人界と必要な知識
アルネスは人間界へと旅に出て早く数刻。
「あつーい!これ夏とかじゃないでしょうねー!」
アルネスは自身の周りをひんやりさせる空気を纏うことにした。指をパッと動かせばすぐひんやりするようになる。
「よし!これなら問題ないわ。さて、どこに行こうかな〜。」
アルネスは森の中ということもあり、翼を広げてパタパタと飛んでいる。速度はゆっくりめだ。
「それにしても久しぶりに来たわね。前来た時は森すら無かったのに今では森がたっくさんね。」
近くの街までゴーするのよ!ゴー!
そんな調子で街を目指そうとするもそもそも街の方向が分からないので途方に暮れている。
すると森の奥から何かのぶつかる音が聞こえる。それに声もしているようだ。耳を澄ますと、
「カインのほうにボア4体いったぞ!」
「分かってる!火槍!」
「私も手伝うわ!【ホワイトジャベリン】!」
「回復しますよ!【ミドルヒール】!」
4人ほど声が聞こえる。男女二人ずつのようだ。
近くまでそーっと近づいて見てみると、特に危なげもなく倒しているようだ。さすがに人が近くにいるので翼を閉じる。でも迷子というのもあれだし。手持ちの金貨とかが今も使えるか全く分からない。
4人はボア4体を片付け、剣をしまったり、ポーションを飲んだりしてその場で休憩していた。
「いやぁ、ボア4体倒すのにも少しずつ慣れてきたね。前より余裕を持って倒せるようになってきたかも。」
「それは私のおかげでしょ。忘れちゃダメよ。カイン1人だと危なっかしいからサポートしてんのに。」
「それにダインももう少しタンクでヘイトを稼いで欲しいわ。ヒーラーにまでボアが行くところだったのよ。」
「それは反省してる。」
4人は反省会議をしているようだ。それに近くで見てみると4人それぞれ別々の種族だ。もしかすると今は色んな種族の人が一緒に生活してるのかもしれないと期待をふくらませる。
カインと呼ばれた男は人族だ。ダインと呼ばれた男はドワーフっぽい。魔術師っぽい女の子はエルフだ。最後にヒーラーの子は天使族だ。
ドワーフとエルフが一緒に過ごしてるなんて凄いなぁ。少し気が緩んだのか前に出過ぎてしまい、草むらの音を出してしまう。
「誰だ!そこの草むらにいるのは!」
カインは草むらにいる何者かに対し、声を出して威嚇する。
ほかの3人もすぐに立ち上がり、草むらの方を向き、臨戦態勢を取る。
さすがにいきなり攻撃されるのは私としても嫌なので、草むらから出てくる事にした。
「あー、ごめんね〜。ちょっとボアとの戦いからボーッと見てたんだよ。それでその後に君たちのことを見たらエルフとドワーフが一緒に戦ってるのを見て、ちょっと興奮しちゃって。へへ。別に戦おうなんて思ってないよ!ちょっと旅をしてて1番近い街を探してるんだよねぇ。」
「旅の人がどうしてこんな森の中に?」
ヒーラーの子が聞いてきた。
「どうしてって、森って落ち着くじゃん?それだけ〜。」
「もしよろしければ街まで案内しましょうか?」
その答えを待ってたと言わんばかりにガッツポーズを取るアルネス。
「お願い!」
アルネスは4人と共に街へ向かうことにした。
道中、お互いを知るため、自己紹介から始めることにした。
「俺はカイン!人族でD級冒険者だ。ギルド【宿り木】のリーダーをしてる剣士だ。」
「私はミレーヌよ。エルフでC級ね。魔術師をしてるわ。」
「俺はダインという。ドワーフでD級だ。タンクをしている。先程の戦いを見ていたと言うならば叱責を食らったところも聞いていただろう。タンクとしてはまだ半人前だ。」
「私はイリス!天使族でかんなぎっていう職業だよ。バフとデバフと回復ができるんだよ!」
4人が紹介を終え、こちらの紹介を待っている。
この感じ、種族とか言わないとダメな感じかァ…。まぁいいや〜。
「私はアルネスっていうんだよ!種族は精霊族なんだけどねぇ。歳は秘密ね。精霊系統はだいたいなんでも出来るよ。あと、聞きたいのだけど、冒険者って何?」
「え?冒険者じゃなかったの!?旅をしているって聞いたから冒険者かと思った。」
「冒険者っていうのは、各地を冒険して依頼をこなしたり護衛をこなしたりするんだ。基本的に中立の立場でね、どの種族も分け隔てなく勧誘してるんだよ。その中には強さを求めて冒険者になる人もいれば、泊をつけたいからなる人だっている。それに未知の場所を冒険するってのも魅力だ。」
アルネスはふと横を見ると、ミレーヌがブツブツと独り言を言っているのを見た。
「どうしたの?ミレーヌちゃん。」
「え、な、なんでもないわ。それよりあんたそろそろ街につくわけだけど、冒険者にでもなったらどう。」
「それもいいね!それでさっきから何級とか言ってるけど、強さの基準があるの?」
「まぁ冒険者を知らないのなら知らなくて当然よね。冒険者は登録するとまずE級になるの。そこから依頼をこなしたりしていくとD、C級に上がっていくわ。B級以上になるにはギルドマスターが直接審査する必要があるの。A級ともなると国からの依頼もあったりするそうよ。
その代わり、貴族でいう伯爵相当の泊がつくの。そして強さが異次元というか、イカれてるというか、実際これから入るレディアの街では1人しか居ない。
そして世界に10人と居ないS級が存在するわ。まぁS級になる事なんて余程の強さを見せつけない限り有り得ないから。」
「そして魔物にもランク付けがされてるの。おもにスライムやゴブリンなどはDランクね、コボルトもDランクよ。そこからC、B、A、Sランクと来るの。
そしてその上に災害級、災厄級、災禍級、終焉級ってのがあるわ。S級ともなると災禍級は倒せないとダメらしいわ。」
へぇ…。色々知れた。
「それで、レディアの街に入るわけだけど、あんた通行料払えるわけ?銅貨2枚だけど。」
通行料とはなんだろう。聞いたことがない。精霊界から人界に行くのに何も取られなかったのに、人界は街に入る事に取られるのだろうか。そもそも銅貨ってなんだろう。
「ねぇ、その、銅貨?って何?私が持ってるのこれしかないの。」
アルネスは懐に入っていた貨幣を見せる。
すると4人は驚いて少し後ろに引くも息を整えて、
「あんたそれが何か分かって見せてるの?」
「というか、私が以前、人界を訪れた時はこれしか使ってなかったよ。」
「え、その貨幣はね、王貨っていわれてるの。王貨1枚で銅貨1億枚よ。」
そしてミレーヌはアルネスにお金についても教えてくれた。
鉄貨が最低貨幣。
鉄貨10枚で銅貨1枚。銅貨10枚で銀貨1枚。
銀貨100枚で金貨1枚。金貨100枚で白金貨1枚。
白金貨1000枚で王貨1枚。
なんということだ。この貨幣がいつの間にか最上位の貨幣になっているなんて…それなら私は大金持ちだ。やった。
そしてミレーヌは意外にも面倒見のいい子だ。
このままだと気分で加護あげちゃいそうだけどここは落ち着かないと…。スー、ハー、スー、ハー。
そして冒険の街レディアの門に近づくのだった。