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前線基地はできる側から兵が詰めだした。
「三日交代制です。どなたか参加されませんか」
ルーギルの問いにセンカは迷いながら手を上げる。
「センカ嬢お一人ですね」
朝の支度をして、センカたちは馬で拠点の一つに向かう。ルーギルも一緒だ。
簡易なログハウスに物資を運びこんだら、夜になるまでしばらく休憩。
みんなで仮眠する。
夕暮れ時に簡素な食事をとったら見回りの開始だ。
今夜は見廻る範囲もせまい。センカは徒歩を希望する。
「臭いに気をつけろ」
ルーギルに先導され、センカもあたりを注意しながら進んだ。
(レーダーみたいな魔法でもあればなぁ)
仲間内に詳しい人いるかなー なんて考えていたセンカだが、不意に腐臭をかぎ取った。
「臭いです」
そっとささやき剣をぬく。
ルーギルたちも立ち止まった。みんなで円陣を組む。
暗闇に赤い点がわずかに見えた。
それと同時に黒いかたまりがセンカの隣りの兵に襲いかかる。
兵士は必死に剣で牙を防いでいた。
一瞬の戸惑いの後、センカは剣を突き出した。
「やぁぁぁ!」
咆哮と共に魔獣の横腹を貫く。
魔獣は崩れ落ちた。
「一匹倒した!」
側の兵士が叫ぶ。
「こっちもだ」
「もういないか?」
「うむ、問題ないな」
今回の襲撃はみんな軽症で防ぎ切ったらしい。
前回と違って、センカにも余裕があった。
その分考えることもできる。
魔物はセンカの知っている動物とは何かが違った。
何と言うか‥ 生き物に見えなかったのだ。
(光っていた割に、目に意思がない?)
人間も動物も、生きていれば目に意思が宿る。意思疎通が全然できないヤモリやカエルでも。
それこそが魔物の定義なのかもしれないとセンカは眉間に力を入れる。
拠点に戻り、食事にする。
「森から魔獣は出て来るんでしょう? だったら森を切り開けば出て来なくなるはずですよね」
「ああ、光を嫌がるからな。だが森を開きすぎると灰色の森も広がる。そしたら結局魔獣が増えるからな」
「どうしたら襲ってこなくなるんだろう」
センカは兵士と話し合ったが結論は出ない。
「とりあえず後二日は当番だ。報告と検証はその後だな」
ルーギルの一言でその場は収まる。
日が昇ったら見回りは終了だ。適当に薪を集め、ゆっくり休む。
三日目にはもうクタクタになっていた。
交代要員を乗せてきた馬車に乗って、城に帰る。
センカは遠慮なく昼寝した。