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第16話

シェーラの知り合いを出します。

 夜、アルテミシア城バルコニー

 エミリアとアラタはお互い抱き合っていた。


「アラタ、私、貴方の事が好き。もう貴方無しでは生きていけない」


「エミリア、俺は最初、お前の事がこんなに愛おしくなるとは思ってなかった。こんなにも惹かれ合う事になるだなんて思ってなかった」


「そうね。私ももうこの仮面が外れなくなってしまった。完全なエミリアになってしまったわ。これで1人の女として、貴方を愛する事が出来る」


「エミリア…」


「アラタ…。貴方の事が好きよ。愛してる」


 そして2人の唇が触れる瞬間…。


「うわぁぁぁぁぁぁぁ!」


 スレイは朝の陽ざしと共に女子寮の自室のベットの上で目が覚め、直ぐに顔を撫でて確かめ、化粧台の前まで駆け付け、化粧台の上の鏡と、その前に置かれている仮面を目にする。


「夢か…。危なかった~!完全にあのままアラタとキスしてしまう所だった~!」




 1年1組教室

 エミリアは机の上でうつ伏せ、カイト達も心配そうに見ていた。


「大丈夫、姉さん?」


「全然大丈夫じゃない。今朝夢でアラタとキスしてしまう所だったんだから…」


「えぇ~、別に良いでしょ?エミリアだって満更じゃない筈でしょ?昨日の修練だって、やけに距離が近かったし、私達の時以上に彼に柔らかい態度だったし」


「スバル!そう言う事言わないでよ!貴方達がそうやって揶揄って来るから、私もあんな夢を見る羽目になったのよ!」


「俺も良い感じに見えていたんだけど。別にあのままくっついてもいいんじゃないかって私も思う」


「ハルトマリーまで!?」


「まぁアラタさんも、Sランク冒険者故に色々と多忙になるって話だし、暫く会えなくなって、姉さんも寂しく感じちゃってるかもね」


「だ~か~ら~!」


 その時、教室の扉が開き、担任の薄茶色の20代男性、マシュー・フォルカスが入って来る。


「そろそろホームルームが始まるから、全員席に着け」


 その号令に生徒達も着席する。


「よし、全員いるな。えー、先月のオリエンテーリングも終え、今月初めの交流会も終了。特にエミリア、お前もこの国の王女として、大した結果を残したものだな。まぁ兎に角、次にお前らには中間試験が控えているから、6月頭までにちゃんと勉強しておくように」


『え~!?』


「文句言うな。この後に控えている臨海学校を気持ち良く迎えたいだろう?夏休みも快く迎えられる様、その前の期末試験にもちゃんと精を出せ。それが分かったら、各自キチンと試験勉強する様に。以上!」


 そしてホームルームが終わり、各自授業の準備を進める中、マシューがエミリアに近づいて来る。


「エミリア」


「はい?」


 そしてマシューは周囲に目を向けた後、エミリアに耳打ちする。


「実はここだけの話なんだが、科学部顧問のネウロ先生、お前に目を付けていてな。あの人は色々な話が出回っているせいで、イマイチ信用しきれない人だ」


「色々な話?」


「生徒を使って人体実験したりとか、凄く危険な薬を作ってたりとか色々と。そう言う訳だから、あの人には気を付けろよ。お前にも、試験勉強に専念して貰いたいし」




 学園廊下

 エミリアは3人にマシューから聞いた話を相談していた。


「ネウロ先生?僕は会った事ないな。」


「私は聖職者である都合上、科学者とは相性悪いし、関わった事無いけど」


「それなんだけど、俺1度科学部の前を通った事あるんだ。でも、扉の向こうから嫌な気配を感じて、直ぐ逃げちゃったのよ」


「うーん、やっぱり実態が掴めない先生みたいね。まぁ、今は試験勉強に専念しておくってのも事実だけど」


「そう言えば姉さん、何時の間に学年主席になる程頭良くなったの?実家にいた時、勉強それ程出来る訳じゃ無かったのに?」


「城の専属家庭教師がレベルの高い人達ばかりでね。それで勉強、運動、作法に芸事、魔法に武芸、テーブルマナーに至るまで、色々出来る様になっちゃったのよ」


「うわぁ、流石王女様。とんでもない英才教育の環境だ…」


「まぁ私も、教会で生活する事になった時に、規則正しい生活を強要される事になったからね」


「まぁそう言う訳だから、私も人の勉強見れるから、分かんない事があったら…」


「いーやー!」


 その時、エミリア達の目の前でロープに縛られたヴィオラが引きずられていた。


「拒否権はありません。大人しく連行されて下さい」


「嫌ですわ!これ以上私に一体何をなされるんですの~!?」


 ヴィオラが黒髪ボブカットの少女に引きずられる姿を、エミリア達は呆然と見ていた。


「…あれ、ヴィオラ先輩?一体どういう事?」


「追いかけるわよ!事によっては教師陣に通報よ!」


 そしてエミリア達も急いで後を追いかける。




 そうして追いかけた先に辿り着いたのは、科学部部室だった。


「よりにもよって、問題の科学部…」


「まさか例のネウロ先生が?」


「兎に角入るわよ!」


 そして4人は部屋の中へ入っていく。


「おや、近々私の方から挨拶に向かおうと思っていたのだが、まさかそちらから訪ねてくるとは」


 奥で回転チェアに座っている人物がその姿を見せる。


「初めましてエミリア王女。私が科学部顧問を務める非常勤講師の、ネウロ・ペディニアスだ。以後、よろしく頼むよ」


 そうして見せたネウロの姿に疑問が沸き上がった。

 一見すると、白衣とブラウスとタイトスカートと黒ストッキングとハイヒールの似合うグラマラスな20代女性の身体だが、頭の方は眼鏡と無精ひげとボサボサの焦げ茶色の男性だった。


「あの人、一体どっちの性別なの?」


「あぁこれか?私は科学に魔法に医学、錬金術に精通している天才科学者でね。私もそれらの技術を駆使して、自らを雌雄同体に改造してみたんだ」


「あの…ネウロ先生の身体のベースって…?」


「勿論男だ。男女両方の肉体の使い方が出来る様、中身も改造済みだ。しかし、あのシェーラの弟子まで来たのは驚いたぞ」


「えっ!?何で先生の事を!?」


「私は元々、アイツとは肉体改造の研究者としての同門だったんだよ。アイツの持ってる魔法による肉体の改造も、元々同じ研究所で勤めていた事によるものだ。私が科学者として、様々な実験や研究を続け、更に発展したいのに対し、シェーラの奴は、自分の身体をいじる趣味は無い上に、本人の望まぬ改造はしないからと、対価を支払う契約と言う形で改造を行う事にしたと来た」


「そんな事、先生は1度も話した事は無いけど」


「だろうな。アイツは魔女であるが故、科学者である私の事は嫌っていたし、私以外にも関わりたくないと思っている人間が、あの研究所にいたからな」


「それよりもヴィオラ先輩は!?流石に悲鳴を上げて引きずられる様は、私も王女として看過出来ませんけど!」


「あぁ、あの実験体ならそこだ」


 そしてネウロの指差した方を見ると、そこにはベットに磔にされているヴィオラがいた。


「この変態ドクター!今度は私にどんな改造を施す気ですの!?」


「ヴィオラ先輩、今助け…!」


「待て。こいつはうちの立派な改造実験体だ。」


 そう言ってネウロは立って、ヴィオラに近付く。


「どういう意味ですか?」


「こいつは元々、10歳の時は札付きの悪の不良少年でな。本名はガーサ、孤児だった。スラムでも手が付けられず、大人達も手をこまねいていた所を私が麻酔で眠らせ、肉体、脳共にお嬢様の身体と人格に改造を施し、更生の為にレイローズ家に引き取らせた。それからも、こうしてレイローズ家に相応しいご令嬢になれる様、あらゆるスパルタ教育をやらせて、私も改造専門の主治医を務めている訳だ」


「そのせいで私はこんな見た目にされただけでも屈辱ですのに、脳もいじられたせいで、常にお嬢様らしい口調と振る舞いを強制させられ、レイローズ家でやりたくもないお嬢様としてのスパルタ教育を受けさせられる事になったんですのよ!」


「おいおい、いい加減観念したらどうだ?お嬢様としての教育が完成した暁には、お前は遺伝子レベルでレイローズ家のご令嬢になり、貴族のお嬢様として、家の繫栄の為に尽くす事になってるんだから」


「ただでさえ見た目や振る舞い等をこんな風にされているのに、筋肉の増強圧縮に脂肪の上乗せ、挙句に私の元の火属性魔力の増加に加えて、風と土の属性魔力のタンクをおっぱいとして取り付けられている状態ですのよ!しかも3種類ともに増加させまくるものだから、今はGカップ!こんな状態に勝手に改造されて喜ぶ訳無いでしょう!」


「まぁまぁ、その胸だっていずれは本物になるし、3種類の魔力も未だ健全になる様にはする。大体言って分からない様な奴は、改造で身をもってわからせ、無理矢理更生させた方が世のためだ。それに貴族の教育に着いて来れてる時点でお前も元々優秀な方なんだ。女としての幸せを受け入れれば、お前だって楽になれるぞ」


「だから私は…!」


 その時、ボブカットの少女がヴィオラを力尽くで押さえつける。


「よーし、良いぞアリシア。そのまま抑えておけ」


 この3人の光景に、エミリア達4人は真顔と無言で部屋を出る。


「えっ!?ちょっとエミリア王女!?先程私を助ける気でいたのでは!?」


「まぁまぁ、直ぐに診察に取り掛かろう」


 部屋から聞こえるヴィオラの悲鳴に、4人はこう思った。


(うん、これで確信した…。あの人に関わると碌な事がない…)




 ヴィオラを解放したネウロは、アリシアの紹介をした。


「彼女はアリシア・ウィーケイド。1年2組の生徒だ。アリシアは私同様の天才で、今後の為に私に弟子入りを志願したんだ。私も非常に助かってるし、彼女は本当に優秀な助手だよ」


「よろしくお願い致します」


「あの~、所でヴィオラ先輩については?」


「あぁ、軽く魔力関係の調整を施しただけだから問題無い」


「はぁ…」


「そう言えば、ネウロ先生がエミリアに目を付けてるって話を聞いたんですけど」


「あぁ、それか。なぁに、シェーラの契約者のデータが欲しいだけだ」


『えっ!?』


「おいおい、私はこの学園のセキュリティも手掛けてんだぞ。当然、盗聴、隠し撮り用回路だって仕込んである」


「幾ら先生でも、姉さんは渡しませんよ!」


「私達も、エミリアの友人として、パーティーメンバーとして抵抗させて貰いますよ!」


「…エミリアから、顔と身体に関するデータを手に入れたかったが、仕方無い。今度シェーラの所へ話をしに向かうか。アイツは嫌がるだろうけど」


『ほっ…』


「ほらほら、お前達も試験勉強したいんだろ?さぁ帰った帰った」


 そう言われて4人は科学部部室を後にする。


「まさかシェーラ先生の知り合いだったなんて」


「そう言えば僕達もあの人の事、全然知らないよね?」


「ほらほら、誰にだって知られたくない事の1つや2つあるんだから、あんまり話広げないの。兎に角今は試験勉強。私も見てあげるから、貴方達も良い点取るのよ」


『はーい!』


 そして4人は、図書館で試験勉強に励むのだった。

学校なんだから、テストくらいはありますよね。

取り敢えず、5月はこれで終了。

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