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電脳世界の末端で  作者: まきゆ
アリスから始まる物語
4/7

for Z

ゼロへ。ゼロの世界が広がると良いなぁ

「言霊よ 汝に 継ぐは 言の葉。"Hello world"! 汝 呼応せよ! どう? 昴がちゃんと治してくれたんだよっ」

ゼロに再会したアリスはどうだと胸を張って、正しいスペルの文字を電脳世界にデカデカと打ち上げた。


「後ね。こういうのも教えてくれたんだ!」

意気揚々と更にデカデカと打ち上げる。

「言霊よ 汝に 継ぐは 言の葉。"こんにちは世界!" 汝 呼応せよ」

「言霊よ 汝に 継ぐは 言の葉。"Hoge" 汝 呼応せよ」

「・・・最後のはどういう意味かわからないけど、なんだか花火みたいだね。その呪文(コード)は本来はそういう使い方をしないんだけど」

苦笑しながらゼロは、また文字だらけになった空間の文字を綺麗に消していく。


「何回もおんなじ呪文(コード)を使う時はまとめちゃった方が楽だよ」

「まとめるって・・・どうやるのっ?」

興味津々で瞳を輝かせているアリスを落ち着かせるような静かな声色で、ゼロが滑らかに呪文(コード)を紡ぐ。


「言霊よ連れれね 汝に 継ぐは 言の葉の束。"Hello world""こんにちは世界!""Hoge" 汝よ 円環なれば 綮 呼応せよ。・・・こんな感じかな」

途端、山脈のように連立する文字が現れ、結局アリスのテンションは落ち着かずに爆上げ状態だ。


「すっご〜い。ゼロ凄いねっ。私にも出来るかなっ!?」

呪文(コード)を覚えればね」

「じゃあ大丈夫!! 1度習ったデータ(きおく)は忘れないんだからっ」

意気込んだところで、ぴくりとアリスが何かに反応して辺りを見渡す。


「? ゼロ、何か言った?」

「なんにも?」

「気のせいかな? 何か聞こえた気がしたんだけど・・・まぁいいか。さぁ練習っと」

無邪気にはしゃぎながら真似をしているうちに文字が溜まっていく。

それを消してを繰り返し、アリスが飽きるまで空中へのお絵描きが続けられた。


「ちょっと、疲れちゃった~休憩!あぁ、もっと色んな事を覚えたいな」


そよそよと何処からともなくそよぐ風が、二人の頬を優しく撫でる。


「アリスはいつも一所懸命だね。どうしてそんなに頑張るの?」


ふわふわと綿毛みたいに風に揺れる銀糸の髪に対して、アリスの金糸の髪は艶やかに風を弾く。


「ん~っと、最終目標があるからかな」

「最終目標?」

虚ろぐ感情とブレない意思。試すように寄り添うように、心の中にも風はそよぐ。

「そう! 私はさ、博士のお孫さんに勉強を教えるために造られたんだ。たから、何時か必ず勉強を教えられるようになるって最終目標!!」

太陽みたいにまっすぐに。向けられる笑顔が眩しくて、ゼロは紫眼を細める。


「・・・アリスはかっこいいな。ぼくは何も持てないから・・・そんな目標もない」

「無理に持つ必要ってあるのかな? ゼロはゼロで、ここにいてくれるでしょう」


まっすぐに偽りなく、相手を射抜く言葉。


「今、一緒にいられるだけでも嬉しいよ?」


たとえそれが予めインプットされた情報なのだとしても。


だからどうだと言うのか。造られたものでも少なくてもアリスの気持ちに偽りはない。


だからゼロはくしゃりと笑って、滅多に見せない笑みをアリスに向けた。

「・・・っ。ふふっ。そうだね。ぼくもアリスがいてくれて良かった」

「ほんと!わぁ嬉しいな。一緒なら嬉しい! だってね。ゼロが私を最初に見つけてくれたんだよ。だからゼロがいる所が私の故郷なんだ。ゼロが大好き!」


「・・・・・・そう」

ぼくもだよ。とは素直に返せなくても。


外見は少女でも、まだ造られて日が浅いアリスは幼子のようなものだ。

生まれた時の事など覚えてもいないが、随分と無駄に過ごしてきたゼロには純粋すぎて眩しくて。


アリスは言いたい事を言ってスッキリしたのか、それ以上の追求はなく、また頑張るぞっと日傘を空に翳して文字を書き出す。

山脈のようになった文字を消しながら、ゼロは迷惑そうにしながらも絶やさない笑みは穏やかだった。


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