36 街道を整備
センカ視点に戻ります。
と、言うわけで、センカ達は元街道の視察に向った。
「これを整備するんだ‥」
一目見てゲンナリする。
石畳がかろうじて判別できるが、すき間にはびっしり草が生えているし、両脇はギリギリまで灌木が生えている。
「魔法でスパッとできればいいのに!」
胸元から魔法石を取り出してみる。
「ウインドカッター!」
センカが叫ぶと、風がフワッと起こり手前の雑草がひとひら切れ落ちた。
「この程度なのか‥」
これじゃあきらめて手を動かすしかない。
斧やノコギリ、スコップに草刈り鎌と道具は色々持って来たから、後は頑張るだけ。
センカとヒメコは石畳の間の草をぬき、浮き出た石を戻し、石と石のすき間の土をならす。
そう、今日はヒメコも来ていた。
「交易ができたら、もっと便利になるんでしょう?」
やる気はバッチリ。
だけど正午になった時点で、進めたのは約10メートルくらいだけだ。
道幅は大人二人が手を広げたくらいだから3メートル半くらい。
道と言うより細長い長方形ができた。
まあ雑草と言っても、センカたちの腰の高さ以上に育っている。
これが限界だろう。
木を切る係も同じようなレベル。
石畳から外側はびっしり植物が生え、すき間なんて見えない。
石畳から両腕を広げた分に生えている灌木は全部伐採。
そこから先は間伐作業。幅は石畳と同じくらいで三メートル半。
左右両脇あるので、十数人がかりでも木材を組み立てるまでに達しない。
「あ~ 体痛い!」
センカはうめいた。
こっちに来てからだいぶ鍛えられたセンカの体だが、いつもと違う動きをすれば体は悲鳴を上げる。
「お嬢さん方はお戻りください」
センカとヒメコは早々に帰された。護衛が一人だけ同行する。
兵士たちは夕方になったら、一番近くの前線基地に泊まるらしい。
大変である。
「お疲れ様です」
センカは近くの兵士にニッコリした。
「ん? オレ?」
彼はあわてたようで顔を赤くさせている。
(こっちにはないあいさつだからかな)
ヒメコを見るとやっぱり周りに笑顔とあいさつをふりまいている。
そして青年たちから視線を奪っていた。
「美少女はさすが人気者だね」
隣の護衛さんに話しかけたら困ったように返された。
「あまり女性に慣れていないので」
城に戻ると、もう夕食は終わっている。
厨房で残り物をもらった。
「一日三食食べたいよ」
センカはぼやく。
「そうだよね、お昼ご飯を向こうで食べればもっと作業できるし。こっちには夕方までに帰ればいいんだから」
ヒメコも賛成する。
「お弁当持って行く?」
ニシカワさんが提案してくれた。
筋肉痛がやばかったから一日置いて、センカはまた参加した。
今日は他の召喚組も一緒にじりじり日が照りつける下で草をぬきまくった。
「緩衝地帯も重要だけどさ、道が開発したら、米とか食えるかもって思っちゃってさ」
アダチさんがふざける。
「それ聞いたらみんな来たってわけ」
サクマさんが笑う。
唯一遅れたニシカワさんも、正午にはお弁当を届けてくれる。
一日目よりかなりペースは上がった。