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第14話

組織との戦闘が起きます。

 土曜日、廃屋敷前

 エミリア達4人は、冒険者としての依頼の為に、森の中の廃墟前に来ていた。


「今回の依頼は、この屋敷に幽霊が住み着いた為、霊気や瘴気等が溜まり易くなっているから、とんでもない物を引き寄せてしまう前に、この屋敷を浄化しておいて欲しいと言う内容よ」


「この依頼、本来はCランクでも事足りるレベルの内容だけど、スバルさんの力を見れるいい機会だからね」


「そうね。よろしくお願いするわね、スバルさん」


「えぇ、任せて下さい」


 そして4人は屋敷の中に入っていく。




 エミリア達は暗い廊下の中を1歩1歩前進していく。

 そして幽霊に出くわした際、スバルが浄化魔法で次々成仏させていった。

 そして地下の最奥、そこには瘴気の吹き溜まりがあった。


「これが幽霊達を呼び寄せている瘴気…」


「これから私は、この瘴気の浄化作業に入ります。その間、邪魔が入らない様、皆さんで周囲を警戒しておいて下さい」


 そしてスバルは、3人に周囲の警戒を頼み、浄化の儀式に入る。

 魔法陣を描き、聖水を浸して、浄化魔法を展開して、祈りを捧げる。

 そして祈りの後に瘴気は消え去り、屋敷も穏やかな空気に包まれていった。


「これで浄化作業は完了。もうこの屋敷に幽霊はやって来ません」


「お疲れ様。やっぱり本職の聖職者なだけはあるわね」


「いえいえ、これくらい普通ですよ」


 その時、地震が起きたと思ったら、急に屋敷が崩れ始めた。


「きゃあ!?」


「姉さん!」


「な、何!?」


 そして4人は屋敷の崩壊に巻き込まれたのだった。




 廃屋敷前の近くの茂み

 その中に、黒いローブの男達が潜んでいた。


「何であいつらがここに居たのか知らないが、奴らを始末するチャンスとなった」


「あぁ。例の暗殺に失敗したエミリア王女と、壊滅した支部から脱走した母体用被検体。後者の方は勿体無いが、これで上も機嫌を直してくれれば…」


「それで、一体どうなると言うのだ?」


 声のした方に振り向いた瞬間、頭の理解が追い付く前に男達は斬り伏せられた。


「…何やらきな臭い連中だったな。まぁそれよりも、あそこにいるのは確かエミリア王女だったな。Aランク冒険者があの程度で死ぬ訳がない。上手く身を守っている筈だ。さて、俺もこいつらを衛生兵に引き渡すか」


 そう言って影の主は男達と共に、空間跳躍で飛んで行った。




 廃屋敷の地下の更に地下の空間

 この空間にエミリア達4人は避難していた。


「ふぅ~。あの時スバルさんが精霊を呼んで私達を守ってくれたお陰で、私も余裕が出来て、地属性の魔力で覆った剣で足元を貫き、更に落ちた先を風魔法で身体を浮き上がらせて、崩壊から回避出来たわ」


「そうだね。けど、何で急に屋敷が崩れたんだろう?」


「分からないわ。それよりも、今は早く地上へ脱出しましょう」


 そう言ってエミリアは光魔法で辺りを照らす。

 そして見えてきたのは、石造りの部屋の中だった。


「何なのこれ…?まるで何処かの施設の中みたいな…。」


「そのお陰で、僕達は土の中に埋もれずに済んだみたいだね」


「取り敢えず中を進みましょう。ここが施設だって言うなら、出口だってある筈よ」


 そして4人は、出口を求めて施設の中を進む事にした。




 4人は廊下を歩きながら、目にした扉を1つずつ開けていく。

 倉庫、食堂、飼育部屋等を回って、そして何かの研究室に辿り着いた。


「ここは、何かの研究室か?」


「見たところ、ここも出口とは関係無さそうね。…ん?」


 そしてエミリアは机に置かれている研究レポートを目にする。


「何かの研究資料かしら?」


「どれどれ?…これって」


「"異次元間を繋ぐゲート"、"新人類の開発"、"龍脈とマナのコントロール"、"精霊や幽霊との交信"、"魔族領への侵略と隷属の方法"。…何これ?とんでもない内容が書かれているんだけど!?」


「えぇ、恐らくこれは、現存する人類の王族だけでなく、勇者の血族や魔族に代わって、この世界を支配しようとする為の研究だわ」


「だとすると、かなり不味い内容だよ。早くこれを王城に知らせないと…!」


 その時、何かの足音が聞こえ、エミリアは急いで扉を閉め、静かにする様促す。


「おい、確か大きな音が聞こえたのはこの先だったな!?」


「急げ!侵入者だったら、早く始末しないと俺らどやされるぞ!」


 そうして通り過ぎて行った男達に目をやると、その姿はエミリアとスバルにとって覚えのある物だった。


「っ!?黒いローブに、天使の翼と光輪と十字架のエンブレム…!」


「確かあれって、この前の交流会でゼシカ王女が捕らえた…!?」


 そしてエミリアも、カイトとハルトマリーの顔を近づけさせ、小声で言う。


「あれは、前に城でユフィを誘拐しようとした奴らよ」


「まさか此処が、そいつらと繋がっていたなんて…!?」


「取り敢えず、これらの資料を持ち帰って、お兄様達にも見せましょう」


 そしてエミリアも、冒険者の必需品の1つ、マジックバックの中に資料を入れていく。

 マジックバックは、空間魔法によって中の空間が拡張されている為、見た目以上に入る。

 そしてエミリアのはAランクに見合った最高ランクの物だ。

 スバルが1人憎悪を見せている事に、3人は気付いて無かった。




 それから4人は、職員の存在に気を付けつつ、施設内を進んで行く。

 そうして進んで行った先で、大広間にやって来た。


「随分と広い所に出たね」


「恐らく此処は、集会場か演習場辺りでしょうね」


「あ、あれ見て!階段があるわ!」


「よし、このまま外へ…!」


「…っ!危ない!」


 その時、エミリアがスバルに向けて飛んできた火球を光の壁で防ぐと、暗がりからリーダーらしき男が現れる。


「出入口から入った訳じゃないなら、まず出口を探そうと動く筈だと読んで、此処で張った甲斐がありました」


「貴方はあのローブ達のリーダーかしら?」


「いえいえ、私は数ある支部の中から、此処の所長を任されている者です。しかし侵入者の正体が、5年前暗殺した筈なのに何故か生きていたエミリア王女と、別の支部から所員を皆殺しにした上で脱走した母体用被検体だったとは」


「…っ!?確か前に姉さんから聞いた…!こいつらが関係していたなんて!」


「それよりも、スバルさんがこいつらの被検体?どういう事なの?」


「此処でエミリア王女を殺し、被検体を捕らえれば、上も満足して頂ける!これで計画の修正がなされる事となる!フハハハハハ!」


「…そんな事の為に…」


「あぁん?」


「そんな事の為に、私達姉弟は1つにさせられ、私の村の人達は殺されたの!?」


「あぁ、今の世界を終わらせ、新しい世界を迎えるのに必要な犠牲だったさ」


 その言葉を皮切りに、スバルは極光魔法を放ち、男もそれを防ぐ。


「許さない!私が絶対、お前らを倒す!」


「良いだろう。後で貴様の事もたっぷり躾けてやる」


 そして男が指を鳴らすと、強い風が巻き起こり、上から巨大な影が降りてくる。


「あれは、グリフォン!?」


「この支部で飼育されている大型魔物だ。幾らAランクとは言え、こいつの相手は手こずるだろう。」


 グリフォンが風を巻き起こしたと同時に、エミリアも防壁を出して防御。

 グリフォンが飛び上がると羽根を飛ばして攻撃、全員散って回避する。

 エミリアも雷魔法を飛ばすが、グリフォンは回避しながらエミリアに接近、かぎ爪を立てて振り下ろし、エミリアは剣で防ぐ。

 ハルトマリーが影から触手を生やすが、グリフォンは直ぐに飛んで回避し、着地。

 カイトが跳んでグリフォンの背中を突き刺すが、グリフォンは暴れて振り落とす。

 スバルが精霊を呼んで包囲し、魔法を放つが、グリフォンは飛んで回避、そのまま羽根を飛ばして、衝撃でスバルを吹っ飛ばす。


「くっ…!流石グリフォン!相当強い!」


「この大広間も、大型の飛行魔物の活動を想定した造りだったのか…」


「仕方ない…!私が飛行魔法を使って、奴と空中戦を試みるから、皆は援護を!」


 そう言ってエミリアは飛び上がり、グリフォンを斬り付けるが躱される。

 グリフォンが爪を立てたのをエミリアは剣で防ぎ、後退される。

 そして動きが止まった隙にスバルが精霊と共に拘束、そして地に落とされる。

 そこをハルトマリーが自分の影から触手を出して伸ばし、カイトも接近。

 そのまま攻撃が届こうとした瞬間、グリフォンが拘束を引きちぎり、翼をはためかせ、周囲を吹き飛ばして空中へ飛び上がる。


「フハハハハハ!どうだ!流石の貴様らも成す術は無い!大人しく負ける運命を受け入れろ!」


「くそぉ…。皆の仇の1人がそこにいるのに…」


「いや、運命とは、己の力で抗い続け、その先の未来を切り開く物だ」


 誰かの声が聞こえた途端、階段から何かが飛び出し、グリフォンを斬り付ける。

 グリフォンが地に落ちたと同時に、皆が上に目をやると、そこに1人の男が飛んでいた。

 身長180cmで漆黒の黒い髪、黒いロングコートで夜空を思わせる剣を持つ青年だった。


「何者だ貴様!?どうやって此処に入った!?」


「なぁに、お前の部下らしき奴らのいた場所の周辺を探ったら、隠し扉を見つけてな。何かと思って中に入って見たら、ビンゴだったって訳だ。おっと、俺が何者かだったな。俺の名はアラタ・ホシミヤ。勇者の血族だ。」


「勇者の血族だと!?」


「そう、俺は勇者の宗家の三男だ」


 そこにグリフォンが起き上がり、アラタを最優先排除対象と更新、そのまま羽根を飛ばす。

 その途端、アラタが高速で羽根を躱し、雷の矢で反撃、グリフォンも悲鳴を上げる。


「何て魔法の展開速度!?俺よりも上手い魔力コントロール!?」


 アラタも地上に降りて、グリフォンの足元から火柱を出して焼き付け、光の鎖で拘束する。


「そう言えばこの魔力、まさか彼、私と同じ全属性タイプ!?…はっ!思い出した!確か初代勇者は、剣聖に相応しい剣術と、全ての属性の魔法の力で戦場を駆け抜けたと言う話!勇者の血族は、今もその魔法適正と剣の才能を受け継いでいると言う話もある!」


 そしてアラタは、一瞬の間にグリフォンの首を斬り落とし、胴体から噴き出す血が止み、そのまま首が落ちる音が響き、胴体が倒れた。


「馬鹿な!?この支部自慢のグリフォンがこんなあっさり!?」


「グリフォンならAランク相手でも問題無いと思っていた様だが、残念だったな。俺はSランク冒険者だ。グリフォン程度、どうと言う事は無い」


「Sランク!?世界規模でも2桁しか存在しないと言う超越レベル冒険者!?」


「さて、残るはお前だ」


「ぐっ…!」


 男が壁に手をやると、触った部分がスライド、中にあったスイッチが押されると、警報と共に部屋が赤く光る。


「今し方、この施設の自爆スイッチを押した!事前に登録されている職員は全員外へ転送される!登録されていない貴様らは自分達の足で外に出るしかないと言う事だ!まぁ、間に合えばの話だがな!」


 その言葉を最後に、男は姿を消した。


「不味い!僕達も早く外へ!」


「おい、そこのシスター。確かお前、精霊魔法が使えたな?それで全員の身を守れ」


「えっ?あっ、はい!」


 スバルが精霊に防壁を出させると、アラタは水のロープを出して全員を捕まえ、そのまま上へ極光を放って天井に穴を開け、4人を引っ張って飛び、そのまま外へ出る。

 そして5人が着地したと同時に、施設も爆破された。


「た、助かった~」


「一時はどうなるかと思った…」




 そして森の木々の深い場所

 エミリアはハルトマリーに頼んで結界を出して貰った。


「さて、スバルさん、さっきの男が言ってた被検体って、どういう事かしら?」


「それを言うなら貴方もです、エミリア様。5年前、私の時と同じ時期に奴らに暗殺された筈の貴方が、何故生きてるのです?」


「…今から見せる物は、誰にも言っちゃ駄目よ」


 そう言ってエミリアは仮面を取って素顔を見せた。


「俺の本当の名前はスレイ・ワーグナー。剣の名家ワーグナー家の次男にして、カイトの実の兄だ」


「男…!?まさか!」


「あぁ、察しの通り本物のエミリアは、その時期に死んでいる。そこら辺もちゃんと話す」


 そしてスバルとスレイは、お互いの身に起こった事を話し合った。


「…と言う訳で、私はお姉ちゃんと妹、そして故郷の皆の仇を取る為に、組織が目に掛けていたエミリア王女を利用しようとした。馬鹿みたいだよね?結局自分の事しか考えてなかった上に、奴らの力を見誤って返り討ち。こんなんじゃ聖職者失格だよ。お姉ちゃんにも顔向け出来ない」


「そんな事無いぞ。…俺だって、自分勝手な理由でエミリアの身体と顔と立場を手に入れた。あの家から逃げたかったからってのもあったが、お姫様として堂々とドレスを着れるのは心躍った。家族も暖かくて心休まった。王族としての生活は充実感も仕事のやりがいもあった。伸び悩んでた力も更に伸びる様になった。例え偽物であっても、本物のお姫様になれて本当に良かったって思えてるんだ。だからスバル、君もお姉さんと妹さん、そして村の人達が残してくれた想いを胸に、お姉さんの分まで本物の聖職者を目指していこう」


「…うん、そうだね。えっと…もし良かったらだけど、私、本当の意味で貴方達の仲間になりたい。だから今度は、キチンと復讐心をさらけ出した上で、パーティーに入れてくれる?」


「勿論だ。よろしくな、スバル!」


「こちらこそよろしくね、スレイ!」


 そして2人は握手を交わした。


「俺も手を貸す。俺も勇者の血を引く者として、あの様な輩は見過ごせないからな。必要な時が来れば、何時でも呼ぶと良い」


「あぁ、よろしく頼むよ、アラタさん」


「ふふっ、確かに俺は今20歳だが、気軽にアラタと呼んで良いからな。…それとスレイ、先程のスバルへ説き伏せた時のお前、やっぱり王族としての素質はちゃんとあるよ」


「そう言われると嬉しいな」


「それはそうと、先程から姿勢や身体の動かし方に変化が全然無いが、まさかお姫様としての姿勢や身体の動かし方、仕草や振る舞い等が完全に染み付いてしまっているのか?」


「それ言わないでくれよ、気にしてるんだから!」


 そして結界内に笑い声が響いた。




 森の入り口


「それで、これからどうする?」


「幸い奴らの研究レポートは手に入れたから、これをアルベルトお兄様とアルフォードお兄様に見せておくわ。折角だから、男女両方の寮に外泊申請して、明日まで城にお邪魔しましょう」


「俺もシェーラ先生を呼んでおくわ。あの人もその件手伝ってたし」


「それもそうか。エミリアの正体を知ってる者同士でしか話し合えん事だからな」


「えぇ。あっ、そうだアラタ、折角だから私の両親にも挨拶しておきなさいよ。勇者の血族なんて、あの2人もきっと感動するわよ。勇者物語のファンだからね」


「ん、そうか?まぁそこまで言うなら」


「国王様かぁ。私元々田舎出身だから緊張しちゃうなぁ…」


「そんなに身構えなくても良いわよ。そこら辺気にしない人達だし」


「まぁ兎に角、早いに越した事は無い。直ぐに準備を済ませる。」


 そして一同は、アルテミシア城へ向かう事になった。

勇者の血族も出ました。

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