1 誘拐にしか見えないんですけど。
恋愛要素はほぼなし。
完結するかも未定。
人気出ないだろうなぁ~ ^^;
頭が痛い。
センカは目を開いた。
(どこだっけ?ここ)
知らない建物の中に人が何人もいる。
センカの周りをヒラヒラした衣装のコスプレイヤーたちが取り囲んでいた。
普通の服装の人も何人かいるけど、自信満々のコスプレイヤーを不安そうに見ている。
「みなさまようこそお越しいただけました。ここはセタカの国、あなたがたの世界とは異なる所」
大声にセンカはビクッとする。
(は、何? この人。あたし‥ああ誘拐されたのか)
センカはその日の夜に家を飛び出したのだ。
理由は親とのケンカ。
センカが学校を休みがちなのを今日も叱られたから。
とりあえず近所をぐるっと一周する。
夜の町は通行人も少なくて静かだ。センカは深呼吸した。
(このまま家出しちゃおうかな)
一応財布は持っているけど中身は少ない。ホテルなどには泊まれない。
そもそも高校生一人ではすぐに補導されてしまう。
(あたしにできる家出なんて近所をウロウロするだけか)
もっと遠くに行きたかった。全然知らない場所、ここではないどこかへ。
(外国行きたいな、タイムスリップでもいいよね。あ異世界でもいいな)
古代ローマやRPGゲームに迷い込む自分を想像してニコッとしながら角を曲がる。
そこにはバス停があった。白いベンチもある。
(こんな所にバス走ってたっけ)
少し疲れていたから座る。
ベンチの上には忘れ物だろうか、きれいなカードが一枚あった。
お城の絵が描いてある。
カードを手に取っているとゴワッと音がした。
バスが止まっている。
センカが急いでベンチから立ち上がると「不思議ツアー」と書かれたバスのドアがウィーンと開く。
車掌が出てきたけど暗くて顔は見えない。
「バスツアー参加の方ですね」
センカは首を振った。
近所にツアーバスが来るのは変だし、申し込みをした覚えもない。
「人違いですよ、それにお金持って無いんです」
ドキドキしながら断る。もし乗ってしまえば何かが始まるかもしれない。
でも何か怖い。誘拐や詐欺かもしれないし。
「おや、切符を持っているじゃありませんか」
車掌はセンカの手の中のカードを指さした。
「あなたは選ばれたのですよ、どうぞお乗り下さい。それともずーっとここにいるつもりなのですか」
その言葉でセンカは吹っ切れた。体がフラフラとバスに乗り込む。
バスの中には何人か先客がいる。空いた席に腰かけると眠気がおそってきた。
(ちょっとだけ)と目を閉じる。
意識はあっと言う間に遠ざかった。