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クタクタになって皮鎧をぬがされる。
少しは軽くなったって、コルセットは苦しい。
ヒメコが魔法石を取り出して、何か願っている。
ヒメコのドレスが変わる。ごてごての飾りがスッキリし、布も薄く軽くなっている。
ふうっとヒメコの表情が柔らかくなった。
(そうか甲冑みたいに軽くしたんだ)
見た目まで変えるなんてヒメコの応用力にセンカは感心した。
ルーギルなんてヒメコに目が釘付け。
「確かに元の形から大きく変えなければ可能ですが‥」
みんな次々と真似している。
中世っぽい世界にいきなり近現代の人間が出現した。
「やっぱりタイツは無理っしょ」
男性陣はズボン姿に戻れてほっとしている。
「フォーマルならいいんだよね」
センカもえりとウエストに余裕を持たせ、そでのレースを小さくする。
「その程度でしたら、まあよろしいかと」
「だったらさ、男装してもいいかな? 訓練中は動きやすい服装の方がいいでしょ」
ダメ元でルーギルに頼んでみたら、うなずいてくれた。
「日時計が正午をさしたら、広間に集合だ」
センカは部屋に戻って寝た。
ネミさんにお昼になったら起こしてもらう。
広間に移動したが、昼食は‥ 出なかった。食事は一日二回らしい。
まあ、あっても食べられはしなかっただろう。疲労で食欲がわかない。
長方形のテーブルがいくつもある。
(昨日もあったっけ? そっか、壁のそばに寄せてあったか)
昨日は緊張してたから周りを観察する余裕もなかったみたい。
イスに座ると大きな箱と本をかかえた青年が入って来た。昨夜ルーギルと怪しい話をしていたさわやかな青年だ。
「僕はみなさんに魔法の手ほどきをするクアモです。これからしばらく午前中は軍事訓練、午後からは座学になります」
アルファベットのような表音文字と、漢字のような表意文字をいくつか教わる。
みんなが簡単にこなしているのでクアモはほっとしたみたい。
(この世界の文化では識字率も低いのかな)
読み書きが出来れば、危険な任務から外してもらえるかもしれない。
「さすがですね、初日で読めるようになるとは」
クアモは箱から黒い板とチョークを取り出しセンカ達に配る。
「石板です。まずは簡単な文字を練習してみましょう」
食事は朝と昼が普通みたいです。
場所によっては三食食べたとか。
この国では三時くらいに昼晩兼用を食べることにしました。
そのかわり10時に軽食(ビスケット程度)が出ます。
座学ですが、一日目は読み練習のみです。
テューダー朝の本に、庶民でも文字を読める人間は多いが書ける人間は少ない、とあったのを参考にしています。