアは再び剣の稽古を再開する。

 影で見ていたフィーナはこう思った。


(エミリア、あんたやっぱり王族の資質がちゃんとあるわ)




 各々、その胸に宿した矜持の為に修行に励んていた。

 そして2週間後の土曜日、ゴルバの鍛冶屋に4人は集まった。


「…力を付けたみてぇだな。良し、装備は出来てる。そこに置いてあるから確認しようか」


 そして各々、用意された装備を確認していく。


「先ずカイトは、合金を使ってスピードタイプのロングソードを仕上げた。軽いだけじゃなく、打ち合いにも耐えられる様にもなってる。ハルトマリーは、魔力伝導率を良くするAランクの魔法石を使った杖だ。これならお前の魔力コントロール技術をフルに活かせる。スバルは、上質な精霊石を使った杖と、精霊の加護を一身に受けられるアクセサリーだ。精霊をより深く知った今のお前なら、魔力も更に上がってる上に、精霊との繋がりも強固になった筈だ。最後にエミリア、先ずは細剣をベースに打ったロングソードだ。今のお前なら、細剣での振り方で、従来のロングソードと同じ様に使える様になってる。そして、Aランクの魔法石を使った補助アクセサリー一式だ。これは属性別に使い分けられる上に、魔力を込める事で杖と同じ様に使える。以上が注文の装備一通りだ。上手く使えよ」


「ありがとうございます!…あの、所でお代については?」


「あぁ、それな。お前さん等もまだ学生だから、ギルド経由でと思ったんだが、実はアルベルト王子が立替を言い出したんだよ」


「アルベルトお兄様が!?」


「大方、妹達の強くなりたいって意思を尊重した結果だと思うぜ。良い兄ちゃんじゃねぇか。会った時にちゃんと礼を言うんだぞ」


「そうですね。お兄様には感謝しか出ません」


「俺も良い仕事をした。それじゃ、今後もうちを御贔屓に頼むぜ」


『ありがとうございます!』




 アルテミシア学園、家庭科室

 エミリア達は、ティティアが作った新衣装に袖を通していた。


「いやー、エミリア様達の修行中に、使える素材が確保出来て良かったですよ!それじゃあ、衣装の紹介をさせて貰いますね!先ずエミリア様は、下は白の特製ハイヒールに、縁にフリルを使った白のニーソックス!白のミニスカートの周りに、ドレスの裾を基にした白のロングスカートパーツ!そしてミニスカートの中のパニエ!上も白を引き立たせる色合いのコルセットに、胸元を大胆に開いたフリル付きの布地!肩を普通のドレス等でよく見るショルダーパーツで覆い、腕もまた、全体を覆い尽くした白いロンググローブ!大胆に開いた背中を含めて、舞踏会に舞い降りたプリンセスをイメージした一品です!次にカイトさん、下は足をブーツと丈夫な焦げ茶色のズボンで覆って下半身を引き立たせる仕様!上も青色のシャツにサイズを合わせた胸部アーマー!そして茶色のグローブに水色のマント!女の子達をその剣で守ろうとする少年騎士をイメージして調整しました!そしてハルトマリーさん、下は紺色のローファーに従来のニーソックス!中にパニエを入れ、黒色のフリルを縁に使った赤色のミニスカート!上も白のブラウスの上に赤のコルセットと、別途で着脱可能な黒の袖パーツ!少女らしさもある黒魔導士をイメージした魔法使いの衣装です!最後にスバルさん、下は白のパンプスとニーソックス、そしてスリット入りの青のロングスカート!上も白と青を基調とした清楚さと大胆に開いた胸元のバランスを調整!青の袖パーツとシスターベールと合わせて、聖女らしさを全面的に押し出してみました!どうですか!?私の仕立てた新衣装、気に入ってくれましたか!?」


「うん、結構良い感じになってる!僕は良いと思う!」


「私もこのシスター服、より身が引き締まった気がする…」


「この魔法使いの衣装、結構好みかも…」


「私のこのドレス、機能性が上がったのは感じるけど、前より目立ってる気が…」


「何言ってるんですか!?私だって専属デザイナー候補!服の機能性は勿論、その人の魅力を最大限引き出す為のデザインに拘るのは当然の事ですよ!それが国のトップの1人であるお姫様なら、尚の事です!」


「わ、分かった分かった。貴方の言いたい事、ちゃんと伝わったから」


 そこをフィーナがエミリアの頭の上に乗ってくる。


「良いじゃない。あんただってお姫様なんだから、オシャレにも気を使いなさいよ」


「あ、フィーナちゃんの分も作ってありますので、ちゃんと受け取って下さいね」


「はーい、ありがとう」


「私達の方こそありがとうね、ティティア。この衣装、気に入ったわ」


「はい!これくらいお安い御用です!今度の臨海学校でも、水着の方も使って下さい!」


「えぇ、それじゃあ今回はこれで」


 そしてエミリア達は、制服に着替えて、家庭科室を後にする。




 中庭、テラス席

 エミリア達は、今回の修行の成果を話し合っていた。


「ゴルバさんに言われた通り、修行した事で僕らも強くなった気がするよ」


「まぁ、学園にいる時間も確保出来るくらい、私達も学業に困らずに済んだけどね」


「これで組織にも、もう遅れを取らないし、アラタさんの手も借りずに済む」


「まぁ取り敢えず、修行も済んだ事だし、次は臨海学校を楽しもう」


「そうだね。すっかりその時期が来ちゃったね」


「この2週間、修行で疲れた身体を、海をエンジョイする事で休ませましょうか」


「海か~。新しい水着買わないと」


「俺はアレの都合上、短パンかセットアップ、パレオしか着れないし」


「私もこの大きな身体じゃあ、着れる水着も限られちゃうし」


「ティティアも、あたしの服作ったついでに、妖精サイズの水着まで作ってたのよね、これが」


「折角だから、これから水着見に行く?」


「そうだね、行こう」


「私はもうティティアが作った水着があるけど、見繕うだけなら」


「面白そうじゃない。あたしも!」


 そう言ってエミリア達は、街へ水着を買いに行く事に。

 修行で心身共に引き締まった自分達を休ませる為に、臨海学校に思いを寄せるのであった。

6月のエピソード終了。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ