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先ほど病院から帰還しました。熱すぎて通院が辛いです。
体中が痛い。目を開けるといつもの部屋にいる。
「気がついた?」
ヒメコの声だ。
「あー、あたし生きてるのか」
センカはホッとした。体の痛みはおもに筋肉痛で、ケガは大したことないようだし。
起き上がろうとするのをネミが手助けしてくれる。ヒメコはコップを手渡してくれる。
「大丈夫だよ」
大げさな看病にセンカは苦笑いするけど、ヒメコたちは首をふった。
「魔法で強化してなかったら足を食いちぎられていたって」
えっと驚いて右足を見ると包帯が大げさに巻かれていた。
「訓練はしばらくお休みですよ。ゆっくり横になって下さいね、今お食事を運びますから」
センカはすなおにうなずく。さすがに今日は動けない。
ヒメコはセンカの側を離れなかった。
「退屈でしょ、あたしは寝てればいいから、好きにしなよ」
ヒメコは動かない。
「ここにいちゃダメ?」
小声でささやきかけられてダメとは言えない。
ただ、その様子は普段のヒメコとは少し違う。
「何かあった」
軽く聞いたつもりなのにヒメコの瞳は大きく開かれた。
「何、どうしたの」
今度はもっと強く問いかける。
ヒメコはポツポツ話し出した。
「あのね‥ 昨日の夜に襲ってきた魔物が‥ えっと数が多くて私何もできなくて。町まで逃げる内に何人もケガして‥ それで護衛をしてくれた兵隊さんが一人死んじゃったの」
ヒメコは怖がっていた。
周りで本当に死人が出るとは思わなかったのだろう。
センカは無言で枕に頭を沈める。
ヒメコもそれ以上は何も言わず、ずっとセンカの側に座っていた。
夕飯の時間になればさすがに動けるはず、と言うセンカの予想はハズレた。
背中、お腹、お尻、太もも、ふくらはぎが悲鳴を上げだしたのだ。
「痛い痛い痛い痛い痛い!」
ネミが助けを呼ぶ間、ヒメコが魔法石を押しつける。
「イタイノイタイノトンデイケ」
(何それもしかして痛み止めの魔法? ただの気休めじゃねーか)
しかしプラセボ効果だろうか、腹筋が少し楽になる。
部屋にサクマさんとニシカワさんが飛びこんできた。
「魔法が切れたのね、えっと‥ 消毒剤消毒剤消炎剤消炎剤‥」
「筋肉繊維は修復して、痛みも治まって、ホイミケアルディア」
三人とも口々に呪文を唱える。
そして魔法は確かに効いていた。
三人がかりの呪文がしばらく続くと、全身の痛みが少しずつ引き、さっきと同じくらいまでになる。
(どんだけ痛かったんだよ)
結局夕飯もベッドで食べた。
プラセボ効果、心理的に効果があると思うと偽薬でも効くやつ。
薬と併用するとさらに効き目が高まります。
昨晩、鼻が壊れて薬を飲んでも点鼻薬を使っても収まらなかった鼻粘膜の炎症でしたが、「働く細胞」を思い出しながら「マスト細胞さん、ヒスタミンの放出を抑えて!」と念じたら収まりました。