表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
43/56

43

 松葉杖で歩くと、足で歩くより極端に上下に揺れるな……なんて発見をしながら、廊下を歩く。

 いつもと違い、ギターケースを背負っていない背中が妙に寂しい。子供がおんぶさせてくれなくなった親の気持ちってこんな感じなのかな、なんて思いながら教室のドアを開ける。


「おっ、おはようございます……ヒィッ!?」


 教室に入ってまず感じたのは、視線。普段ならみんな雑談している頃合いだろうに、どういう訳か私が姿を現した途端しんと、深夜の街のように静まり返ってしまった。

 すっごい居心地が悪い……できるだけ静かに、松葉杖をつきながら自分の席に向かう。


 私みたいな陰キャが怪我したところで誰も見ないだろう~、なんて思ってたのに……思ってたのに!! 畜生見るな、私を見ていいのはライブの時だけだぞ!! なんて言えたらいいんだけどね。


「永井さん……どうしたのその怪我!?」

「ライブ最高だったよー永井さん! でその腕と足どうしたの!?」

「大丈夫? 鞄持ちましょうか?」

「あっ、あっえっと、あのっ……はい、すみませんありがとうございます。その、ちょっと怪我を……」


 うわあ凄い人が、私を心配してくれる人が集まってくるー!! 私なんて心配されるような価値無いですから!! あっ鞄持ってくれてありがとうございます。

 あうう、あまり人に集まってほしくない……でもライブの感想とか聞きたい! 二律背反のジレンマ……わっ、私は、私はどうしたら……!?


「あの、私は大丈夫ですので……本当、しゅっ手術とか必要ない、かるっ軽い怪我ですので……あまりお気になさらず」

「いや気にしないは無理じゃないかな!?」


 で、ですよねぇ……私も同じような怪我をしてる人がいたら気にするかもだし。

 親切にしてくださるのはありがたいんだけど、私の中では申し訳なさが勝つの。放っといてくれた方が落ち着ける……けど善意を無為に出来る程孤高を愛している訳でもないから。うん、面倒くさいな私。ふざけんなよ私。


 ……よし、心配ムード消す為にこっちから話題を振ろう!! ちょうどよく、私に駆け寄ってきてくれた人達はライブに来てくださった方たちだし!!


「あのっ、らい、ライブ……どうでした、か? 楽しんで、いただけました?」

「そりゃあもう! 凄かった!!」

「あの演奏でロックに目覚めて、帰りに曲買いましたもん! いいもんですねぇロックって」

「……初めての場所、初めての経験、価値観変わった。またライブするなら教えて。絶対見に行く」


 うわあキラキラしてる! みんな目がキラキラしてる!! 浄化される、私浄化されちゃうよ……!!

 ……でもそっか。みんな楽しんでくれたならよかった。


 ステージ上で見てる分だと盛り上がってるかどうかわかりづらかった子も、ノリノリでノってくれた子も、みんなファンになってくれたようで……転生者ギタリスト冥利に尽きるというもの。


 これでゾディアック・クラスタのファンとして通ってくれたら……いや、どうする? 私が告知しなきゃいけないか? まだインディーズにもなっていない個人バンドだしアカウントも無いし、いつライブやるか知る手段ないし……となると私から話しかけて告知しないといけない!? 不味いぞ、責任重大だぞ……!!


「永井さん、気分悪い? 顔真っ青だけど」

「……保健室、行く?」

「無理しちゃ駄目ですよ?」

「大丈夫ですので、本当に大丈夫ですので……こっ、このくらいの怪我、慣れっこですから」

「いやこのくらいの怪我ってレベルじゃないと思うよ!?」


 クラスメイトの片が驚くけど、本当慣れっこよこのくらいの怪我。何なら後は治すだけですから経験上軽い方まである。


 骨折させられて自然に治させられてまた骨折させられてを繰り返されたりとかあったからなあ……あれは地獄だった。治りたくないって願ってたもん。減給させられたんで家に収めるお金が足りなかったからってやることじゃないよなあれ。


「と、とりあえずまたあの、やっライブやりますので、その、その時はまた来てくださると、うっ……嬉しい、です……」

「絶対行くから教えてよね! あっそうだYARNやってる? 連絡先交換しよっ」

「……私も、交換したい」

「あっ私も! 私もお願いします!!」


 リアルJK相手に連絡先をおねだりされるなんて前世じゃ考えられなかったなあ……えっと、QRコードで交換? 確かこれを押して……違うこれプロフィール編集だ。


 あれっ、どうやってたっけ……? 確か一度足立山さんと交換して、高橋さんとは……グループYARN経由でフレンドなったんだった。はくりちゃんとりんさんは……電話番号からの追跡? で連絡先交換して、店長さんも同じ方法で……


 ……………?


「どっ、どうやるのでしょうか……? あれっ、あのっちょっ、ちょっと待ってくださいあれっ」

「えっ!? 永井さん、フレンド交換したことない……?」

「嘘でしょ現役女子高生……というか学生なのに……!? そんなことある……!?」

「……そういう人もいますよ。大丈夫ですよ永井さん。ほら、ここのボタンを押して……」


 えっと、この人型のシルエットにプラスボタンがあるのを押して……うわいっぱい出た。えっこんなにあるの!? 友達の追加方法こんなにあるの!?


 えっと、QRコードのだから……この魔方陣みたいなのをでいいのかな。それで読み取りを押して……おおー読み取れた。


「おおー……!!」

「ふふっ、私がファンの中で一番最初のフレンドですね……えっこれ初期設定……!?」

「抜け駆けされた……!! 次ッ、次私!!」

「私も……」


 次々と差し出されるQRコードを読み取って、フレンドに追加していく……おおっ、私のスマホに仕事仲間とバンド仲間と足立山さん以外の人が……!! 凄い。奇跡だよこれ……!!


 というか三人ともアイコン可愛いなあ。すっごい美人に撮れてるのだったり、ぬいぐるみだったり……ちゃんとアイコンとして使ってる……それに比べて私のはなんだ、作られたてのbotか?


「絶対、ぜーったい連絡してよね!! あっ無理に会話とかしなくて大丈夫だからね!! 永井さんの都合がいい時だけでいいから!!」

「ん、私たちはあくまでファンだから……」

「永井さんの性格はよく知っておりますから……」


 凄い。対人関係終わってて若干恐怖症入ってる私に凄い配慮してくれてる……しかもファン公言とかもう……バンド始めてよかったぁ……!!


 ふふっ、怪我負っちゃってるけど今日は良いことあったし、どうせギターの練習もできないし……そっかギターの練習できないんだった。どうしよう。今考えただけで辛い。でも治す為には我慢が必要だし……あーもう! 今日はやけ食いしてやる!! お祝いとやけ食い同時にしてやるもんね!! 1000円くらいの範囲で!!


 うん? あれっ、連絡……高橋さんから?


『今日から永井さんの通学は我が家がすることにしますわ』


 ……寄り道潰された!?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ