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 食後は城の中をウロウロした。


 エイナルの言葉に従って、他の人を見るのだ。


 城の中には兵士と使用人がたくさんいる。

 今までは服装の違いくらいしか認識していなかったから、一人一人をチェックした。


 行商人が来ているからだろうか、いつもよりみんな楽しそう。

 メイドが兵士に呼び止められて顔を赤くしている、恋人同士なのだろうか。

 何か手渡されている。


(あ、プレゼントを買ったんだ)


 センカも微笑ましい気持ちになった。




 城壁に出るとルーギルがいる。後姿はどこか一点を見つめていた。

 センカが視線の先を確認すると、案の定ヒメコがいる。


「告白しちゃえばいいのに」


 ルーギルはギョッとして振り返った。気配に気がつかないほど気を取られていたのだろう。



「ああ、センカ殿か」

 無理やり笑顔を作っている。


「そ、そうだセンカ殿にこれを」

 ルーギルは小さな袋から中身を出す。


 リボンだった。


「最近髪がのびてきただろう、その、必要かと思って」


「ヒメコには買ったの?」


 受け取る前にセンカは確認する。

 ルーギルは黙った。



「ヒメコにも渡したんならもらってあげる」


 センカはペロッと舌を出してその場を去った。

 



 最近の訓練時、ヒメコはルーギルを見つめては視線をそらす。

 今までも時々はあったけれど、今はどことなく悲しそうに。


(どこをどう見ても両片思いだろ)


 恋愛にうといセンカはどうしたら良いか分からない。


(誰かに相談してみよう)



 厨房に行けばニシカワさんが、図書室に行けばサクマさんがいる。(大体は)

 センカが話しやすいのはサクマさんの方だ。



 北塔の書庫に入ると、古い本の匂いがした。

 

 書棚にそって歩いていると、窓際で本をかかえているサクマさんがいる。


 髪をかき上げる彼女はボーっとしていた。

 肌にも髪にもツヤがない。


「すみません、ちょっといいですか」

 センカは声をかけてヒメコのことを相談する。



「ゴメン、私も分からない」

 サクマさんも苦手なようで謝られてしまった。


「私よりスズカさんの方がくわしいよ、結婚しているそうだし」


 ニシカワスズカさんを推薦されたのでセンカは厨房に向った。




 厨房はいつもより活気にあふれていた。


「隊商が着いたから、いつもより食材が豊富なんですって。明日の食事はいつもよりしょっぱい物が期待できるわ」


 内向的なニシカワさんが今日は嬉しそう。


 ニシカワさんは、ほぼ厨房勤務だ。

 ここの料理人たちは味付けが大ざっぱなので、監修役を受け持ったらしい。


 料理長が彼女に皿をさし出している。



「う~ ん、つまりルーギル君がセンカちゃんに声をかけてくるのは、魔獣と戦うすべを持っているからでしょう」


 皿の中身をペロッとなめてうなずくとニシカワさんは考えてくれた。

 ある意味しょうがないんじゃないかな、と言った後で対処法も出してくれる。


「ヒメコちゃんが、何かこちらの世界にメリットをもたらす存在になれればいいんだけれど」


(なるほど)



 確かに異世界転生の物語では、文明の利器を開発する主人公が多い。

 


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