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第7話 貧民街の魔少年 Ⅲ

おれはサメ女に狙われた。

そこから逃げきると今度はマフィアに囲まれて連れていかれる。

酒を楽しむ暇もない。なんてツイてないんだ。

さらに怪しい坊主に襲われる。なんてツイてないんだ…


おれは迷子だった。

イナンナの街には来たばかりなのだ。

まして夜である。

自分がどこにいるのかまったく分からない。

しかたないので前に向かって走る。

どこかで大通りに出るだろう。


相変わらずおれはツイてなかった。

走るにつれて明かりは少なくなり、通りは崩れたボロボロの建物が増えてくる。

明らかに向かうべき方向ではない。

人気がすでに全くない場所に辿り着いたおれの前には塀が有った。

と言っても街を守る外塀ではないだろう。

ボロボロの崩れ掛けてる塀の先にはまだ人の家が有るのだ。


「その先はイカンぞ」

「そっちは不案内な人間が行って良い場所ではない」


振り向いたおれの後ろには コーザンがいた。

くそっ ついていないぜ。

ついていないことにおれは剣を持っていなかった。

宿屋からおれを連れだすコナー・ファミリーは当たり前だが、剣を持つことを許さなかった。

ポケットにナイフは隠し持っているが、それだけじゃ相手にならない。


ニヤニヤ笑いを浮かべるコーザン。


「ジェイスンじゃな 素直についてきてくれんかな」

「いつからおれはこんな人気者になったんだ? 吟遊詩人がおれの歌でも作ったのか」

「わしも良く知らんがな おヌシ貴族連中に恨みを買ってるだろう」

「…!」

「結構な高額がヌシの首に懸かっておる」


思い当たる事が無いワケじゃない。

先日おれは侯爵位の老人の悪事を暴いた。芋ヅル式に関係者や殺人儀式に参加していたものが大勢検挙された。

その中におれに恨みを持った者がいたのだ。


「そりゃ 逆恨みだ! 八つ当たりってもんだぜ」

「そうかもしれんなぁ。なんせ貴族だ。 道理が通ってる方が不思議だな」


話しながらもおれは逃げ道を探る。

壊れかけた場所なら塀を乗り越えていけそうだ。


「わしも貴族は好かんが、『赤いレジスタンス』にメシを食わしてもらってるからなぁ」

「赤い…なんだって?」

「レジスタンスだ。たいそうな名前だがチンピラどもだな。若い連中な分無鉄砲でな。コナー・ファミリーに盾突いておる」

「なんだってそんなのに味方する?」

「メシの種だ。 仕方あるまい」


走り出すおれ だがコーザンも読んでいた。

おれを鉄棒が襲う。

こいつは厄介だった。

良く見ると棒の中心部分は木で出来ており、両先端が黒く塗られている鉄で覆われている。

リーチが長いうえ、闇夜に黒く塗られた鉄棒。

分かりにくいのだ。

闇の中から不意に鉄棒の先端が現れる。

避けたつもりだが、結構な打撃を幾つも喰らっていた。

おれはダメージを受けよろけるふりをして地面の石を拾い投げつけるが、簡単に避けられる。


「アバラが2.3本は折れてるハズだ。もう止めておけ」


クソッ これで素直に着いていったらどうなる。

貴族たちの腹いせに嬲り殺しにされるだけだろう。



「待ちな」

「ケイト・コナーがマザーの客に手はださせないよ」


筋肉女ケイトが追い付いてきたのだった。


ケイトが先ほどまでの素手ではない。

拳にナックルを嵌めていた。メリケンサックというヤツだ。

ステップを踏みながら、コーザンを睨みつける。


ケイトは本気になっていた。

女の身で命懸けの戦いを生き抜いてきたのである。

必死に鍛えてきた誇るべき肉体をとことん使う。

力まかせにぶん殴るチンピラ相手のケンカ技法は終わりである。

ステップを踏み、フェイントを入れながらショートフックを敵に喰らわせる。

普通なら大したダメージにならないような軽いフックがナックルによって破壊力が上がる。

かすめただけの拳が相手の骨を折るのである。

今までも猛者を何人ものしてきた戦闘法だ。

ありがたいことに相手は棒だった。

リーチは有るものの刃物では無い。

人間の身体ではいくら鍛えていても刃物傷は致命傷になりかねない。

急所を避けても血が流れる。血を流せば動きも鈍る。

棒の打撃ならば。

ケイトの身体は鍛えている。相当なダメージを食っても倒れはしない。

ケイトは自信があった。


「ケイトさん 止めようぜ。わしはあんたにケガさせたくない」


コーザンは先ほどと同様に避け続ける。

円の動きで逃げるのだ。

さほど素早く見えないのにするすると身を躱す。

相手の視線をみて 攻撃ポイントを察知しているのだ。

先読みして身を躱す。

誰にでも出来る芸当では無い。

しかし徐々にケイトの拳がコーザンを捉える。

ケイトがフェイントを入れているのだ。

そしてかすめた拳でもナックルで撃たれればダメージとなる。

コーザンはいまだにまともに反撃をしていない。


なんだこれは…

ケイトは戸惑っていた。

身体が重いのだ。

疲れたのではない。日々トレーニングしている。自分の身体がどのくらいの運動量でへたばるか良く知っている。

まだこんなに身体が重く感じるハズは無い。


「そろそろ止めないか。 疲れているんだろ」

「五月蝿いっ!」

拳を振るうがコーザンには当たらない。


そして、彼女の身体の異変がもう一つ。

下半身が熱いのだ。

ケイトは性行為に興味が無い。男性経験は有るが、ハマることは無かった。

自分の肉体を鍛える事、その肉体で敵対した男をぶちのめす快感に比べてその快感は比較にならないくらいちっぽけだった。

ほとんど自分で意識したことも無いケイトの女性部分が反応していた。

下着がすでに濡れているのが分かる。

ホットパンツの上からも分かってしまうのではないかと気になる。

ケイトは荒い息をつく。高い鼻梁がふくらんでいる。

その頬は紅潮し、青い目が潤んできていた。


「ふふふ 動けないんじゃないか」

「キサマ…なにかしたな…」

「気づくのが遅すぎるな。香料だよ。身体の動きは鈍くなるがアッチの感覚だけは異常に敏感になる。普通の女ならとっくに夢心地の筈なんだがさすがに並大抵じゃない」


コーザンは内心つぶやく。

この女もスゴイが、あの男もだ。

先ほどの鉄棒の手応え!

ケイトに驚き、逃げるジェイスンに手加減出来なかった。

殺した場合と捕まえた場合じゃ賞金が倍以上違う。

やってしまったと思った。

それがすでにこの場にいない。

逃げおおせている。


ケイトは膝を地面についていた。

後ろから近づいたコーザンが彼女を抱きしめる。

ケイトは振りほどこうとするが力が出ない。


「はははは 男が欲しいと身体中が言っているぞ」

「バ…バカな…アタシは男なんか…」


コーザンがケイトの胸に手を伸ばす。


「何という オッパイだ」

コーザンがシャツをまくり上げる。

みごとに割れた腹筋の上に胸筋が続き、さらに突き出た胸部があらわになる。


「これだけデカイのにたるみが一切ない。美しい 美しいぞ」

「バカ…やめろ…ううっ」

「体はやめろと言っていないぞ」


コーザンが下半身に手を伸ばす。

そこはすでに男を迎え入れる準備ができている


「男女の交わりこそ神から全ての生物への贈り物よ。」

「ケイト 神の快楽を感じるが良い」



おれは塀を乗り越せて 人家の方に逃げる。

遠目に人家に見えた建物はすでに建物というより廃墟と言った方が正しいモノだった。

その廃墟が並んでいる。

廃墟に身を隠すようにおれは倒れ込む。

逃げる間際のコーザンの打撃だ。


「ゲホッ グハァッ」

血が口から溢れ出る。

なんとか堪えていたのだが限界だ。

どこか内臓が損傷している。

マズイ。

動けない。

何か近づいてくる音が聞こえている。

なのに身体が動かない。

動いてくれないのだ。

小さい音だが、複数いる。

仰向けに倒れてるおれに誰か近づいてくる。

目の前が暗くなる…



「オジサン 生きてるの!」

おれは廃墟の中で目を覚ます。

多分1時間と死んでいなかっただろう。

あれだけ苦しかった身体はピンシャンしている。

先ほどまでの廃墟では無かった。

ところどころ損傷しているもののかろうじて家と呼べる建物の中におれは寝かされていた。


おれの周りには子供たちがいた。


「ホントだ。生きてる」

「え~っ 死んでると思ったのに」

「ちぇっ 今日はお肉だと思ったのにな」

何だ?何を言ってる。

子供たちは天真爛漫な笑顔を浮かべるが、おれは薄ら寒いものを感じる。

可愛らしい子供たちとは言えなかった。

服という服の残骸ような物をまとい明らかに汚い。

先ほどの発言もブキミすぎる。


「キミたちが助けてくれたのかな?」

「そう あの娘が教えてくれたんだよ」

「あの娘だよ」

「あの娘がオジサンが生きてるって言ったの」

「だからその場で解体しなかったの」

「あの娘が言うからこの家まで運んだの」

子供たちが言うのが誰なのかはすぐ分かった。

一人服装が違う娘がいた。残骸をまとわずドレスを着ている。

人形のような娘がおれの目に映った。

薄暗い家の中、少女の白い肌が浮き上がって見える。


「ああ 目が覚めたんだね」

少年が入ってくる。

少年もマトモな服装だ。

イヤ 残骸を着ていないというだけでマトモな服装とは言えなかった。

薄い上着は身体を全く隠す役目を果たしていない。

少年の細い身体のラインが透けて見える。

病的なまでの白い肌がおれの目に飛び込んでくる。

裸よりもエロティックな恰好であり、間違いなくそう見せるための服装で有った。


少年が入ってくると先ほどまで騒いでいた子供たちはピタリと喋るのを止めた。


「ふふふ ここは子供たちがうるさい。二階へ行こうか」


おれと少年は二階の部屋にいた。

先ほどまでとは別世界だった。

狭いが奇麗な部屋、大きなベッドとソファーがある。

テーブルには酒まで置いてある。

家具も装飾が施されたお洒落なものだ。


少年がソファーに座ったのでおれはベッドに座る。。

何故か横に少女がついてきておれに寄り添うように座る。

先ほどあの娘と呼ばれていた人形のような少女だ。

近くで見ると娘のドレスもマトモとは言えないことが分かった。

黒いシースルーのドレスから下着が透けて見えている。

上半身には下着を着けておらず、胸の先端に色づくものが見える。

見てはイケナイ物を見てしまった。

おれは少女から目をそらす。


「オジサン。あなたは妹と僕とどっちがいいのかな?」


少年は笑みの形の表情を浮かべながら言う。


少年は改めて見ると美少年であった。

白い肌、銀色に光る髪から覗く瞳がおれを見つめる。


「夜 こんなところに来るのは娼店にまだ出せない年の娘を求めるオジサンくらいだよ」

「もしくは男の子か…ね」


おれは「残念ながらロリコン趣味はないんだ」と言おうとしたが口がうまくまわらなかった。


おれの腕に白い柔らかいものがまとわりついていた。

少女の手だった。

華奢な手がおれの腕に触れ、ゆっくりと手先から肩に向かって這っている。

背筋に快感が走り抜ける。

少女の手先の感触は予想外の快楽をおれにもたらした。


「どうも 妹があなたを気に入ったみたいだな」

「あなたも男の子よりそっちがよさそうだしね」


兄妹だったのか。

確かに 抜けるような白い肌、銀髪、美少年と美少女の兄妹だ。


「やめるんだ おれには必要ない」

それだけの言葉を言うのに恐ろしいほどの努力を必要とした。

少女の目を見て話そうとして、おれは気づく。

人形のような娘と感じた理由は少女の瞳が全く動いていないからだった。

何も映していない目がおれの方を向く。

小さい唇が開き、ピンク色の舌が口元を舐める。

唾液が赤い唇から尖った顎に向かって垂れる。

少女の唇に吸い付きたい。

その衝動をおれは全身で抑える。

だが少女の唇の方が近づいてくるのだ。

おれの首筋にキスをする少女。

全身にとろけるような快感が広がる。

おれは少女を振り払おうとするが動けない…


「妹は目が見えない。口もきけない」

「だから躰でコミュニケーションするんだ」

「あなたが今まで経験したどんな娼婦より上手だよ」


少女の手が身体に触れると魔法のようにおれは裸にされていた。

おれは全く抵抗できないでくの棒になっていた。

人形の様だった彼女が今は男の性を吸い取って生きるというサキュバスのように感じられた。

細い指先がおれの胸元を、腹を、背筋を這う。

おれは少女の指先を感じるだけの生き物になっていた。


下半身が熱い。自分の男が猛り狂っているのだ。

こんなバカな…

おれは子供と寝たいと思ったことは一度も無い。

少女は日本であれば手を出すとお巡りさんが飛んでくる年齢だ。


おれはベッドから抜け出そうとするが全く力が入らない。

筋肉など一切ついていないように見える少女の華奢な手は無限の力を持っておれを征服した。


少女の指先がおれの下半身にも伸びる。

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