第11話
読み返す事で、得意不得意がはっきりする。
セフィアスタジアム、第5競技「シールドシューター」
「では、シールドシューターのルール説明と参ります!目の前に設置された50m×50mの鉄板を、遠くまで飛ばして貰います!この重量10tの鉄板を飛ばすのには、かなりのパワーを必要とします!物理だろうと魔法だろうと、生半可なパワーでは飛ばないぞ!では、選手の入場です!」
そして、トレーナーウェアとなった選手達が入場する。
「こちらも決められた順番で鉄板を飛ばして貰います!」
そして各々、鉄板を飛ばしていく。
セフィア、メルティチームは現在30~50mである。
そしてヴィオラも、火と土の混合魔法による拳で42m飛ばす。
次にブレジアンチーム3年、黒髪刈り上げの筋肉質の青年、ガリオ・ヴォルトン。
土属性での鋼鉄化した拳で鉄板を殴り、55mを出す。
また順番が流れてハルトマリー、凝縮した闇魔法弾で52mを出す。
次にラウディー、水魔法で出した無数の水鏡を展開、そこから更に光魔法のレーザーを集中させて発射、56mを出す。
最後にフィルビアチーム3年、灰色の髪の眼鏡の青年、ラズール・リオルト。
火・風・土の混合魔法による火山弾で飛ばし、60mを出す。
「これで全員終了!トップ3は3位ガリオ、2位ラウディー、1位ラズールだ!気になる総合成績は、5位メルティチーム、4位セフィアチーム、3位アルテミシアチーム、2位ブレジアンチーム、1位フィルビアチームだ!」
観客席の歓声を背に、ラウディー、ガリオ、ラズールは向き合う。
「3年間、お互いいい勝負だった」
「そうだな。次があるとすれば、社会人としての枠だろう」
「卒業したら、それぞれどういう仕事をやってるか分からんが、確かに期待したいな。それじゃあ、先ずは進路と就職に力を入れるのを最優先にしよう」
第6競技「ウォールクライム」
「では、ウォールクライムのルール説明と参ります!高さ30mの壁を、飛び出している岩場を利用して登って貰います!登りきるまでに掛かったタイムが早い程、順位も上がっていきます!身体にロープは括り付けられますが、途中で空中に放り出されたら失格!しかもどれだけタイムを縮められるかは、体力と岩場の選択次第!では、選手の入場です!」
そして、トレーナーウェアとなった選手達が、設けられた壁の前に立つ。
その中にフリードの姿もあった。
「それでは、決められた順番で4人ずつ登って貰います!」
そして4人ずつ壁を登り始める。
セフィア、ブレジアンチームが良いスタートダッシュを見せていく。
メルティ、フィルビアチームから数人リタイアが出て来る事に。
そして、シード、カヤが持ち前の身体能力で壁を最短距離で10分以内に登り切る。
レクトとドゥーテも、冷静に頭を働かせて無駄なく登り、8分以内で納める。
そしてフリードの番が来ると、彼は鮮やかな手つきで壁を登り、上手く体力を温存、距離のある岩場も跳んで登り、タイムも7分30秒が出た。
「これで全員終了!アルテミシア、ブレジアン、セフィアは全員登り切りました!気になる総合成績は、同列4位メルティ、フィルビアチーム、3位ブレジアンチーム、2位アルテミシアチーム、1位セフィアチームだ!」
観客席からの歓声に選手達も応える。
そして間も無く次の競技が始まる頃合い。
控室で次の競技に備えているアルテミシアチームに、アルベルトとユフィが訪れる。
「お姉様!頑張って下さい!」
「ええ、私も負けるつもりは無いわ」
「君達、俺からも勝利を掴み取る様お願いする」
「任せて下さいよ、アルベルト様!俺達が勝って見せます!」
「俺も仕事をこなすだけだ」
「あたしもここまで言われちゃ、引き下がれないな」
「それじゃ、僕達も行きましょう」
第7競技「シティーズスクワット」
「では、シティーズスクワットのルール説明と参ります!こちらで用意された空の市街地に、各チームランダムなポイントに転送されます!そしたら各チームで生き残りを賭けた市街戦を行って貰います!ターゲットスクランブル同様、致死量のダメージを肩代わりするリングと、1人用転移クリスタルが各自配布され、リングを割った時点でリタイア!制限時間内に1人でも多く生き残ってたチームが優勝です!では、選手の入場です!」
そして、冒険者衣装となった選手達が入場する。
その中にゼシカ、デューク、ゼイン、レシアンの姿があった。
「では、各チームの転送が開始されます!」
そして各々市街地へ転送される。
アルテミシアチームの転送先は、館の中であった。
「制限時間は60分!それでは、始め!」
アルテミシアチームは先ず、作戦の立案から始める。
「先ず索敵についてだが、エミリアが索敵魔法で半径50m以内を検知、ウォルが持ち前の耳で目視で確認出来ない所をカバー、これで行こう」
「ゼイン王子とレシアンについては、昨日のターゲットスクランブルで戦闘スタイルは分かっている。他にも確認が取れてたのもチラホラ居た」
「私とカイトもゼシカ王女が氷魔法を使ってる所は見ましたが、恐らくあれは軽いジャブ。まだ力を隠していた筈ですし、従者のデュークもその実態を見せてません」
「メルティとセフィアだって戦闘メンバーが出場している。こいつらも油断せずに、アタシらの事も狙ってくる筈だ」
「僕達の方も、後手に回ると不利になりかねませんよ」
「仕方ないだろう。俺達もここを出るぞ。エミリア、索敵だけでなくトラップの確認を怠るな」
「はい」
そう言って、アルテミシアチームは屋敷を出る。
一方、地下水道
メルティチームはひたすら駆け回っていた。
「ここなら他の奴らの目を盗んで逃げられる。このまま適当な場所まで…」
その時、一筋の何かが光ったと思ったら1人の首が飛び、リングが割れた事で首も戻り、気を失ったまま転移してリタイア。
「これは糸!?しまった!ブレジアンの奴らか!一旦外へ!」
そして一同は手前の梯子で外へ出るが、その間にまた1人リタイア。
そのままメルティチームは街の方へ、糸の主のレシアンもゼインの元へ。
「メルティチームの内2人、奇襲成功しました」
「よし、俺達も別のポイントへ移るぞ」
一方、裏通り
アルテミシアチームが隊列を組んで歩いていた。
「エミリア、索敵の方は?」
「…2時10mに1人、5時上方向20mに1人、すぐそこ挟む様に1人ずつ、そこの木箱の中に1人」
「了解…」
そして木箱の中に隠れていたセフィアチームの1人が出て来て魔法を放つが、それをアイクが防ぎ、カイトが素早く斬り捨てる。
両側から降って来た2人も剣を振り下ろすが、それを全員跳躍で躱し、ベリゴが一気に距離を詰めて一刺し、そしてもう1人も一太刀浴びせる。
狙撃手の方も、弓矢を放つが、エミリアが防壁で防御、そのまま風の矢で撃ち返す。
残った司令塔も、ウォルが壁を蹴って追い詰め、そのまま空中から一刀両断。
そしてセフィアチームは全員リタイアとなった。
「…周囲に敵影無し。この一帯の鎮圧は完了しました」
「よし、他の連中に気付かれる前に、急いでこの場を離れるぞ」
そしてアルテミシアチームも、急いでその場を後にする。
一方、大通り
ゼシカの目の前にローブの男達を内包した巨大な氷柱が立っていた。
「妙な魔力反応があったので辿ってみれば、まさか警備から報告があった者達だったとは」
そこにデュークが駆け付ける。
「ゼシカ様、こちらもメルティチームの生き残りを全員退場させました」
「ご苦労様。こちらも生命維持用の魔法を掛けたら、合流します。…さて、3か国の王族チームの3つ巴と参りましょうか」
そして巨大建造物内
アルテミシアチームはこの建物内に身を潜めていた。
「エミリア、今この建物の中に敵はどれ位居る?」
「如何やら全員集まってバラバラに散っている模様。一番近いのは…」
その時、ウォルが何かの音を拾う。
「エミリア!」
そしてウォルはエミリアを突き飛ばして剣を構え、糸を巻き取る。
「糸!?レシアンか!?」
「悪い!アタシは向こう行って来るから、皆は他の奴らを!」
そう言ってウォルは糸の元へ駆け出す。
その途端、ブレジアンチームが顔を出す。
「レーダー役のエミリア王女を先に退場させたかったが、耳のウォルを引き離すのには成功した」
「ゼイン王子…!」
「フィルビア、お前らも出て来たらどうだ?」
ゼインがそう言うと、更に後方からフィルビアチームが出て来る。
「あらあら、気付かれちゃいましたか」
「フィルビアまで…!一体どうすれば…!?」
その時、エミリアが3人に耳打ちをする。
そしてエミリアとカイトがゼシカとデュークの元へ駆け、真下から魔法砲撃で4人は上の階へ、アイクはゼインの元へ駆け、そのままパワーを活かして2人は下の階へ。
「さぁて、俺1人でこの場をかき乱してやりますか」
ウォルVSレシアン
レシアンは周囲に糸の結界を張っていた。
「やっぱりこの糸は合金製。バッサリ斬る事が出来ねぇ」
その時、レシアンの周囲の糸が巨大な拳の形に固まり振り下ろされる。
ウォルも後ろへ跳んで躱すが、直ぐに陰に移動したレシアンが糸を首に巻き付ける。
「これにて1人退場…」
その途端、ウォルが頭を後ろに振り回す事で、レシアンをヘッドバットで怯ませる。
その隙にウォルは緩んだ糸から脱出し、距離を取る。
「この野郎!お返しだ!」
ウォルはすぐ駆け出し、剣を振るうが、これも糸の盾で防がれる。
そこから直ぐに糸が剣に絡み、綱引き状態になる。
「だったら!」
そしてウォルも力いっぱい引いてレシアンを引き寄せ、その腹に蹴りを入れる。
その後、ウォルはレシアンの頭上へ跳躍、剣を振り被る態勢になる。
その態勢の隙にレシアンは糸を飛ばすが、ウォルが糸を掴み取る。
「そう来ると思ったぜ!これでお前も防御も回避も出来ねぇ!」
そのままウォルは糸を経由してレシアンに近付き、剣を突き刺す。
そしてレシアンのリングが割れ、そのままリタイアとなった。
「ふぅ~、疲れた。ちょっと休ませて貰うわ」
1人残ったベリゴは、両チームの間に立つ事で、お互いの攻撃を誘発、対応に遅れた人数の対応で済ませていた。
「これなら俺でも!」
そしてブレジアンの1人をカウンターヒットで斬り、フィルビアの1人をすれ違い様に斬り捨てリタイアさせ、削り合った末に残った人間も一気にリタイアさせる。
「悪く思うなよ。俺だって生き残るのに必死だったんだ。けど、やっぱ1人で大勢相手するのはきつかったぜ。ちょっと休むわ」
アイクVSゼイン
お互いで剣をぶつけ合っていた。
「それぞれの3年間の成果、今ここで確かめ合おう!」
「あぁ、望むところだ!」
アイクが大剣でゼインを大きく吹き飛ばし、それを追い掛ける。
そしてアイクが大剣を振り下ろすが、ゼインはそれを受け流し、腕を掴んで回し蹴りを入れる。
アイクの身体が転がった末に止まった所を、ゼインは剣を振り上げるが、アイクはそれを躱す。
更にアイクは地面を抉って土煙を出し、そしてゼインは横からやって来た剣を弾く。
(剣だけ!?奴は何処に!?)
その時、ゼインの懐に入って来たアイクがアッパーを繰り出し、怯んだ所を殴り飛ばす。
「やられたよ。まさか剣を囮にするとは」
「別に拘りを持ってる訳じゃないからな」
剣を持ったアイクは駆け出し、そのまま振り下ろすが、ゼインの剣が迫ってるのに気づき、身を捻って剣を蹴り上げ、そのままゼインの腹に剣をねじ込むが、ゼインも歯を食いしばり、一気に剣を振り下ろしてアイクを斬る。
そして2人のリングは割れ、両者共にリタイアとなった。
エミリア&カイトVSゼシカ&デューク
それぞれの間に緊張の空気が漂っていた。
「まさか、分散したくらいで何とかなるとでも?」
「あの場合、これが最善手だっただけです」
「それ程までに私達を評価しているって事ね。光栄だわ」
そしてゼシカは巨大な氷の槍を作って飛ばし、エミリアとカイトはそれを避ける。
然も着弾点は氷結していた。
(当たったら危ない!身動きが取れなくなる!)
そこにデュークが斬り掛かり、カイトはそれを防ぐ。
そこをゼシカがアイススケートの様に滑り、後ろから氷の剣で斬ろうとしたのをエミリアがカイトを抱えて跳ぶ事で回避。
そしてゼシカも周囲に霧を出す事で視界を制限させる。
エミリアとカイトが背中合わせになるが、ゼシカがスケートで駆けながら斬り付け、2人が数度防いだ所で霧が晴れ、デュークが風の斬撃を飛ばす。
エミリアが障壁で防ぐが、2人は大きく飛ばされてしまう。
「あの2人、やっぱり強い!」
「ゼシカ王女と専属騎士デューク、かなりの強敵だわ。どうにかして勝つ方法は…」
「さて、次はこう言うのは如何でしょうか?」
そう言うとゼシカは、幾つもの氷の刃を作り、それを自在に飛ばす。
エミリアとカイトがそれらを避け、生じた隙をデュークが斬り付ける。
それらを繰り返される事でエミリアとカイトは疲労していく。
「不味い。このままじゃ2人共やられる。何か手を打たないと」
「そうね。あの氷の刃に捕まってる限りは…氷?そうだ!」
そしてゼシカが2人を氷の刃で包囲し、そのまま一気に串刺しにしようとする。
その時、エミリアが炎の壁を作り、そして氷の刃を溶かし、周囲も熱波で覆い尽くす。
「しまった!この室温では氷は溶け易くなる!」
そしてエミリアも頭上に光球を出して、2人の影から触手を出して拘束。
そこからカイトがデュークを斬り伏せ、デュークはリタイア。
更にエミリアの光の剣の突きでゼシカは敗れ、ゼシカはリタイアとなった。
そしてフィールドがアルテミシアチームだけとなった事で終了のブザーが鳴り、全員転移する。
「終了!シティーズスクワットを制したのはアルテミシアチームだ!総合成績の方は、5位セフィアチーム、4位メルティチーム、3位フィルビアチーム、2位ブレジアンチーム、1位アルテミシアチームだ!」
観客席の声援を背後に、アルテミシアチームはお互いの対戦相手と向き合っていた。
「いい勝負だったぜ!」
「ふん…」
「次は相打ちにはならんぞ、アイク」
「望むところだ」
「エミリア王女、貴方もお強いんですね」
「そう言うゼシカ王女達だって、相当強かったですよ」
「貴方だって、Aランク冒険者をやってるだけはありました。流石、陽光の姫君。交流会に参加出来るのもあと1回。だから次は私達も勝つ気で行きます」
「私だって、それは同じです」
そう言ってエミリアとゼシカは握手を交わした。
第8競技「ダイビングターゲット」
「では、ダイビングターゲットのルール説明と参ります!水深50mの水槽の中に設置された的を、水中を動きながら破壊して参ります!当然、水中での活動となる為、水の抵抗等を頭に入れた攻撃方法、水中で息を止めていられる限界、泳ぎのセンスや機動力が問われます!では、選手の入場です!」
そして、ダイビングウェアとなった選手達が入場する。
「では、事前に決められた順番に潜って貰います!それでは、始め!」
そして各々、水中に潜っては息が続く限り、的を破壊していった。
現在のところ、20~35点は出ている。
そしてミーシア、最小限の魔力弾で的を攻撃、そして28点を出す。
次にフォリア、範囲系の魔力弾で連鎖的に的を破壊、そして32点を出す。
メルティチーム2年、外側が黒、内側が青のロングヘアーの少女、クロエ・シュティーア。
水魔法で作った魚型追尾弾で的を攻撃、そして38点を出す。
それから流れてロイド、光の帯を出して操り、的を破壊、35点を出す。
続いてリリアン、1度で多くの的を破壊出来るコースを計算、そして魔力の帯を射出、42点を出す。
最後にセフィアチーム3年、茶髪を纏めた長身女性、アイビー・ユグレスト。
水中を自在に泳ぎ、すれ違い様に水の刃で的を破壊、45点を出す。
「これで全員終了!トップ3は、3位クロエ、2位リリアン、1位アイビーだ!気になる総合成績は、5位フィルビアチーム、4位メルティチーム、3位アルテミシアチーム、2位ブレジアンチーム、1位セフィアチームだ!」
観客席の声援を背後に、フォリアとクロエ、リリアンとアイビーで向き合う。
「もう1年、うちともう1戦頼みます」
「えぇ、出来ればその時にもう1度」
「残念ね。今年こそは勝てると思ったのに」
「だったら次は社会人枠でリベンジに来なさい。ちゃんと待っててあげるから」
「考えておくわ」
夕方、スタジアム外
ゼシカはローブの男達をアルベルトに引き渡していた。
「捕縛のご協力、感謝致しますゼシカ王女」
「いえいえ、私も折角の勝負の場に水を差す様な者が許せなかっただけですので。では、私はこれで」
そう言ってゼシカが去ると、入れ替わりにシェーラが現れた。
「こいつらの見張りを頼みます。くれぐれも自害や口封じの暗殺をさせない様に」
「心得ているわ」
夜、パーティー会場
外のテーブルにて、エミリア、カイト、ユフィ、アルベルト、アルフォードが共に食事をしていた。
「お姉様、ゼシカ王女との勝負、私もハラハラしました!」
「あの場から見事勝利を納めるとは、流石我が妹だ」
「ありがとうございます、アルベルトお兄様」
「やっぱり姉さんは凄いや。Aランクに辿り着いただけあるよ」
「そうだな。俺も兄として鼻が高い」
「そう言うカイトだって、ちゃんと私の動きに着いて来られたじゃない」
離れた場所でも、ハルトマリーとシェーラもテーブルを挟んでいた。
「貴方達、魔法の使い方も上達して来たわね。流石我が弟子達」
「いえいえ、対戦した選手達と比べると、まだまだですよ。私も他の連中に追いつきたいぜ」
「そう。なら精進しなさい。大丈夫、貴方達なら出来る」
エミリア達の方も、話を終える所だった。
「さてと。姉さん、僕達も明日の競技で良い成績を取ろうね」
「えぇ。それじゃあ、私もアルテミシア王国第1王女として、勝ちを狙って見せましょうか」
2日目、終了。