15 ヒメコ 4
正午になると大広間での勉強。
ヒメコは日時計が実際に使われているのを初めて見た。
笑顔がさわやかな男の人が、この世界の植物やケガを治す魔法について教えてくれる。
ゲームだとストーリーが始まってすぐ戦いに出かけるけれど、ここではちゃんと準備ができるみたい。
(私でも戦えるのかな‥)
勉強の後は自由時間。ヒメ子たちは部屋に戻った。もうクタクタ。
「シャワー浴びたい…」
体は汗でベトベト。昨日だってお風呂に入っていない。今日こそ体をきれいにしたかった。
「お風呂ってどこですか?」
ネミさんが水おけを持って来てくれたからヒメコは聞いてみる。
「オフロとは何でしょうか」
(ええええ、この世界ってお風呂ないの!もしかして別の言い方になるのかな)
「汗が気持ち悪くて。体洗いたいんです」
「行水ですか。明日でしたらできますよ」
ヒメコには信じられなかった。体を洗うのは三日に一度だとネミは伝える。
今日はタオルでふくだけで我慢らしい。
「魔法できれいにできないのかなぁ」
石を持って念じるとちょっとさっぱりした。
(これ、すっごい便利。だったら‥)
「魔法でダイエットできればいいのに。代謝が良くなるとか」
ヒメコがつぶやくとセンカもうなずく。
「君天才? だったら筋肉も付くんじゃないか」
「あ、でも肉体改造はやっちゃだめだった」
ヒメコの注意にセンカは少し考えこんでいる。
センカはつぶやいた。
「ん‥ そうだ! 摂取した栄養が、効率よく筋肉になる魔法だったら」
これならただの肉体改造や身体強化ではない。
ヒメコの瞳もキラリと光った。
昼食か夕食?で考えを披露すると、反対はされなかった。
体はクタクタ。まだ日暮れまで時間はあったけど、ベッドに倒れこむ。
中世ヨーロッパに入浴の習慣がないのはキリスト教の影響ですが、一神教を描くことはさすがに無理と断念しました。
なので都に行けば共同浴場もある設定ですが、物語の町ではインフラが破壊されていて風呂は贅沢品です。