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センカ視点に戻ります。
次の日。筋肉痛が半端ない。センカの全身が痛みにもだえた。
顎まで痛いのは固いパンと肉のせいだろうか。
この日は運動前にちゃんと着替えが用意されていた。
「女性にこんな物はかせるなんて」
ネミはぶつぶつ文句を言っているけど、センカ達は長ズボンにホッとする。
「こっちの服はゴチャゴチャしすぎていて、着心地が悪いんです」
男性陣も同じ格好だった。タイツが嫌なのは伝わったらしい。
訓練場ではみんな気合を入れて剣を振るった。
体は痛いけど筋トレの本を参考に、センカもインナーマッスルに意識をこめる。
昨日のカロリーが筋繊維に変換されるイメージを作ったから、普通のエクササイズより確実に効果はあるはずだ。
ただ‥ 筋肉痛も合わさって昨日よりキツイ。一時間もしないうちにボロボロになった。
「魔力の使い過ぎですね。今日は早めに終わりましょう」
(HPもMPも空っぽって感じ)
兵隊たちは剣や鎧を片付けている。ルーギルも用事があるのかどこかに消えた。
今なら召喚メンバーは全員中庭にいる。
(話すなら今だ)
センカは「ちょっといい」と最初の夜に聞いた話をみんなに伝えた。全滅するかもしれない事、死んで元の世界に帰るのは期待できない事も。
「そう言われてもな」
元リーマンさんは信用してくれない。
「死ななきゃいいんだろ」
マッチョさんは楽観的だ。
センカはイライラした。危機感が全然共有できない。
「とりあえず、直接の戦闘は避けた方がいいんですね」
ヒメコが無難にまとめてしまう。
(そりゃそうなんだけど)
センカはしゃくぜんとしない。みんなは部屋に戻っていくけど、一人でブラブラする事にした。
中庭の城壁にそって歩いた。城門で兵士に止められた。
「これ以上はご遠慮下さい」
外に出るのはあきらめたけど、センカは壁にそった階段を見つける。
(上からなら外が見えるはず)
キツイ段差を乗りこえ、城壁の上に出る。ノコギリ壁のすき間から景色が見えた。
家々がひしめく町は丘の上にあり壁で囲まれている。
(やっぱりお城は高い所にあるんだ)
丘は一方だけが急斜面でギリギリまで壁だ。その壁にそって川が流れている。
低地には畑が広がる。灰色の森は見えないけど、森らしき黒いかたまりが遠くに見える。
(ここはそこまでの前線じゃないのか)
「やあ、また会ったね」
センカの後ろから声がした。
風景はイラストで描きたいけれど難しいですね。