14 ヒメコ 3
ヒメコたちのベッドに用意されているのは、かたいマットとゴワゴワの毛布。
眠れないかなって思ったけれど、問題なかったみたい。
「おはようございます」
窓が開けられる。もっと寝ていたかったけどのびをして起き上がる。
起こしてくれたのはママじゃなくて知らない女の人。
「お二人の部屋をお世話します、ネミです」
そうだここは異世界なんだ。
顔を洗ってお手洗いをすませる。
朝ごはんに出たのは、かたすぎるパンとゆで卵だけ。お腹はすいていたから食べたけれど。
「本日はこちらにお着替え下さい」
部屋に戻るとベッドの上にドレスが広がっていた。えりやそでにはハデなフリルがついている。
(こんなダサいの着るの)
ネミさんによれば、ヒメコたちの服はマナー違反なのだそうだ。
しょうがないから着つけてもらったけれど、コルセットがきつくて苦しい。
(ダイエットにはなるかな)
鏡はないから確認はできないけれど、センカは似合ってない。多分ヒメコも同じはず。
食堂へ向かうとルーギルさんに出会った。
「おはようございます、みなさま良く眠れましたか」
こんな変な格好では会いたくないけれどしかたがない。
わずかな救いは、日本人組はみんな慣れない服で似合っていないこと。
(今日は台所使わせてほしいな)
でも何も言えないまま戦いの訓練が始まった。
「これから戦いの訓練をする。軍において私は君達の上官である。戦闘や訓練の間は部下として扱うので、そのつもりでいるように」
ルーギルさんに指導されて武具を装備する。
(苦しい‥)
ヒメコは悲鳴を上げそうになった。ドレスの上に付けられた鎧が重すぎるのだ。
コルセットもウエストを閉め上げる。
(何とかしなくちゃ)
「魔法戦士は一般的に武具に術をかける。甲冑を軽く丈夫にし、剣の切れ味を上げるために」
ルーギルさんがヒントをくれた。
(服に魔法ってかけられないかな)
魔法石に願いをかけるとお腹は楽になった。
(これだ)
訓練が終わって鎧が脱がされる。疲れてはいたけれどヒメコは魔法石をにぎって目を閉じた。
(試してみなくちゃ)
数秒後、目を開けた時にはヒメコのドレスは形を変えていた。
フリルは小さくなり、そでも胴も布に余裕ができてぴっちりしなくなった。スカートは軽くなり、ずっと動きやすい。色もちょっと上品にしてみた。
(マナー違反じゃなければいいのだけれど)
確認のため、ルーギルさんに見せてみる。
「魔法で変えてみたのですが、よろしいでしょうか?」
クルっと回って見せたらうなずいてくれた。
やっぱり、素敵な人にはかわいい自分を見て欲しい。