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19. 魅惑の効力

カーネリアに戻ると、フランシスが待っていたようで表情を明るくした。


「クレア、二人を説得できたのだな!アントニオ、ウルフラム。来てくれると思っていた!」


「…お前のためじゃない。」


「そうだよ!何勘違いしてるか知らないけど、俺はクレアに呼ばれたから来ただけ。」


「それでもいいさ。今のカーネリアは魔法使い一人でも惜しい状況だ。国境の町にいる野党の制圧を頼む!」


「それくらい俺じゃなくても良くなーい?クレア行けば?」


「彼女にそんな危険な事させられるわけないだろう!」


「…そうか。なら他を当たれ。」


「なんだと!?君達は何のために来たんだ?」


「…ナタリィを大罪人として扱っていると聞いた。どういうつもりだ…?」


「それ俺も聞いた。争いを起こすのがナタリィの目的ってお前等バカなの?」


「馬鹿だと!?」


「だってそうでしょ。ナタリィがそんなことして何のメリットがあるわけ?そもそも俺が無理矢理学園に連れて行ったんだし。」


「…大罪人として扱うのなら俺達のはず。…それができないから下位の魔法使いを犠牲にする常套手段…そろそろ辞めろよ。」


「っ。」


「ま、大罪人として扱われたところで俺は全然へーきだけど。もともと最高位の魔法使いとかいう下らない称号なんて要らないし。」


「…ウルフラム様?そんな悲しいこと仰らないでください。」


黙って話を聞いていたクレアは大粒の涙を浮かべたまま彼の腕に優しく触れる。

そうすることで魔力特性を最大限に発揮できるのだ。


「アントニオ様もお願いいたします。カーネリアに住むたくさんの方々のためにもフランシス様にお力添えしていただけませんか…?」


同じように触れれば彼らの動きが止まった。

彼らにも効いたのだろうと笑みを浮かべて眺めていたフランシスは学園長によって壊された魔石を渡すべく、近くにあったチェストへ移動する。


「君達に渡したいものが…。」


「キャア!」


「クレア!?どうした!?」


彼女の叫び声に振り返ると床に座り込んだ姿が見え、何が起きたのだと二人を見やる。

その表情は怖いほど冷めた目をしていた。

アントニオはクレアの触れた腕に炎纏い、浄化魔法を掛けているようで。

汚いものが触れたかのような扱いだ。

ウルフラムも同様に不快だったようで、血が出るほど腕に牙を立てて噛みついている。


「どうして…。」


「…。」


「どうして効かないのですか!?私の魔力特性は絶対なのに!!」


「…それ、誰に対して絶対なの。」


「誰って…。」


「…もしかして効果あったからここに来たと思ってるの?…俺がナタリィ以外に靡くわけない。」


「左に同じ!俺、ナタリィ以外は"人"としか認識できないんだよね~。」


「ま、まさか本当に最初からクレアの魔力特性は効果が無かったというのか…?」


「あるわけないじゃん。」


「…ナタリィを大罪人にするなら、二度と戻る気はない。…それを伝えに来ただけだ。」


「え、そうだったの!?俺はナタリィを傷付ける国なんて要らないから全部破壊するつもりで来たんだけど。」


「…それだとナタリィの家まで被害が出る。」


「そっかあ。じゃあ辞めとく〜。」


「ナタリィさんの…。」


「…?」


「ナタリィさんの何処がそんなに良いんですか!?私のほうが可愛いはずなのに…。」


「「全て。」」


声を揃えた彼らにドレスの裾を握りしめたまま俯くことしかできないかったようで涙のシミを作っていく。

今までどんな男性にも好かれてきた彼女にとって他の女性と比べられた上に、自分には一切興味がないという態度を取られるなど初めての経験だったのだ。

ラブラドライトの魔石を持つトルシェには効果が薄いことはわかっていたが、優しい彼からあからさまな態度など取られたこともなかった。

実際は優しいわけではなく、皇子としての処世術に過ぎないのだが。

表面しか見せられていないクレアがそれを知るはずもなく、何故二人にだけこんなに拒否られるのか理解できずにいる。

そんな彼女を慰めるはずもなく、ウルフラムはベーッと舌を出してから魔獣の姿に戻り、アンバードへと飛び去ってしまった。

アントニオも興味が失せたのか、残像とともに消えていくのだった。

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