18 街歩きと疲労
「町に遊びに行っていいですか」
センカはディナーで提案した。楽しみがまるでない生活には耐えられない。
一人で出歩くのは止められたけど、ボディガードがつけばいいらしい。
「明日誰か兵士を回します」
(やったあ)
翌日の訓練後はお待ちかねの町探検。
ガタイのしっかりしたお兄さんが二人付き添ってくれる。
「私も行きたいな」
ヒメコもねだる。
「オレも」「私も」「僕も」
結局みんなで行く事になった。
(もう海外ツアーそのまんまじゃん)
城壁をくぐり広場をぬけると、家々がぎっちり並んでいる。外壁と外壁のすき間がない。
何のにおいか分からないけれど、生活臭が充満している。
通りに面したお店にみんなわらわら近づいた。
「いらっしゃい‥ どちらから来なさった?」
服装が違うからか、ものすごくあやしそうに見てくる。
(うーん鎖国時代に来日したオランダ人の気分)
その店は食料品をあつかっていた。ソーセージに魚の干物や豆など日持ちする物が多い。
冷蔵技術が発達していないからだろう。葉物やカブも少しは置いてあるようだけど。
隣ではパンが売っている。そっちは香ばしい良いにおいだ。
「ここは領主殿が経営されている店なんですよ。町には全部で三か所あります」
兵士さんが自慢気に教えてくれる。
(一般の家にはオーブンが普及していない?)
布屋や道具屋もある。町を歩く人が城の住人とは雰囲気が違うのも面白い。
まあ向こうもこちらをジロジロ見てくるけどね。
全体的な感想はちょっと期待外れ。
店はあっても商品のレパートリーは少ないのだ。魔獣のせいで交易があまりできないらしい。
メインストリートの先の広場に着くとUターン。町探検はそれではおしまいになった。
次の日からはまたいつもの生活。
訓練でへとへとになるまで剣を振り回し、この世界の動植物についてみんなと学ぶ。
センカにとってはキツイ。疲労がたまる一方だ。インドア派には無理なスケジュール。
朝、センカは起き上がれなくなった。
「今日は休ませて」
ネミに頼んで一日寝て過ごした。
次の日、センカの体は動いたが、今度はヒメコがダウン。
「体は大事ですから‥」
渋い顔でルーギルがつぶやく。
とりあえず全員、数日おきに休めるようにはしてもらった。
だけど訓練はどんどん大変になる。鎧を着たままダッシュとか、馬に乗る練習とか。
精神的な疲労だってたまってくる。
「お風呂に入りたい」
「米、米が食いたーい」
「なんで醤油ってここに無いの?」
みんなも質素で単調なここの生活に飽きていた。
勉強に関してはセンカは嫌いではないのですが、みんなと一緒に、が苦手です。