29 密談
夜。
「‥‥‥眠れない」
ここ三日昼夜逆転生活が続いていて昼寝までした。
センカは全然眠れない!
ヒメコを起こさないように、そっと部屋をぬける。
空には星が瞬いていた。
見晴らしの良い場所を探して歩いていると、人影が見えた。
ルーギルとクアモだ。
センカは嫌な予感がした。
こちらに着てすぐの時と状況が似ている。
「センカ嬢はどうやら見込みがあるようですね」
「ああ。八人いて一人だけなのは残念だが」
「いるだけマシです。それでどうしますか」
やっぱり意味深な会話がされている。
どうするって何を? センカは固唾を飲んだ。
「ああ、センカ嬢には求婚する予定だ。父も知っている」
「妻にめとって助力を求めるのですね。まあ、あなたの見た目なら嫌がる女性も少ないでしょうが」
センカの目は皿のように見開かれた。
(はあ? 妻に、めとる?)
センカは知っている。
こちらに到着直後からずっと、ルーギルが見ているのはヒメコだけだ。
頭に血が上った。
「ふざけるな!」
大声を上げて飛び出した。
「自分を好きでもない男から求婚?」
驚愕する二人にズンズン近づき、ルーギルの襟元をつかむ。
「願い下げに決まっているだろ!」
二人はギョッとセンカを見た。
センカが現れたことより、激怒している方に驚いている。
「そう‥なのか?」
全然分かっていないルーギルをセンカはにらみつけた。
「当たり前でしょう!」
パンっと音が鳴り響く。
一発殴ったセンカはそこから逃げた。
城壁をズンズン歩く。
(ああむしゃくしゃする)
城壁の上から、空を見上げた。
雲間に散らばるキラ星に、荒ぶった気持ちを吸い取ってもらう。
「君の世界では、好きになった二人が結ばれるんだね」
隣にはいつの間にか少年が立っていた。