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「ふう」

 部屋に戻るとヒメコがため息をついていた。改めて見ると、どこかやつれている。


「ヒメコ、疲れたなら明日は休みなよ」

 ヒメコの視線は空中をさまよい、目を合わせてくれない。

 センカはそれ以上話しかけられなかった。



 食事時、気をつけて見ていたらヒメコはほとんど食べていなかった。


(お腹痛いのかな)


「ヒメコ、食事は食べないと体に悪いよ、お腹痛いんだったら薬もらってこようか?」

 声をかけたけど、ヒメコの瞳はうつろだ。


 異世界チートの相談をする余裕はなさそう。



「ヒメコ、本当に具合悪そうだよ」

「別に何でもない」

 

 寝室に戻るとヒメコはベッドに入って薄手の毛布を頭からかぶった。

 話をしたくないらしい。


 センカもそれ以上は踏みこめなかった。



 図書室に向かったけれどサクマさんはもういない。夕方まで一人で本と格闘した。

 文字の読み方は覚えているけど知らない言語だ。

 音声化すれば脳内で自動翻訳されるとは言え、おとぎ話を一つ読むだけで精一杯。



 薄暗くなってきたから部屋に戻ると、ヒメコが毛布から顔を出してベッドに腰かけていた。



「さっきはゴメン。色々嫌になって八つ当たりしちゃった。センカが悪い訳じゃないのに」


「うん」

 センカはヒメコの隣に座る。



「もううんざりなの。固いお肉も固いベッドもタライの行水も! シャワーはないしシャンプーはないし化粧水も保湿クリームもないし。アイスクリーム食べたい、お味噌汁飲みたい、お米食べたい!」


 ヒメコの叫びをセンカは黙って聞く。


(確かに欲しい。石鹸はあるけど、あれで洗うと髪も頭皮もゴワゴワするし)

 センカだって同感だ。


「ヒメコ、じゃあ一緒に作ってみない? 元の世界の発明品とか。ほら転生チートとか良く聞くじゃん、私も手伝うから」


 ヒメコの表情は沈んでいる。

「作り方なんて知らないもん‥」


「みんなに相談しようよ。何かは知ってるって」




「植物油があれば手荒れも直せるわよね」

「海藻からシャンプー作るのは知っているんだけど」


 召喚組全員に話をきいてみたけれど、とにかく物資が足りない。


「やっぱりルートの開発が必要だよね。どうやったら魔獣に邪魔されず道の開通ができる? 物資を運べる?」

 オオチ君が頭をかきながらつぶやいている。

 男子だって頭がかゆいのは嫌なのだ。



「秀吉だったら、三日で中国地方から京都に戻ってこれたのになあ」

 私のつぶやきに、タジリさんが反応した。


「秀吉! そうだよ、秀吉だよ、墨俣一夜城(すのまたいちやじょう)!」


 何か聞いたことがある言葉だ。

「スノマタ? 小田原一夜城じゃなくて?」


 豊臣秀吉は小田原を攻める時、敵の戦意をくじくため城を一夜で作ったように見せかけた。

 しかしあれは実際には時間がかかったはず。



「墨俣一夜城だよ。ええ、今の子知らないの? 材木をあらかじめ組み立ててから川で運搬した話!」

 タジリさんが興奮気味に説明する。


 センカも思い出した。

 今では架空の話とされている、との文章を読んだことがある。


「なるほど、安全な地である程度の組み立てを済ませるのですね」

 領主とルーギルが身を乗り出した。


「それいいじゃん! 木材は間伐材があるし、できるんじゃ?」

 


 墨俣一夜城エピソードは昔は秀吉の功績でさんざん取り上げられていましたが、『武功夜話』の信憑性が薄れると共に創作とされ、歴史書から消えて行きました。ゲームやマンガでは今でも時たま出てきます。


 小田原一夜城には以前旅行で行きました!

 山の上の方まで車でいけるので、私でも頂上まで登れました。

 石垣は残っているし海は眺められるし、登山したった感、が味わえるので遠足にお薦めです♪

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