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「祝! ファーストライブ成功&みちるん完治!!」

「イエーイ」


 バイト(ドリンクの受付とか)終わり、りんさんとはくりちゃんに誘われて私と、高橋さんはライブハウス近くのファミリーレストランに来ていた。

 この前に打ち上げしたじゃん? ってちょっと思わなくはなかったけど、あれとはまた別口というか……店長さんが「払ってあげるからやりな」と言ってお金を渡してくれたので、ここはご厚意に甘えて……なんか、始まった。


 これバイト代に含まれてないんだけどいいのかな、大丈夫なのかな……ってちょっと心配になってたら、子供がそんなこと気にするなって頭撫でられた。あの、私子供じゃないんだけど……いや中身の事言えないけどさ店長さんには。


 テーブルにはピザにポテトにサラダにと、みんなでシェアするものと各自が頼んだ好きなもので溢れかえっている……うぅ、胸焼けしそうなくらいみんな脂っこいもの頼んでる……サラダが癒しだなあ。


「ひとみ、口に合いそう?」

「……そうですわね。フライドポテトなら、ええ……普通ですわね」


 私の隣で一本ずつポテトを取って食べる高橋さん。あぁ、お金持ちだもんね高橋さん。こういった大衆チェーン店とか来ないもんね、普通のメニュー食べ慣れてないよね。

 でもポテトはお金持ちなところともそこまで味が変わらないようで、先ほどから手が止まってない様子……えっなに高橋さん。なんで私の方にポテトを向けてるの高橋さん。


「永井さん、あーんですわ」

「あ、あーん……?」


 急にあーん要求されたから、素直に応じるしかない私……うん、美味しい、と思う。普段フライドポテトなんて食べないから味の良し悪しとかわかんないけど。


「……永井さん。次」

「あっ、はい」

「みちるんの胃袋そこまで強くないから程々にしておきなよー」

「うん。脂っこいものに耐性とかなさそうだし」


 次から次へとポテトを差し出してくる高橋さんに、はくりちゃんとりんさんがストップをかける。

 私の事老人扱いしてないか二人とも……? でも何も言い返せない私がいるのも事実なんだよなあ。


 転生して分かった事だけど、脂っこいものが無理なのって体が原因じゃないんだ。脳というか、記憶が脂っこいものにストップをかけていたんだ……。


 高橋さんが少し残念そうに自分の口にポテトを運んだ。なんでそんなに私に食べさせたいの、高橋さん。

 その様子を見届けて、チーズとコーンが乗ったピザにタバスコをかけながら、りんさんが私に尋ねてきた。かけすぎじゃない?


「で、みちる。聞きたいことがある」

「あっはい、なんでしょうか」

「……ギターの腕はどれくらいで戻りそう?」

「ちょっ、ちょっとりん!? 何もこの場で聞かなくても……」


 りんさんが手に持ったピザからタバスコを流れ落ちる様を眺めながら、私はその質問の答えを考える。

 正直なところ、かなり感覚を取り戻している……感じはする。元々がかなり上手い、というか極めたといえるくらい弾けてた私なんだけど、そこからちょっと落ちたくらい……しかも、今ものすごい勢いで駆け上がって行ってる感じがしている。

 あと数週間もすれば、まあ……元通りに弾けるようになると思う。


「数週間、ですかね」

「……腕の方はそのくらいで戻せるかもね」


 私の予想に含みのある言い方をするりんさん。

 どういう意味か高橋さんは分かってないようだったけど、私はその言葉の意味が理解できていた。


 ……私の指は長いことギターを弾いていない、弦に触れていなかった。毎日ギターを最低八時間は引いていた私が、だ。

 それはつまり……


「指、柔らかくなっちゃってるよね」


 私の指は、ギターを弾くためにかなり硬くなってしまっていた。弦という硬くて細いものを短期間のうちに何度も抑えると、その分だけ指に圧力がかかり、傷つき、それを修復しようと細胞が動く。

 それを何度も何度も繰り返すことで指の皮膚が厚くなっていく……んだけど、二か月も弾けなかったということで、指の皮膚が元の綺麗な状態に戻ってしまったんだよね……。


 これを急いで戻さないといけない……んだけど、こればっかりはいくら上達が早くてもどうしようもない。指の負傷と治癒の繰り返し、それによって皮膚が固くするのが大事。

 なぜ、タコを潰して指の皮膚を厚くしなければならないのかというと、暑く成った皮膚が天然の保護材となってくれて、ギターを弾いても痛めにくい指になってくれるから。


 ……そして、こればっかりはいくら腕を元に戻せてもどうしようもないんだよなあ。


「まあ、みちるの事だから半月くらいで元の指に戻せそうだけど」

「永井さん、暇さえあればギター弾いてますものね……毎日どれくらい弾いてらしたんですの?」

「え、えっと……八時間、です。みじっ、短くて……」

「短くてって……みちるん、学校行ってるのにそれなの?」

「あっはい。バイトで嫌な客に会った時とか、その、絡まれたりとかでかえ、帰りが遅くなることありますし……お使い頼まれたりとかも、あり、ありますので……」


 ナンパに捕まったり、はしたことないんだけど……酔っ払いに絡まれたり、どういう訳か危ない薬売られそうになったりとか、オーバードーズに誘われたりとか……治安悪いなあここ。

 そういう訳で帰りが遅くなるってのがままあって、そういう日は全然ギター練習できないんだよね……。


 でも私の練習時間を聞いたみんなは、目を丸くしていた。

 ……あれっ、みんな練習時間こんなもんなんじゃないの?


「……永井さん、普段何時に寝てまして?」

「……三時くらい、ですかね。最低でも八時間、目標としてはじゅっ、十時間くらい練習したいので……」

「じゅうっ……!?」


 私が普段やっている練習時間を伝えると、高橋さんが絶句してしまった……眠れない時間が長いし、その時間何もしないのは勿体ないし……ね?

 寝付くまでの時間何もしないってのは勿体ないしなあ、ってので眠気来るまで練習してるってだけで……割とみんなそうなんじゃないかなって思うんだけどなあ。


「ひとみん、絶対参考にしちゃ駄目だよ」

「みちるは特殊だから」


 ……みんなそういう訳じゃなかったみたいだった。

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