37 握手
材木がかなり切り出せたから柵を作る。
鉄の釘は高価だから木釘で止める。
兵士が一人で持ち運べる大きさにし、積み重ねる。
みんな作業に手馴れてきた。
道が200メートルくらい切り開かれたあたりで、柵の組み立てを試してみた。
ロープでグルグル巻きつける。
兵士隊の数人が今夜はこの中で野営するのだ。
水樽や食料や麦酒が運ばれた。
「あの、もしかしたら野獣に襲われて、今夜でお終いかもしれないから」
センカが柵を確認していると、蒼白な顔の兵士に声をかけられた。
「て、手を握っても良いでしょうか!」
センカは一瞬固まった。
(え、私?)
恐る恐る手を出すとがっしりとした手で握手され、センカの頭はパニックになる。
「抜け駆けはずるい、俺もお願いしまっす!」
他の兵士まで向かってくる。
と、言うか女性陣はみんな同じことを言われていた。
「センカさん、自分が野営する時もお願いするっす」
基地にもどる兵にまで頼まれる。
(なにこれ、モブハーレム?)
異世界に来たらモブ君たちからモテモテになりました、か?
異性に好意をストレートにぶつけられるなんて生まれて初めてだ。
城に戻っても、まだ気持ちがフワフワしていた。
「何かございましたか?」
広間でイケメンに不審がられた。
ルーギルは今日は訓練でずっと城にいたから。
「う~ん、大したことじゃないんだけど、野営の兵から握手頼まれてさ」
「日本だとないから、びっくりしたわ」
女性陣からの報告に、眉をひそめるルーギル。
「みだりに女性に触れるなど‥ 後で叱っておかなければ。みなさんも断るべきです。男ばかりの環境では気をつけていただきたい」
「別に握手くらいはいいんじゃい? ね、ヒメコ」
センカの一言にルーギルの表情がさらにこわばる。
「ヒメコ嬢も、手を握られたのですか?」
「もちろんだよ! ぶっちゃけヒメコが一番人気だよね!」
わざと明るく教えてやった。
真っ赤になるヒメコを凝視するルーギル。
「これからは私が同行することにします」
読んだことないけど誰か書いてないかな。モブハーレム。