7 ヒメコの異世界転移 その1
同時並行でヒメコ視点が書けたらなー と思っております。
「みなさま、ようこそお越しいただけました。ここはセタカの国、あなたがたの世界とは異なる所」
目を開けると不思議な光景が広がる。
知らない部屋に見慣れない服をまとう人達。
ヒメコの体は不安で固まった。
今日の放課後は彼と一緒に学校から帰った。
学年で一番かっこいいナオト君と一緒に駅ビルを回ってクレープを買う。
背の高い彼と自分とクレープをうまくフレームに入れてSNSにアップする。
いつもの幸せな時間、なはずだった。
「お前ってさ中身何にもないよな」
ナオト君がつぶやく。
「え、何」
理解が追いつかなくて聞き返すと、「別れたい」だって。
信じられない。
毎日髪の毛をしっかりセットしたり、甘い物をがまんしたり洋服にバイト代つぎ込んでいたのは
(誰のためだと思っていたの)
「じゃ、バイバイ」
ぼうぜんとするヒメコを置いて、そいつは改札を通って見えなくなった。
頭が真っ白になったヒメコが気づいた時にはいつものホームに立っていた。
(いつもだったら見送ってくれるのに)
反対側のホームには誰もいない。ポロポロと涙が出ちゃう。
誰にも見られないようにうつむく。まだ家には帰りたくない。
(このままどこかに行けないかな)
取り合えず来た電車に乗った。席は空いていたから、座って目を閉じていた。
*
(その結果がこれ?)
そこまで家出する予定じゃなかったのに。
ヒメコは周りをそっとうかがう。
オペラの衣装みたいな服を着たおじさんが両手を広げ声を上げている。たぶん偉い人。
「我らは今、危機におちいっており、魔法であなた方を呼び出したのでございます」
ヒメコは精一杯勇気を出して声を上げた。
「元の場所に帰して」
また泣きそうになっちゃった。みんなもザワザワしてくる。
「今、我が国は未曽有の危機に襲われており、みなさんの協力が必要なのです」
若い男の人が口を開く。長髪を後ろでたばねた彼にヒメコの瞳は吸い寄せられた。
(きれいな人。ナオト君なんか比較にもならないよ。外国のモデルさんみたい)
「どうせふざけてるだけなんだろ!」
さわぐ人もいたけど、みんなは広間に連れて行かれる。
「あぶないですよ」
階段でつまづきかけたヒメコにサッと手が差しのべられた。あのきれいな男の人だ。
ヒメコの心臓はドキドキした。
異世界に来たかもって不安が一瞬消える。
(あんな自然に手をにぎるなんて、ヤバいって)