主家の人たち
「ははは。ハルトが目覚めて嬉しいのはわかるがの、少し落ち着きなさいフローラ。先程もそれでまた眠らせてしまったのじゃろ?」
「もう、お爺様!…でも、はい、そうですね。」
あ、やっぱり飛びつかれて頭打ったのは夢じゃなかったのね。さっきも今も、感情が抑えきれなかった感じなのかな?ちょっと嬉しい。
で、楽しそうに場を収めたのは前領主のベルク様。流石に場慣れしているみたいで、あっさりこの場を落ちつけた。
ただ、フローラお嬢様が離れたことでほっとしたような残念なような気分になってしまった。
「ご迷惑をお掛けしましたベルク様。」
「なに、構わぬよ。こちらこそフローラを助けてくれて感謝する。ありがとうの。」
「勿体ないお言葉です。ですが、当然の事をしただけだと思っています。しっかり支えられたら格好もついたのですが。」
「うむ、それは今後の課題じゃろう。だが身体の成長はこれからだしの、無理やり鍛えるのも違うじゃろう。今は誰にも大事無かった。それでよかろうの。」
「はい、ありがとうございます。」
流石に伯爵として領主を務めていた器だ、度量が深い。
傲慢なところが全然ないし、良い領主だったんだろうな。『記憶』でもファーベルト領は穏やかみたいだし。
「さて、ハルトが無事なところも見れたし、儂は戻るとしよう。マーカスにはこちらから伝えておくからの、ゆっくり休むとよかろう。」
「ありがとうございますベルク様。ですが、私も主のところへ。この場はあとはレイラがいれば足りましょう。」
「はい、私がついておきます。ベルク様、ありがとうございます。」
ベルク様が立ち上がり、父様が一緒に出て行った。母様もいるし、家令としてやることはたくさんあるんだろう。僕が昏睡から目覚めたなら仕事に戻るか。
「さあハルト、もう少し眠りなさい。まだ顔色が少し悪いわ。」
「はい…けど、母様と父様もお休みください。僕はもう大丈夫ですから。」
横になりながら言うと苦笑された。むう。
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