話してないこと
「告白されたんです」
「それなのになんで?嬉しいし、ありがたいことじゃない」
今の状況を説明するには言葉が足りなかった。
「俺は………恋愛が嫌いなんです」
「そっか、いいんじゃない別に」
「え……」
「別に何が嫌いだろうが、好きだろうが人の自由だし個性でしょ」
「確かにそうですけど」
「私だって掃除が嫌いだし、人とかかわるのも苦手だし。みんなそんなもんじゃない」
「そんなもんなんですか」
「お悩み相談はもう大丈夫か?」
「大丈夫です」
「ならよかった。そろそろレポートのほうを………」
「最後は先輩らしいですね」
いつもよりすがすがしい気分でレポートに取り組む。(先輩のだけど)
朝五時ごろにレポートの山が片付いた。
「おつかれ後輩。まじ助かったわ、ありがと」
「いえいえ、話聞いてくれましたし」
俺は自分の部屋に戻ろうと玄関を開けた。でもまだ言ってない言葉がある。
「先輩。ありがとうございました」
「いい顔で笑うじゃないか、平優生」
バタン。ドアが閉まる。
「……かわいいな、優生」
そんな言葉は誰にも届かず玄関に響き消えていった。
俺は学校に行きながら先輩の言葉を反芻していた。
(何が嫌いかも、何が好きかもその人の自由で個性。か、)
自分が嫌いなことを考えてみる。恋愛。勉強。めんどくさいこと。いろいろある。
自分の好きなことを考えてみる。…………………ない。
たいして好きなこともやりたいこともない。そんな俺みたいな人間を好きになって、ふられたのにまだあきらめず、俺を変えてくれようとしてくれている人がいる。そんな優しく強い人に自分の都合だけで説明もせず傷つけて、気持ちを踏みにじっている。
何をしているんだ俺は。
学校に向かう足は無意識に早くなっていった。
少し向かい風が吹いていた。
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