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 昨日は大盛況だったようで、かなり数が減っていたドリンクやコップの補充をしながら、仕事前にりんさん達に前世の秘密を打ち明けた時の反応を思い出していた。


 りんさんと高橋さんに、事の全てを話す事が出来たけど……はくりちゃんには秘密にしておこう、という話になった。

 私達が今生きている世界はゲームの世界だったんだよとか、私は近いうちに死ぬとか、攻略対象を未亡人の人妻にする為だとか言っても正気を疑われる……というりんさんからの提案の元、三人の秘密ということになった。


 はくりちゃんが理解してくれるかどうかはともかく、私の境遇……りんさんは詳しく話してくれなかったけど、伏せておいた方がいいらしい。

 まあ、そんなもの打ち明けられても困るもんね、信じられないよね……と言ったら、そうではないと首を横に振っていた。真偽はどうでもいいらしい。なんでかは知らない。


 高橋さんは、この世界がゲームの世界かどうかは別として、私に前世の記憶があるというのは信じてくれていた。私が言った口で言うのもなんだけど、なんで信じられるんだろ……?


 ということで、秘密を打ち明けてある程度スッキリした私は、ライブハウスでのバイトを再開した。


「……ようやく有休を消化してくれたねぇ、みちる」

「あっ、あはは……その、やす、休むとちょっと……居心地が悪くて……」


 作業する様を見られながら店長にそう言われ、私は曖昧な笑みで返す。


 怪我で仕事や学校を休んだことはなく、病気で休めば家事をさせられ殴られってのが(前世での)我が家の常識だったので……といっても伝わる訳が無いので、笑ってごまかしておく。

 怪我は日常茶飯事だったし、休めば家で暴力職場で暴力、おまけに仕事の量も増やされると……今思えばなんであれを普通に受け入れてたんだろうなあ私。


 でもまた同じ環境に投じられたら同じように従順になるんだろうなというのが私だ。ぶっちゃけギター弾けるならあの環境を強制されても我慢できたからね。


「あの、すみ、すみませんが……しばらくの間さぽ、サポートの方は……」

「どれだけ音楽に触れてきたと思ってるんだい? 分かってるよ。……まだ、鈍ったままなんだろ?」

「は、はい。すみません……」


 サポートはしばらく延期。ギタリストに飛ばれたバンドの人達には申し訳ないけども、今の腕だとちょっとライブで演奏するには不安が大きいからね……ご迷惑をおかけします。

 とはいっても、サポートの再開は結構早いかもしれない。というのもこの体……元は成績優秀スポーツ万能文武両道を体現化したようなDLC追加ボス、ってのもあって才能の塊としか言えない体。


 それに私の魂が入った訳だから、それらの才能を全てギターと曲作りというバンド活動に一点集中させている訳で……器用万能にふるまえる才能を音楽活動一点特化にしている訳。

 ギターを一日弾くごとに自分の腕が急速に元に戻って行ってるのを感じる……凄い、これが才能を持つ人間の体なのか……!!


「……そういえば、高橋さんも凄い勢いで上達してたっけ」


 お嬢様、というよりゲームのキャラの才能はやはり凡人とは格が違いすぎるのかもしれない。なんて思いながら、ペットボトルを段ボールからショーケースに移していく。


 高橋さんの上達は目を見張るもの、というか正直理解できないくらい成長速度が異常だった。私があそこまで弾けるようになったのは、前世なら四年目くらい……バイオリンをやっていた経験があるとはいえ、私が教えているとはいえ、普通はあそこまでの速度で上達するはずがない。


 ……あの怪我をするまでは自分の体の才能を感じなかったってことは、前世の私はギターに関するステータスがカンストしていた、ということなんだろうか。

 うぅん、才能に溢れた体ですら実感できないくらいの私のギターテク……凄いんじゃない? 語彙力無いなあ、自分を褒めるの下手すぎかあ?


「よし、チェック完了」


 段ボールからショーケースに移した数もきちんとメモを取って、パソコンを立ち上げてExcelに入力。メモを再度確認し、Excelに打ち込んだものと照らし合わせて……流石私、ミスが無い。前世なら絶対一個や二個ミスしてた。


「次は……」

「永井さんは休んでてください。私の仕事無くなるので」

「あっ、はい」


 掃き掃除しようとしたところで私と一緒のシフトに入っていたバイトさんにモップを取られてしまう。

 トイレ掃除に関してはバイトではなく業者を雇っているらしいので手出しできない。上で経営しているタコス屋さんとの提携、という感じでついでに頼んでいるらしい。私も詳しくは知らないけど。


 じゃ後は何ができるかっていうと……出入口の掃き掃除? いやでも店長さんが来る時にやってたな。

 じゃあ……じゃあ……?


「あの、て、店長さん……」

「んー?」

「なに、か、すみません、自分では何をするべきか見つけられないので、仕事……を……」

「いや無いなら好きな事やっておきなよ。みちる、バイトなんだし。何かやらなきゃいけない、なんて責任は無いよ」

「あのっ、でも仕事……」

「店番やるんだからそれまでは休憩」


 店長さんに笑顔でそう言われちゃったけど……こ、困る……好きな事やっておいてが一番困るんだよ店長さん……!! 休憩が一番何やればいいか分からないんだよ店長さん……!!


 開店まであと三十分……ギターの練習をやるには、短くやるには環境が整いすぎてる……!!

 かといって何をやればいいかっていうと、何をやればいいんだろ? ってなるくらいに自由な時間の使い方がわからない……。


 と、とりあえず……とりあえず……りんさん! はいない! というか今日に限ってバンドメンバー誰もいない!!

 どう、どどどどどうしよう!! えっ、こういう時ってどうやって時間を潰してたっけ? もう友達と一緒にいるのが普通になってしまって分からない、時間の潰し方が分からなくなってる……!!


 ……よし。とりあえず座っておこう。

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